ゾラはフランスの1800年後半の作家、テレーズ・ラカンは初期の作品だけど代表作の居酒屋やナナを連想させる。いずれも女性が主役であり、堕ちてゆく物語り。
ラカンとローランは目先の快楽に溺れて短絡的にラカンの夫を殺してしまう。にも関わらず長年の間、殺人後は露見を恐れて遠巻きに暮らす。きっと浅はかすぎた殺人に慄のき夫かカミーユの亡霊に悩まされる。
話の展開は精神的な内面の変化であり、心理描写の作品である。読んでいる本の偏りなのかもしれないけど最近の小説ではあまり見かけないように思うし、淡白な表現が最近は多いような気がする。
ビリー・サマーズというスティーヴン・キングの話の中でビリーが気に入っている小説として出てくる。ビリーはスナイパーで殺人を請け負っているのだけど、小説が好きで狙撃のために小説家になりすます。でも、なぜテレーズ・ラカンなのかはよくわからない。生い立ちが共に恵まれていないのはわかるけど、そこに共感したわけではないだろう。
ゾラ自身が巻末に小説の意図を書き加えている。その中でラカンとローランは人獣であり心は全く存在しないと記している。でもビリーはそうなりたくなかったのであろう。
なおこの小説は同じくフランスの肉体の悪魔を想起させられる。