オーディテクニカ AT-ART9XAを買ってみた

  レコードが最近少しだけリバイバルしているようで嬉しい。CDもなくなってデジタルデータの配信になり、DSD256なんていう情報量の多いデータも難なくネットワークでダウンロードできるようになった。それでもやっぱりレコードっていいなと思うのです。

 わが家にカートリッジは十数本あるのだけど、空芯カートリッジはなく音が聴きたくて空芯タイプのAT-ART9XAを買ったわけです。空芯というのは電線を巻き付ける芯のことで、鉄の材料が多く使われているのですが、それが空というのは鉄ではなく非磁性体の芯を使ったものでMCタイプになります。

大名絵師 写楽を読んでみた  野口 卓 著

  写楽の実像に迫るノンフィクションだと思っていたら、写楽の謎を基にした物語だった。ある意味推理小説で犯人を謎解きするのではなく、謎の絵師の謎を展開している。そう考えると推論小説という新しいジャンルなのかも知れない。



ゲルゲイ・ボガーニのシューマン・ピアノ曲を聴く

 ブラック・フライデーと言うことで25%引きのメールがやってくる。その送り元はNativeDSD.comという名のオランダにある会社で、Channel Classics Recordsという名のレーベルを創設した人が起こした会社です。DSDフォーマットによる音楽ソースを配信している老舗のような存在です。


 どうも割引の案内に弱くって、ついつい買ってしまいます。今回はDSD64にすることで金額を抑えて購入しました。64⇒128で+300円、128⇒256で+600円とデータ容量に比例して上がるところが量り売りみたいで面白いです。

真空管プリアンプが時々ノイズを出すようになった

  Chriskit Mk6というキットで名を馳せたプリアンプを使っているのですが、急にZiiii――と唸って消える不思議なノイズを発するようになってしまった。徐々に音が大きくなって急に消えるし、ボリュームを絞っても一定の音量で左右のスピーカーから出ます。ハイカットやローブーストの切り替えの固いノブをカチカチ回すとノイズが出たり止んだり、パネルを叩いても同様な結果になりました。ハムではないことは確かのようです。


シャギー・ベインを読んでみた  ダグラス・スチュアート 著 栗原敏行 訳

 スコットランドはグラスゴーに住むドランカーの母と少年シャギーとその家族にまつわる1981~1992年のお話し。ちょっと素敵な本というのは出だしがイカシテル。1992年15歳の生活から始まりフラッシュバックするのを見て、プライベート・ライアンや英国の古い戦争映画を思い出した。 


ヘッドフォンアンプDACのMojoを買ってみた

 Chord社のポタアンDACであるMojoは2015年の発売で、すでに後継のMojo2がでています。随分と評判になったポタアンなので一度聴いてみたかったこともあり、中古のMojoを買ってみました。

 僕の場合は外で聴くことはないのでポタアンである必要はないのですが、インピーダンスの高いヘッドフォンも十分に鳴らせるという評判と何といってもDACチップを自社開発している点で、チップ会社の代物ではない点に惹かれたのです。

 もっともDACチップそのもので、どれくらい音質が変わるのかは分からないのです。CAMでもチップ+アナログ増幅になり、足しあわされた音なのだと思います。

進化の技法  ニール・シュービン 著  黒川耕大 訳

  生物の進化について、生物学者が豊富な知識と経験の中から判りやすい言葉で話してくれます。文章も展開も優れていてとても読みやすく、古代の誕生から現代のDNA解析に至るまでの歴史を体系たてて語ってくれます。


 やはり自分の専門の歴史については良く知るべきだと改めて思います。生まれた時代の技術で暮らしているけど、その技術がどのように作られてきたかを知ればなるほどと思えることが多いし、物事の考え方や見方について教えてくれて大変有意義に思います。

ちょっと風変わりなレコード

  ヘンデルのアルチーナというオペラがHHK FMより放送されていたので、気になって検索してみたらレコードを見つけました。3枚組で価格も安く盤面も綺麗なようですので買って1面目を探していると、No.6の裏がNo.1になっていて戸惑いました。


 おかしいなと思って、No.2を探すと裏面はNo.5です。普通1枚目の片面を聴いたら裏返して2面目を聴くのですが、これだとレコードを取り換えなきゃいけない。ほんとかなぁ、ラベルの貼り間違いじゃぁないのなんて疑ったのはいいけど、曲の順番なんて知らないし、イタリア語もさっぱりだし、と困った。

ヘッドフォンアンプ回路の自作追加と電源回路変更

  バッファLME49600とオペアンプを組合せたアンプを使ったのですが、BayerDynamicsのDT1990proとの相性は今一で電源の作り方が悪かったのか、電流がサチルようです。供給電源はDC15vで±15vを作るのにDCDCコンバーターを使い、±100mAもあれば十分だと思ったのですが...


 そこで±15vは諦めて、電解コンデンサを並べてぺるけ式の±7.5vを作り、載せ替えてみました。ダイナミックレンジの大きいオーケストラで盛りがるコーダ部分も問題なく再現できて良かったのですが、何かしらさらっとした雰囲気が気になります。

ブロッコリー・レボリューション  岡田利規 著

  5編からなる短編集。文と文を句点『。』で区切らず、読点で『、』でつないで、次の文を形容する文体が特徴的なのだけど、谷崎潤一郎のような滑っとした嘗めやかさはなくてアッサリと単々としている。


 内容はどれも日常生活そのものであり、ある時間帯が切り取られ物語が語られるわけでもなく風刺があるわけでもない。だからこそ日常なのだと思うけど、その空虚さを感じさせてしまう。だからと言ってデカダンスでもないし、短編のタイトルは中身のほんの一部をさしているだけでテーマではない。

Ultimate Ears UE900を聴いてみた

  Ultimate Earsは1995年に生まれたアメリカのメーカーで、UE900は2013年に発売されて翌年にはUE900sにマイナーチェンジしているから1年間しか販売されず、ある意味貴重品になるのかな。


 バランスド・アーマチュア型のイヤフォンで、ベース*2、ミッド*1、ツィーター*1の3way 4driver構成になっていてshure掛けタイプです。耳の形状のせいなのかshure掛けが苦手なのですが、ひょっこりと手に入ったラッキー品なので気にせずにいきます。

ヨハンナ・マルツィのコンプリートアルバムを聴く

  ルーマニア出身のヴァイオリニスト、1924年生まれで54歳と早くして亡くなられてます。NHK FMにてバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータが流れてきて、上品な中に力強さがあって気になっていたら、2022年にマスターテープよりPCM192kHzでリマスターされた9枚組のCDを見つけて思わず買ってしまった。


 バッハの無伴奏ヴァイオリンはミルシティンのCDがあって素晴らしいのですが、どことなく緊張して気疲れしてしまう面があってヨハンナの柔らかさに惹かれてしまったわけです。

JP-501のプレイヤー版と思われるターンテーブルシートを買ってみた

  JP-501と言えば、長岡名人が気に入られて使われたていたターンテーブルシートでパイオニアの品だった。もともと単品での販売ではなく、パイオニアのレコードプレーヤーについていたシートだったようで、それを使った名人が気に入ってシートだけ取り寄せて使い、人気になって単品販売に至ったと聞く。


 すでに一枚JP-501はあって評判通りなので、もう一台のターンテーブルにもと思っていたのだが、いかんせん高くなってしまって手が出ない。そこでダイソーのシリコンシートを円形に切って使っていたのですが、レコードを持ち上げると一緒にくっついてくることがあって気になっていた。

樹木の恵みと人間の歴史 ウィリアム・ブライアント・ローガン著 屋代通子訳

  作者は米国の木の育成管理者なのだけど林業ではなく、都市の樹木や郊外の森の伐採や育成を依頼されて身を立てている。木の伐り方によって萌芽更新を発揚させる手法を学び始め、木と人との係わりについても歴史から教わったこと記載した本です。


 裏表紙の内側に著者の写真があり、いかにも野原や森でうろついている浮遊者のような雰囲気と書かれている知的な文章とのギャップがとても印象的で、教養の深さに驚かされます。

iFi Audio micro idac2をヘッドフォンアンプに繋いでみた

  英国のオーディオメーカーiFi AudioのDACを買いました。ヘッドフォンを聴く時にはアムレックAL38432DSを使用しているのですが、VolumioではDSD128までしか対応できず、DSD256はPCM384に変換されてしまいます。これはこれでいいのですが、アムレックのソリッドな音像と相まって、なんだかちょっと味気ない。


 そこで、これは良さそうだなぁと思ったのがiFi Audio micro idac2です。バーブラウンのチップセットDSD1793使用しているとのことです。アムレックはESS、トッピングは旭化成ですので、これで3社が揃うことになります。でも、音質的には会社やチップの違いより、DACのアナログ出力での影響の方が強いように思えます。

『誓願』を読んでみた マーガレット・アトウッド 著 鴻巣友季子 訳

  侍女の物語の続編なのですが、単独で読んでも何ら困らない構成になっています。設定がギレアデと言う専制国家の中で起きる物語で誓願はギレアデ国が崩壊に導く4人の女性の物語になっています。


ヘッドフォンアンプのボリューム交換

  自作したヘッドフォンアンプのボリュームは、価格が安くて音質の良いと思われたマルツのオリジナルを使っていたのですが、ギャングエラーが大きくて抵抗をいれて補正してみた。


 随分と良くなったので大きな音でも聞こうとボリュームを回してみたら、なんと3時~4時の間で右側の音がでないのです。それと16Ωのイヤフォンだと音が大きいので絞りたいのですが、7時~8時の間では左の音が小さくなってしまい上手く絞れません。
 写真は配線前のもので右上がボリュームです。

ヤマハA2000アンプのシーリングパネル修理に右往左往

  とても古いアンプのヤマハA2000を愛用して40年になろうとしている。その前面パネルにトーンコントロールなどを隠すシーリングパネルがあって、下部を押すとパネルが回転する仕掛けになっているのですが、なんと回転のステーが破損してしまった。


 ふつうは開けることが少ないからシーリングパネルなのだけど、Tape Outを使って他のアンプにもつないであり、CDやフォノの切り替えをしたり、CDをA2000で聞くときには他のポジションにした方が元信号の電圧が下がらないので、よく開け閉めしてた。

 なんか片側が変だなと思っていたら、左右ともに破損して閉まらなくなってしまった。仕方なくパネルを外すと、樹脂でできたステーの一部がヘロヘロで首の皮一枚でつながっている。このパネルも外しにくくて外すときにより外傷を与えたようだ。

『侍女の物語』を読んでみた マーガレット・アトウッド 著 斎藤英治 訳

  1985年に発表された作品、閉鎖的で専制的な国の中で子供を作るために生かされる女性の物語。侍女とは貴人に仕えるひとのことだけど、ここでは妻の代理出産を強制される人を指していて自我を押し殺して生きていくしかない統一宗教の世界。

 こういう形ではないものの専制的な国はあるし、宗教的には歴史の中でいろいろな事象もあるし、新興宗教でカルト的なものあることを考えると意外に身近に感じてしまうところが、この物語を浮世離れさせていないのだと思う。


 国の設定はアメリカのようだが政権が転覆して専制国家となり、位の高い司令官に妻があり、多くの子ども作るために代理出産を行わせる仕組みになっている。巻末に随分と未来になってから、時代研究という枠組みの中で専制国家の内容が語られている。ということは、未来になればこの国家は崩壊するということだ。

脳は世界をどう見ているのか:知能の謎を解く「1000の脳」理論

 ジェフ・ホーキンス 著 太田直子 訳

 脳はどのようにして知能を持つのかを平易に解説した本で3部構成になっており、第1部が知能の構成について、第2部がAIと脳について、第3部が人の未来についてとなっている。

 現在のAIとの違いについて分かりやすい説明であり、知能と言うものの在り方を考えさせられる。機械が知能を持つリスクに対して楽観的であるものの、所詮は人が作る怖さが最大のリスクのようだ。直ぐにターミネーターを思い出してしまうのだけど、あれもきっと誰かのコピーもしくは世界征服を抱いた者が不死の力を得たのかも知れない。

アメリカーナ チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ著 くぼたのぞみ訳

  上下2段の文字列で530頁もある恋の遍歴書。ナイジェリアからアメリカへ移り、時の流れに翻弄されて青春期の恋を恋慕しながらつづられるメロドラマだけど、文体が軽いので昼メロのようなドロドロ感はなく、結構省いた方が良いように思えるところが多く、できたら半分のページに凝縮した方が胡散臭さが消えるように思える。


 主人公は女性でナイジェリアの都市ラゴスで暮らし、お金持ちが通う学校へ行っているのだけど家賃を滞納する家庭に育ち、高そうな月謝を払えるし、アメリカへ行って貧乏生活をするのだけど、借りてきた貧乏のようで貧困さはない。

時間の始りの妄想

忙しさから離れて時間ができるようになると、子どもの頃のように妄想が巡る。
夜宙を仰ぎ見れれば星の瞬きでE=mc²が呼び起こされた。
でもこれって時間がなかったら意味あるのかな?
などと不思議な疑問が湧いてきた。
と言うことは、先に時空が存在するのではないのか?
空間の無いところでも場所と呼ぶならば、
時は全ての宇宙と次元空間を包んでいるのかしらん、
次元の違いによって時が違うから穴が空くのかも知れない。


『逃亡派』を読んでみた  オルガ・トカルチュク 著  小椋彩 訳

  原題は『BIGUNI』、ポーランド語でランナーという意味合いらしい。いくつかのエッセイ風や短編の集まった本で、その中の小説の題名が本のタイトルになっているジャズやロックのアルバムのタイトルが収録された曲名と同じと同じです。


 読むと思い出すのは芥川龍之介の『侏儒の言葉』だけど、似ているのは編纂だけかもしれない。訓戒的でもないしアフォリズム的でもないのだけど、厭世観から離れてより遠い所から観ているようで直ぐ身近にある。

シューベルト: ヴァイオリンとピアノのための作品全集

  ヴァイオリンはユリア・フィッシャー、ピアノはマーティン・ヘルムヘン、曲はシューベルト。


 CHANDOSと言うヨーロッパのレーベルがあって、直販サイトがあります。ここが月毎に25~30%の割引をレーベルごとに入れ替えて販促していて、PENTATONEから出ている表題のデジタルソースを買いました。いつもはHDtracksから買うことが多いのですが、最近のドル高円安のためにため息をする有様で、30%引きに挽きこまれた次第です。

 シューベルトは大変好きな作曲家で、なんでしょうか、やわらかく穏やかな空間に包まれるような気がするのです。それにユリア・フィッシャーのヴァイオリンもしっかりした音の中に気の休まるものがあるように思います。

交換針D4500Qを買ってみた (XUV4500Q)

  ピッカリングのカートリッジXUV4500に付いている針はD5000で他のカートリッジの針だったため、XSV3000の針を使って聴いていた。XSV3000はXUV4500の2ch版で、これはこれでいいのだけど純正はシバタ針なので、ついつい交換針を買ってしまった。


 シバタ針は4chサラウンドを実現するために開発されたコンタクト針で、これを2chで聴いても細やかに音を拾う優れものです。オーディオテクニカのAT33Saもシバタ針で、実に緻密な音がするために誘惑されました。
 すでにピッカリング(米国)はありませんけど、JICO日本精密宝石工業が交換針を出してくれていてありがたいです。新品の針とピッカリング特有のブラシがセットで送られてきました。ブラシを付けずに交換です。

『僕の陽気な朝』を読んでみた イヴァン・クリーマ 著  田才益男 訳

  チェコの作家のエッセイのような小説。本人が出てくるので実話を基にしているのだろうけど、プラハの春の体制の風刺画でもあるようだ。圧迫された体制の中の作家は生き生きしているように思える。莫言の書いた遅咲きの男と同じ匂いがするのだけど、こちらの方がファンタジーがあるかな。


 月曜日から日曜日までの7話が詰まっている。最初の内は軽くて陽気だったけど、週末になるにつれて難しくなる。話自体は軽やかでわかりやすいのだけど、なぜその構成になるのか?と考えてしまうと僕の頭では不明に陥る。

MC20Wを買ってみた

  MC20Wはオルトフォンのカートリッジ。シリーズ初代のMC30を持っていて、繊細でありながらふくよかな低音が特徴になっている。でも、中音の張り出しがもうちょっと欲しいなと思うのと、LPとの相性もあって気難しいところがたまにある。

 デジタルサウンドに対応した切れ味の良いカートリッジはあるので、1世代前のWシリーズならMC30の良さに骨格の良さも併せ持っているように記事を読むと思える。なのでMC30Wを狙っていたのだが、どれもこれも高い値段がついてしまう。そこでMC20Wをと思い、お手頃な価格で入手でき音質も思った通りで非常に嬉しい。

もうダメかも 死ぬ確率の統計 マイケル&デイヴィッド 著 松井信彦 訳

  なんだか衝撃的な題名なんだけど、読むと現代は安全になったんだと変に楽観的になるところが面白い。統計学と確率のジレンマみたいなところがあってこれまた面白い。


 学者さんが統計を基に考え方の違う3人の人生を物語風に描いて、死ぬリスクを勘定している。お世辞にも文章が上手いとは言えないのだけど、かえって真実味がある。

ヘッドフォンアンプを作ってみる ぺるけ式&LME49600

  DT1990proというbeyerdynamic社のヘッドフォンを買ったので、ヘッドフォンアンプを作ってみる。夏の日照りが猛暑になる昨今、1階の奥まった部屋へ逃げ込むとオーディオはないので、JVCのウッドイヤフォンHA-FW01で聴いているのだけど、ちょっとヘッドフォンをと思い買ったのだ。


 ヘッドフォンアンプの構成なのだけど一つはオペアンプにして、もう一つはディスクリート構成にしようと思い、ぺるけFET差動回路にすることにした。オペアンプは小さな簡易式のヘッドフォンアンプを作った時にOPA2604を買ったのだけど、どうも性能を発揮していないようにも思えるし、他のオペアンプもあるので差し替えながら愉しもうと考えるのは、在るものは性能を発揮させたいという貧乏性からきている。

虚無への供物を読む 中井英夫 著

  密室での死に対して、素人探偵団が推理を展開する探偵推理小説なのだけど、探偵小説三大奇書または推理小説三大奇書と呼ばれている内のひとつです。他に夢野久作『ドグラ・マグラ』と小栗虫太郎『国死館殺人事件』があって、これは既に読み終えた。


 これらのうちで最も推理小説に近いのは虚無への供物であり、文章自体も読み易く、場面の展開を認識し易い。なにせ、ドグラ・マグラはオカルトっぽいし、国死館殺人事件は機械仕掛けのスリラーっぽいように思え、虚無への供物も含めて奇書と呼ぶのがふさわしい。なにせ、虚無の供物の中にドグラ・マグラが出てくるぐらいだから十分に意識されていたのだと思われる。

フランク・キンボールのAncestorsを聴く

 Ancestors FRANK KIMBROUGH

 アメリカのジャズピアニスト。1956年生まれ2020年12月30日没、享年64歳で亡くなったあとにでたアルバムAncestors(祖先)を聴いた。タイトル名は収録曲に同名がある。


 コルネットとベースとピアノのトリオ、ドラムがないので落ち着いたメロディラインの曲調になります。どの曲もコルネットのちょっと深くて生暖かいフレーズが響くので曲ごとの特徴が不鮮明になってきます。

 でもそれがきっと沼に靄がかかりながら空に明るさがじんわりと拡がる雰囲気が醸し出されるのでしょう。幻想的な中にもたまに動物の鳴き声が響いてくるようなレクイエムです。

アンブローズ・アキンムシーレのオリガミ・ハーベストを聴く

 Origami Harvest AMBROSE AKINMUSIRE


 アンブローズ・アキンムシーレはニューヨークのトランぺッター、2008年にデビューして2018年5作目のアルバム、オリガミ・ハーベストを聴いた。アルバムタイトルのorigamiは折り紙なのだろうか?そうだとすると直訳で折り紙の収穫になる。収録曲に同じタイトルは無いのでアルバム名だけとなる。

ウォーターダンサーを読む  タナハシ・コーツ 著 上岡信雄 訳

  アメリカで奴隷制度が色濃く残っている時代に自由を求めて生きた神秘的な力を持った青年ハイラムの物語。


 ハイラムは奴隷制度のあるヴァージニアに白人の父と黒人の母に生まれたのだけど奴隷であり、幼いころの記憶がぼんやりとしていてウォーターダンスを踊る母の面影しか知らない。そんな記憶が呼び起こされるとともにウォーターダンスの伝説の力を知る。

ホモ・デウス ユヴァル・ノア・ハラリ 著 柴田裕之 訳

  前作のサピエンス全史は歴史を著わした名著でした。それであるが故に置かれた我々がどの地点にいるのか、サピエンスとは何なのかを論理的にあらゆる角度から診ていた。著者の幅広い見識と同じ重みで物事を見比べて、本質にたどり着くアルゴリズムは驚嘆です。

 そして、自作の本書はサピエンスがどこへ行こうとしているのかを著わしている。作者も言う通り予言書ではなく、可能性だと言うもののタイトルが示す通り、デウス=神なるものへ向かおうとしている。このように書くとスペクタル小説のようになってしまうが、そうではなく科学が不死を産むと言う予測である。

タムラ THS-30 MCトランスを組んでみた

  昇圧の倍率が10倍ほどのインプットトランスを探していた。SPU SynergyやGoldring Elite、audiotechnica AT33Saなどの出力電圧はそこそこあるので、低めの昇圧にして小さい音のボリュームの管理幅を拡げて、夜静かな時にボリュームの調整幅を拡げようと思った。


 当初は、ルンダールのLL1931あたりが良いなと思ったのですが、高いので海外から買おうかと悩んでいる内に円高になってしまった。入力トランスは海外製の評価が高く国産は低い傾向にあるけれど、いかがなものかと思い調べてみたところ、タムラのトランスが春日無線で売っているのですが、これも結構な値段で振り出しに戻ってしまった。

『罪人を召し出せ』を読んでみた

  ヒラリー・マンテル 著  宇佐川晶子 訳

 16世紀英国の宮廷における権力闘争を画いた作品で、ヘンリー8世の王妃アンの」凋落を枢機卿トマス・クロムウェルの視点を通して物語は進む。NHKの大河ドラマだと思えばわかりやすい。でも、教訓や感動するような場面はない。


 ヘンリー8世と言えば、カトリック教会に逆らってイギリス国教会を創出しおた人物として名高い、それも最初の奥さんと離婚してアンと結婚をするために。もっともそのおかげなのか、6人もお妃を取り替えている。

赤い高梁 莫言 著 井口晃 訳

 高梁とはイネ科モロコシの品種で赤い花が咲き、葉はトウモロコシにそっくりなので、トウモロコシのような実がなるのかと思いきや、大き目な粒の実が稲のように連なります。


 そんな高梁畑が雄大に広がるなかに起きた支那事変に対する抗日事件の物語です。主役は祖父と祖母になり、まごが「わたし」と称して物語を綴ります。そしてその「わたし」が作者の莫言かと思うほど、リアリティな文章でフラッシュバックやカットバックが多用され、まさに映像が明晰に映し出されて動き始めて映画を観ているような錯覚に陥ります。(紅いコーリャンと言う有名な映画の原作ですが、私は映画を観てはいません。)

高剛性ヘッドシェルと純銅リード線に変えてみた

  Ortofon MC30の音がどことなく音の出方がクスんでしまうような、そしてトレースが弱くなって高音域でかすれが僅かに出ている。古くなってダンパーにへたりが来ているのかもしれないが、取り付けてあるヘッドシェルもオーディオテクニカのMS-9と古いものだ。

 MS-9はマグネシウム合金なのだけど、白い泡を吹いていたのはマグネシウムの反応だと思われるし、ダンピングのために貼られている上面のゴムがボロくなっている。
 リード線はMS-9に付いていた銀リッツ線で、ヘッドシェル側は半田付けされたものが販売されていた。現在は半田付けされているものを見ることはない。

ムッシュー・テストを読んでみた ポール・ヴァレリー 著 清水徹 訳

  ムッシュー・テストを知ったのは小林秀雄の評伝に出てきたからで、1900年初頭のフランスを代表する知的な詩人であるポール・ヴァレリーの作品である。


 小林自身も詩から始まって評論へと移る経緯がポール・ヴァレリーと重なる点が面白い。誌を理解できるものが哲学的になることに何かしら違和感を抱くのだけど、ムッシュー・テストは哲学的でもあり詩的でもある。

真空管Tung-sol 12ax7を買ってセッティングを変えてみた

  真空管12ax7を1本買うことにしたのは、ペルケ式のフォノイコライザーを作る時に買ったエレハモが、なんと太っちょだったためにシールドカバー付きのソケットに嵌らず、東芝の真空管を入れたのです。そう東芝の真空管は中古しかないわけで、プリアンプに付いている物を外して予備にしたかったのです。

 Tung-solにした理由は買ったことのないブランドだったことと、ギターアンプでは人気があるようだけど、プリアンプやフォノイコに使ったらどんな音がするのかしらんと興味本位なところもあったのです。

 送付された段ボール箱を空けると、青と白の綺麗な真空管の化粧箱が出てきて、デザインの良さに感心します。ともあれ、不具合がないかチェックするのに300Bのアンプのプリ管を入れ替えてみた。

2021年に買って音質のよかったアルバム

  最近はデジタル音源を買うケースが増えてきました。レコードは欲しくても新譜では少ないし、あっても高価なんでデジタル音源になってしまい、CDだと中古でとても安く買える時に購入するパターンです。

 デジタル音源の購入先は主にHDtracsになることが多く、四半期ごとぐらいに全品割引セールを行ってくれます。尚、Hi-Reso New Releaseだと毎週20%引きのクーポンを送ってくるし、カートに入れたまま忘れている(買うか迷ってる)と特別クーポンを送ってくることもあってマメな商売をされてます。

 2021年に少ないながら買ってよかったと思う音楽アルバムをデジタル音源、CD、レコードに分けて記録しようと思います。


マイケル・Kを読んでみた J.M.クッツェー 著  くぼたのぞみ 訳

  表題を見る限りカフカのKを連想するのだけど、どうもそうではないらしい。でも本の中身はカフカの掟の門前を行ったり来たりしたように思えてならない。


 3部構成になっていて、1と3部はマイケルを物語手が導き、2部は医者が一人称で語っている。この2部はこの物語の解説でもあるかのようで、一般的な人間社会で思考される自問自答へとつながる。

エスペランザ・スポルディングの新現代音楽を聴く

 12 Little Spells

 アルバムタイトルを直訳すると『12の小さな呪文』になる。これは1曲目のタイトルと同じでまさしく呪文のようだ。女性ジャズシンガーなのだけれど、とてもジャズというジャンルだけに収まらない。ヒップホップやR&Bとのクロスオーバーを遥かに超えてゆく音を聴かせてくれる。