ルドルフ・ゼルキンのピアノを聴く

  ピアニストのゼルキンは二人いて親子であるのですが、ここで聴いているゼルキンは父親のルドルフ・ゼルキンです。有名なピアニストはたくさんいますけど、ゼルキンの鍵盤をしっかり叩くピアノの音が好きです。
 奏でる音楽はいたってオーソドックスですが、曲が持つ印象をしっかり画いているように聴こえます。
 一つ一つの音を的確に作曲者の意図のもとに弾くことを教えにしていたと書かれていますので、その通りなんだろうなと思うのですが、ライブ演奏ではかなり自由になるようです。

 

シューベルト ピアノ五重奏 ます

 シューベルトの曲はほがらかで気持ちよいものが多いのですが、その中でもピアノ五重奏は楽しく面白く聴けますし、コントラバスの低音がとっても心地良いです。
 ついつい首を振りながらリズムとメロディに弾きこまれ、ピアノの高音が鮮やかに乗ってきます。



 春の野原を闊歩するかのような弦楽がするすると流れてゆく中に毅然としたピアノの音が全体を包み込み、主旋律を整えて構成されるのでより弦が楽しく振舞っても曲がはみ出ることなく特徴が洗練さるように響きます。
 そしてピアノ音もしっかりしている中で軽やかに踊り出すのですが、一音一音の余韻が甘くなく鮮明に聴こえて愉しいです。
 録音の音質は普通ですが、マスタリングは優れているレコードだと思います。


シューベルト ピアノソナタ21番 D960 遺作

 シューベルトが亡くなる年に描かれたピアノソナタ3部作の最終の曲です。シューベルトの曲はメロディアスで聴いていて、ほんわかしてくるところが好きです。


 静かにはじまり、雄大さが徐々に広がりながらも明るさと朗らかさが滲み出てきて、なんと落ち着きのあるシューベルトでしょうか。
 ゼルキンの弾くピアノは、その雄大さと落ち着きを押し込むような低さのなかに現れながらも、ほがらかさがほんのりと色づけされて心やすまるのです。



ブラームス ピアノ協奏曲第1番

 ジョージ・セルのクリーブランドオーケストラとの共演ですが、盤の音質が今一なのがちょっと残念ですが、ブラームスの綺麗な旋律が心地良いです。


 ゼルキンのピアノに合わせてオーケストラの音が回ってゆく中、ピアノのがっしりとした音が強く回り始めるのは、セルがゼルキンを気持ちよく弾かせているからだと思います。曲としては記憶に残るようなフレーズがなくて、ブラームスの室内楽曲としては何か物足りない感じを受けます。



ブラームス ピアノ協奏曲第2番

 こちらもジョージ・セルのクリーブランドとゼルキンの組合せです。これを聴くとゼルキンの力強さが曲とマッチしてすごく良いです。
 ピアノを綺麗に弾く人は多いのですが、この曲では印象が残りません。とても力強さがいる曲でメロディラインも特徴的でピアノとオーケストラがぶつかるような熱さがこの演奏にはあります。


 第1楽章でピアノの音にハッとして、第2楽章で弾きこまれ、第3楽章の始りはグッと力が一緒に入ってしまうぐらい、演奏と一体になる感じがよく、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番と同様に旋律が特徴的で面白いです。
 ピアノの強い音、弱い音、伸びる音と旋律を聴いていると大変そうな曲に思え、弱い音なのに力強く余韻を響かせているところがゼルキンのいい所だと思います。

ブルーノ・ワルター指揮のモーツアルト交響曲40番

ミルシティン:バッハ無伴奏ヴァイオリン