ブルースブラザースを聴く

  『ブルースブラザース』という映画のサウンドトラック。この映画を観ていない人は人生に残る映画だと思うので観るといいなと思う。R&Bに包まれた映画だけど、そこに人生がある映画でもある。出ている人もソウルの神様みたいな人ばかりで、よくこれだけの方をまとめて出演させたプロデューサーにも感心する。ストーリーも良く出来ているし、展開も早くて曲に酔いしれているとなんの場面なのか分らなくなる。こんなに名シーンの連続する映画も珍しい。



 ジョン・べルーシーとダン・エクロイドのコンビが兄弟に扮して、黒いソフト帽に黒いスーツに黒くて細いタイを締めて歌い踊る姿のカッコイイったらありゃしない。バンドのメンバーも一流だし、ジョンの唄い方はソウルフルだし、ダンのハーモニカもすごく上手い。そこに、ジェームス・ブラウン、アレサ・フランクリン、レイ・チャールズ、ジョー・ウォルッシュ、おまけにスティーブン・スピルバーグまで出てる。それに街の通りでギターを持って腰かけた爺さんが、ジョン・リー・フッカーで「ブーンブーン、ハオハオ、オーカモンカモン」っていぶし銀のだみ声で歌ってるから堪らない。

 この映画の中でローハイドを唄うのだけど、これは1960年代前半の人気テレビ番組でカウボーイを画いた西部劇。これを子供ながら眠たい目をこすりながら見ていた。それをダンが低い声で歌う姿がイーストウッドのようにクール。


ヒンデミットを聴く

  ピアニストのアレキサンダー・メルニコフがアルトホルン、チェロ、トロンボーン、ヴァイオリン、トランペットと各々に演奏するソナタ集で、とても高音質なCDです。ヒンデミットはショスタコーヴィチと同じ年代で最後のクラシック世代と言えます。音を聴くと現代音楽を思わせる雰囲気がありますが、近代的な中に古典的なメロディラインもあって楽しめます。



 気鋭なピアニストで研ぎ澄まされた音を弾いてくれますが、決して緊張しすぎずにヒンデミットの音楽を表現してくれるメルニコフは構成力があるように思われます。最初のアルトホルンの響きとピアノの響きが時の流れを緩やかにしてくれそうに聴こえて特に印象的です。どの曲も楽器と楽器が美しく、時には生々しくて新鮮な驚きの内に聴き終わってしまいます。オーディオのリファレンスとしても素晴らしいと思います。

ヨハネス・モーザーを聴く

 エルガー作・チェロ協奏曲

 ドイツ系カナダ人のチェロ弾きで1979年生まれですから、既に中堅どころという感じです。気にはなっていたのですが、新譜を買うにはと躊躇そていたところHDtracksからエルガーのチェロ協奏曲がお買い得な値段で出ていたものですから買ってみました。CDではチャイコフスキーの曲と抱き合わせで、そこそこのお値段ですから、1曲にしてもお安いので試にはいいです。音源も96kHz-24bitですから、聴くには十分なbitrateでチェロの響きも滑らかです。

 曲の長さは30分程ですので、チェロの響きに酔いしれている間にエンディングになります。オーケストラの音が出しゃばらず、チェロの重厚な音から軽やかな音色まで堪能できる秀作だとおもいます。ヨーヨーマのように哀愁を帯びた情感のように麗しい感じでもなく、カザルスのようにチェロ・チェロ・チェロという感じでもなく、現代的な端正で鮮明なハイレゾのような音色で好感が持てます。実にこの値段でこの曲をこのチェロを聴けるのは仕合せです。




かくしてモスクワの夜はつくられれ、ジャズはトルコにもたされた   ウラジミール・アレクサンドロフ  竹田円訳

  表題のジャズに釣られて読んでしまった。ジャズそのものへの言及はないので、いささか拍子抜けではるけれど時代の大きなうねりを肌に感じられる歴史書だと思う。主人公であるフレデリック・トーマスは実在の人のようで史実にもとづいてあるようだけど、フィクションだったらこれまた凄いものだと思う。文章は優れた報告書を読んでいる文体なので読む易いと思う。文学的な香りを求める方には物足りないけど、生活の中から観た20世紀初頭の国の変わりようを歴史書として観れば優れた本だと思う。



 フレデリックは米国生まれの黒人でヨーロッパを彷徨い、モスクワで一旗揚げるがロシア帝国の泡沫に飲み込まれそうになり、イスタンブールでやり直す。ほとんど一文無しから豪奢なナイトクラブを二度経営するのだから破天荒な人生である。米国は黒人奴隷解放となるものの人種差別に苦しめるのに、欧州では黒人に対する偏見は無く、特にロシアでは珍しがられることに世の中の広さを感じる。でも姿を変えて差別はどの世にも存在し、階級もしかることながらロシアでの人種差別はユダヤ人への偏見であることに気づく。

 時代の荒々しさの中で人の普遍的な部分を嗅ぎ取って生き抜くさまは痛快でもあるけれど、ジャズには感嘆しなかったように思える。

韮の花が意外と綺麗

  韮は食べるもので花なんぞとは縁遠いものだと思っていたけど、ふとしたことで韮の花を見つけた。これが、小さくて白くて寄り集まって意外と綺麗なんで妙に感心してしまった。身近な食材なのでいろいろとお世話になっているにも関わらず、実際の姿を知らないものは多くあり、韮もそのひとつだった。なにせ、同じネギ属の長ネギや玉ねぎなども一体のものだと思っていたら別物だったし、幼いころおふくろにあれは何かと問われてネギ坊主を答えられなかった。



 韮はパッと見ると雑草に見え、他にも似たような草があるのだけど食用で栄養分も高いときている。人の文化というものは食の中にあるように思え、長年の積み重ねのなかに知恵が働くようである。


FLACをALACへMacで変換(To M4A Converter Lite)

  Macで音楽を聴くときにiTuneを使うことが多いと思いますが、音楽フォーマットのFLACに対応していないのがちょっと面倒だったりします。そこでALACに変換するサービスを探すのですが、Onlineどころかアプリでも都合のよいものが見つかりにくいです。検索するとXLDやFLAC2iTuneなどが出てきますが、アップルストアへの登録がないせいか、インストール時にMacから開発者が不明との警告が出るし、FLA2iTuneなどは製作日が古いようなので躊躇します。




 そこで、アップルストアで見つけたのが To M4A Converter Liteです。紹介ページに変換フォーマット先としてM4A, MP4, AAC, ALACの記載があり、元のフォーマットの記載は『さらに見る』をクリックすると出てきて、MP3, FLAC, WAVなどが対象ですので、主だったところはカバーできます。それに、変換したらiTuneにそのまま反映されるし、タグやサムネイルも付けてくれるので手間いらずでとっても便利です。




 インストールしてアプリを立ち上げると、簡素なウインドウが開きます。フォルダをクリックするとファイル選択の画面が立ち上がりますので、該当するフォルダまで移動して曲を選択して変換をクリックするだけです。APP内課金(Show in Finder機能で課金画面がでました)とありますが、変換するだけなら無料で対応できました。

 曲の販売サイトでFLACかmp3しか選択できない時に、appleを使っている人は困りますよね。mp3では間引きされているデータがあってロスが気になるし、FLACはそのまま使えないしと悩んでいた方には重宝します。


トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す を読んでみた トーマス・マン著

  詩人と小説家の旅を題材にして短編2編で、美しい人にとらわれた心の移り変わりを哀愁あるタッチで描いた秀作。高橋義孝さんの翻訳が絶妙で日本語のこまやかな語彙が新鮮に映る。



 

トニオ・クレーゲル

 幼いころに惹かれた男の子と女の子はともにブロンドに青い目をしていて、詩を密かに作るトニオは悠然とした振る舞いのできる二人に憧れる。少年から青年へ移り変わる心の揺らぎの描写はトニオの性格をよく著わしていて、文章を読むのが楽しい。描写の綴りが多いのだけど、翻訳者の溢れんばかりの語彙に助けられ苦にならず、トニオ・クレーゲルが詩人である感性のありようが映る。

 中年になるころには詩人として名を馳せているのだけど、故郷の近くの海浜のホテルで懐かしいひと時が蘇る。少年時代の風景と心理が重なり、人の芯なる部分はそれほどに変わらないことを思い起こさせる構成がすばらしい。風景と心理描写だけで読める小説は少なく、ふとダブリン市民を想いだした。そんな情景をつらつらと読み耽ってゆくとベートーヴェンの九つの交響曲が顕われるのだけど、トスカニーニの第九が部屋中に響いてシンクロしている。本を読んでいると稀に文体と実態が同期することがあり、なぜこの本を手に取ったのかを一人合点する。


ヴェニスに死す

 アッシェンバッハなる年老いた小説家が南国へ旅に出てヴェニスに落ち着き、蜂蜜色をした髪の美少年に惚れてしまう。だからと言って会話をすることもなく眺めるだけなのだが、それだけで文庫本50ページに及ぶのだから大したものである。アッシェンバッハはいろいろな思い付きや考えを述べるのだけど哲学や芸術論などが挿入されて作家の思想がはみ出ることはなく、ただひたすら日常と少年の美しさが展開される。街の中を家族に連れられ物見遊山する少年を密かに追うシーンは今だとストーカーになりそう。でもドキドキする描写はよく描かれている。

 芸術作品なる小説を執筆してきて威風のある老人が少年に惚れるアンバランスな点が滑稽であるがゆえに美文になるのかもしれない。翻訳がすばらしい。