Ortofon SPU Synergy オルトフォン シナジー:レビュー

  Ortofon Synergyは2005年11月発売なので、既に16年の歳月が過ぎても色褪せることなく頂点にあるカートリッジの一つとして販売されています。チーフエンジニアであったペア・ウィンフェルド氏の最後の作品で、氏が最高傑作と評したカートリッジです。


 特徴は内部インピーダンスが2Ωと小さいながら出力が0.5mVもあることで、そのままMMで繋いでアンプのボリュームを大きめに上げれば昇圧しなくても十分に聴くことができます。

 適正針圧は3.5gなのでSPUシリーズとしては中庸な部類にはいりますが、一般的なカートリッジからすれば重い部類ですし、カブトガニのような橅材粉末を55%も含有した真っ黒い樹脂のGシェルと一体となっており、重量も30gとカートリッジ本体も重いです。
 なのでトーンアームでバランスを取る時に通常のカウンターでは重量が不足し、追加のカウンターが要るようになります。


 音質は明朗盛大でクッキリとしていて切れ込みが鋭く、ニュアンスの表現も細かく、録音の良いレコードを聴いたらDSD256を上回ると思える素晴らしい音楽を奏でてくれます。
 きっとセッティングが優れていれば、より迫力があって情緒豊かな音になるのだろうと思うのですが、拙宅だと少々難しい点があるようでちょっとした気難しい面がでます。

 昇圧をせずにMMのまま聞くと、ややソリッドな音になるのでオーケストラはコーダの部分などでやや響きが薄れるように聴こえる。MCトランスとの組み合わせもフォノイコライザーとの相性も重なり右往左往している。

 MCトランスOrtofon STA-6600がSPUとの組み合わせは良いと思うのですが、音圧がかなり高くアンプのボリュームを絞って聴くことになり、なぜだかSTA-6600の柔らかいバランスの良さみたいなものが少し隠れてしまいます。


 アンプで上げようがトランスで上げようが増幅という意味では一緒じゃないかと思うのですが、うーん違うように聴こえるんです。アンプはアンプの色合いがあるので、それを潜在的に期待して聴いてしまうのかもしれませんし、アンプのボリュームを絞ってきくのも釈然としないのかもしれません。

 同じOrtofon T-30というトランスの場合は、昇圧を選べるので一番小さいのにして聴くと丁度いいです。これにマランツ#7回路を模したフォノイコライザーを組合わせて聴くとオーケストラが朗々としながらも楽器の分離や調べの重なりも素晴らしく聴こえます。
 そのままビバップ時代のJAZZを聴くと良いことは良いのですが、Synergyの持つ特性を考えるともっとガシッとくるだろうと思えてきてしまい、なんだか欲が出てきてしまう。

 次はヘッドアンプにしたらどうなのかと思い、YAMAHA A2000に繋いでみる。Synergyのカタログには推奨インピーダンスが10-50Ωとあり、上限を記載しているのはSPUの中でSynergyだけなんです。
 気になってOrtofonに問い合わせしてみましたが、明解な回答はなかったです。ヘッドアンプの受けは100Ωになっていることが多いように思う中なぜ50Ωなのか、また違いはどれほど出るのかは不明です。



 YAMAHA A2000のフォノイコライザーは高域が伸びやかで気持ちよい点はそのままに再生され、音に少し丸みが出て室内音楽などもやわらかくニュアンスも表現されます。JAZZに関してはT-30と同様なので、MCトランスを中に接続して切り替えるようにします。

 UTCのFP-3427というトランスを組んだ時にPASSの切替を入れてあるので、ヘッドアンプを使うかMCトランスを使うかはセレクトだけで変更できます。
 UTCのトランスの特徴である中域に張りがあり、Synergyの持つ明朗で切れのある音がガシッと出てきてリアルな空気に包み込みダイナミックレンジの広さに驚かされるのですが、音の出方が強いだけにちょっと神経質なところがあってレコードを選びます。

 Synergyというカートリッジはまだまだ余力がありそうです。もうちょとなんだか分からないけど、頑張ってみようかなと思わせる逸品です。

PS.
 出力が高いので昇圧が10倍ほどの入力トランスを探していたのだけど遂に発見。それは、タムラのTHS-30です。国産品だからって敬遠されているから、価格も安くてありがたい。音は素直そのんまんまでレンジが広い、このあたりはさすが日本製。これがまた、シナジーの特徴を際立たせてくれた。
 ダンパーも使ってきてほぐれてくれたようで、高域での僅かなヒスもなくなり、ストレートで臨場感あふれる音が気持ちいい。オスカーピーターソンのプリーズ・リクエストという名アルバムがあるけど、持っているレコードはなんとなく曇るので良さが今一だったけど、これをこの組合せで聴いたら、レイ・ブラウンのベースが唸ること、ピーターソンのピアノが歯切れよく、エドのハイハットを叩く音が煌いた。
 なんかやっと、シナジーの魅力を引き出しかけているように思える。音楽の臨場感がいいなぁ、楽しくなる。

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