フランスはブルターニュ地方へ10代前半に繰り返し訪れた日々を思い起こすブルターニュの歌と幼年期の第二次世界大戦での日々の暮らしを綴った子供と戦争の二話が収まる。
ブルターニュは自然あふれた土地のようだ。多感な少年時代に遊んだ体感は何とも言われぬ郷愁に満ちた情景が流れてゆく。このような土地に馴染んだ哀愁のような文は作家にとって苦もなく浮かんでくるようだ。ただただ文のなかに浮かんでいれば良い、少年期に父と山の中を散策に出かけた日曜の午後を思い出した。
三つ子の魂100までもと言われる期間が戦争時代で疎開先に育っても、慈しみある文を書けるのは祖母と母のおかげなのだろう。3−4歳ごろの記憶は本当にあるのだろうか?それとも写真や昔話を聞いているうちに体験と化したのだろうか?自分には5歳ごろの記憶が僅かにあるだけで、親は随分と苦労したようだけど何も覚えていない。