ブロッコリー・レボリューション  岡田利規 著

  5編からなる短編集。文と文を句点『。』で区切らず、読点で『、』でつないで、次の文を形容する文体が特徴的なのだけど、谷崎潤一郎のような滑っとした嘗めやかさはなくてアッサリと単々としている。


 内容はどれも日常生活そのものであり、ある時間帯が切り取られ物語が語られるわけでもなく風刺があるわけでもない。だからこそ日常なのだと思うけど、その空虚さを感じさせてしまう。だからと言ってデカダンスでもないし、短編のタイトルは中身のほんの一部をさしているだけでテーマではない。

 何をしたいのかは知らないけど、同じ文章が繰り返されて嫌悪感がでる。本の表題の短編の中で繰り返される言葉、「ぼくはいまだにそのことを知らないでいるしこの先も知ることは決してないけれども」は裏腹の気持ちなのかもしれないが実に気障である。

 短編の中に被爆を恐れて東京を離れる話があるけれど、強制的に離れなければならない人々はどう思うのだろう。また、飲酒運転を自覚しながらこともなく必要性もないのに行う。推理小説やサスペンスならまだしも、日常生活の一部を切り出している中では如何なものだろうか。

 文章自体もつまらないのでどこかに本を置き忘れても気づかないような気がする、図書館で借りるときに3冊もあった、しかも借りた本は新品のようで誰も開いたことがないようだ。住民税が一番高いのに...配慮のなさが配慮のなさを呼び起こすことは実に悲しい。