ヘッドフォンアンプを作ってみる ぺるけ式&LME49600

  DT1990proというbeyerdynamic社のヘッドフォンを買ったので、ヘッドフォンアンプを作ってみる。夏の日照りが猛暑になる昨今、1階の奥まった部屋へ逃げ込むとオーディオはないので、JVCのウッドイヤフォンHA-FW01で聴いているのだけど、ちょっとヘッドフォンをと思い買ったのだ。


 ヘッドフォンアンプの構成なのだけど一つはオペアンプにして、もう一つはディスクリート構成にしようと思い、ぺるけFET差動回路にすることにした。オペアンプは小さな簡易式のヘッドフォンアンプを作った時にOPA2604を買ったのだけど、どうも性能を発揮していないようにも思えるし、他のオペアンプもあるので差し替えながら愉しもうと考えるのは、在るものは性能を発揮させたいという貧乏性からきている。

 ぺるけ式の方はユニバーサル基板で作るのですが、配線間違いをしそうでちょっと心配。FET/Tr差動ヘッドホンアンプ Version 4のwebを見るとアルミケースに空きスペースがあるので、ここにオペアンプ基板が入るといいなぁと思い、簡単な配置図を画いて空きスペースの確認をした。

 オペアンプ回路の方は、バッファアンプLME49600を使ったキット基板が良さそうでサイズも小さい。いろいろ調べて見るとLME46000の技術資料にヘッドフォンアンプの同様な回路がありました。FET/Tr差動回路の電源はDC15Vを±7.3Vに分けていて、その電源でオペアンプを動作させても良いのだけど、フォノイコを作った時に真空管回路とオペアンプ回路の二つを同居させて同じ電源を使ってちょっと失敗したので、今回は当初より電源を分けることにする。
  オペアンプの電源は、MINMAXのDCDCコンバーターで±15Vを作ることにしてユニバーサル基板72*47mmを使えばLME49600と同サイズになり、空きスペースにピッタリ入りそうでニンマリする。(でもこれが実は後でちょっと問題になる)


 信号線については、3398-SY精密導体102SSCというオヤイデ自慢の線をと思い、DCDCコンバーターがあるのでシールドタイプを買った。(実はこれも少々痛い目にあう)
 部品もそろって、基板から開始。MINMAXの電源基板を作り、次にLME49600基板を作成。そして、ぺるけ式差動回路の方は着ける部品の割に基板が小さく、ジャンパー線も多いので老眼には苦労します。しかも部品とジャンパー線を同じ穴に入れているところもあるので、実装図面に赤丸印を付けて進める。使用したコンデンサにマイカを使うと部品が大きくて超過密になってしまった。近くに熱量の大きいトランジスタがあるので耐熱性が高いとは言えちょっと心配です。あと、信号回路に使った抵抗はPR9372というPRPの金属皮膜で、コンデンサはVishayのMKT1813です。

 アルミケースに穴を空けて部品を取り付けていくのですが、なんとボリュームを忘れていた。ぺるけ式=6mmを使用、オペアンプ=3.5mmのジャックを使用するために、ジャックの上にLEDを付けて使用するジャックを判るようにしたのに、3.5mmミニジャックの位置にボリュームを付けることにしたので、LEDとジャックの相関が崩れてしまった。
 ボリュームはマルツのR1610G-QB1-A503で小さかったため、穴位置が下方でも取付けできました。アルプスの27だったら穴を空け直す状況で助かりました。安価の割に音質は良いとのことですが、ギャングエラーはそこそこあって10時、12時ぐらいで1dbほどのギャングエラーがあります。そのうち抵抗を買って補正しようと思います。補正方法はぺるけさんのwebが参考になりました
 アルミケースはタカチのHEN110420B高さが43.6mmのタイプで、この高さが無いとオペアンプ基板の電解コンデンサが当たります。このケースは出来がよくて値段も手ごろで助かります。


 電源スイッチは3ポジションタイプで、電源の切替でオペアンプ側と差動回路側を切り替えるのですが、3Pなのに中間のOFFがなく、間違ってon-onの方を買ってました。まぁ、ラズパイもスイッチがないので、電源の入り切りはスイッチ有りの延長ケーブルタップを使うことにします。失敗が続くので嫌な感じです。

 基板の取付穴を空けようと配置してみると、なぜかオペアンプとDCDCコンバーターの基板が当たります。ケースの側面が放熱のために凹凸が出ていて、僅かに重なるのです。幸いなことに凹部のところに基板が入り、高さ10mmの六角目ネジで高さがあったので、DCDCコンバーター基板の片側だけ穴空けして取りつきました。

 ぺるけ式の基板はLEDの方向を間違えるとトランジスタを壊すとあるので再チェックして通電テストです。残念ながらL側のLEDが点きません。電圧を計ると+側なのに‐です。電源部のジャンパーはチェックしたはずなのに導通がありません。ポリウレタンの被膜があるエナメル線は、ハンダで溶かせば良いはずなのですが、溶けにくいのでヤスリで剥がしてチェックもしたはずなのに...裏側からジャンパーを追加して再度ハンダです。オペアンプ側の方は、電源基板のDCDCコンバーターの繋ぎ方を間違えていました。
 次にLME側の音出しチェック、なぜかピーっと鳴ってます。オペアンプの発振なんて無いと思うのですが、とりあえず4558DXから2604へ変更してみます。そうしたらより悪化して、イヤフォンが厚くなってビックリ。オペアンプを見るとなんと増幅段のオペアンプの脚がズレてホルダーに嵌っていました。これで、イヤフォンのL側を焼いてしまいガックリ。チェック用の安価のものとは言え、壊してしまうのは辛いです。

 気を取り直して、オペアンプをキチンと差し込んだのですが、ピーって鳴ります。基板への信号入出力をコネクタにしたので、片側ずつ差し替えてみると出力が片側だけだと無音で、入力が片側だけだと両方から音が鳴ります。基板の中でLRが接触するところはないので、ボリュームを壊したのかと思いくるくる回してみると火花がでます。驚きながらテスターで導通を計るとLRがつながってます。ギャングエラーをチェックした時には正常でした。
 かなり苦労してわかったのは、信号線のシールド線が芯線のコネクタに接触しているのです。どうしてかと言えば、芯線とシールドの被覆とが滑ってズレるのです。芯線と外皮がずれるなんてめったにないのですが、精密導体102 SSCの“XLPE”絶縁と唱っている芯線皮膜が滑りやすく、線が短いと簡単に芯線が動きます。
 片側をアースして、片側を切ってあるのですが、これが複数の配線で芯線のコネクタと接触したために、奇怪な状態になってしまいました。絶縁テープを巻いて直したら無事に音が出てきて一安心です。

 次にぺるけ式の基板です。電源を入れてしばらく経ってからヘッドフォン出力の電圧を0Vに調整できたので、音源を繋いでみるとL側しか出ません。基板を取り出して、部品の配置や種類を確認し、眼鏡でハンダ状態を見てみると、着いてなかったり、半分だけだったりがやたらに多くて、眼鏡を掛けているのに見えておらず気落ちしました。
 ハンダを修正するたびに虫眼鏡で確認します。密度の高い実装なのもあって拡大して見ると、どの位置を見ているのかが意外と分かりづらくて苦労します。何回かやり直して、音の出たのを確認しほっとします。

 


 やっと、音質の話です。一聴してぺるけ式の音が素晴らしい。すぐ気づくのはノイズが無い、本当に静かで深淵の無にいるみたい。しかも音の一粒一粒の違いがよく分かる。250ΩあるDT1990proを苦も無くドライブし、低音域の深さと伸びやかな特徴ある高音域が見事に演奏されます。これだけ素直で凛凛とした音はスゴイとしか言いようがありません。YAMAHA A2000やaccuphase E-470のイヤフォンジャックから聴く音より粒立ちが綺麗です。プリメインだからヘッドフォンアンプは手を抜いているわけではなく、どちらも専用回路です。

 オペアンプ側は残念ながらDT1990proをドライブ出来ませんでした。250Ωの負荷が厳しいようで、電源のLEDがちらつき電流不足になり、高音域がサチります。どうもDCDCコンバーターの±100mAでは容量不足のようです。音量をたいして上げてないのですが...ちなみに3Wタイプです。
 なので、JVCのイヤフォンFW01に替えて試聴します。OPA2604だとノイズが気になり、4558DXだと固さが気になったので5532DDを使いました。聴きなれたいい音なのですが、それでも極僅かなノイズがあり、ぺるけ式を聴いた後では辛いです。サーボ側に2604を入れると音の重心が下がっていいのですが、ぺるけ式と比べると音の粒が大まかになる気がします。イヤフォンで聴いてもぺるけ式の方が良いということです。オペアンプについては、ちょっと違う回路も試してみたくなりました。

 でも、容易に切り替えて愉しめることは夏の酷暑を乗り越えるのに役立ってくれると思います。

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