TOPPING D90 レビュー DSD256 を味わう

  Amulech AL-38432DSを使用していたが、DSD256はネイティブ対応のため、MacやラズパイではDop対応となりDSD128まででVolumioがネイティブ対応になったため期待したのだが、DACが対応できずDop再生だった。ちなみにAL-38432DSは2万円強とは思えないとても優秀なDACで国産である。DACチップはES9018K2Mだから発売当時は先端のチップであり、アナログはディスクリートで端正で鮮明な音がし、ヘッドホンアンプとしてはTPA6130A2を使っている。ちなみに後継機種のDRも3万円を下回る価格でなんとES9038Q2Mを2個使い、LRの各チャンネルに1個というハイコストパフォーマンスです。現状でもDSの音に不満があるわけではなく、やっぱりDSD256の音が聴いてみたい。

 そこで、DSD256対応のDACを色々調べてみて旭化成のDACチップAK4499に行きついた。AK4497も優れていてTOPPING D70なんかは2個使いで価格も手ごろなので一刻そっちにしようかと思うが、電流制御が気になるのでAK4499の基板キットで組めば価格も変わらないかと思い悩む。TOPPING D90を買えば済むことなのだがコストパフォーマンスが高いとはいえ価格がそれなりにするので手が止まっていた。そうしたら、コイズミ無線でTOPPINGフェアなるものが開催されて更なる値引き価格になっていたので買ってしまった。たったの2日間のフェアだったので運がよかったのだが、かなり売れているようで在庫切れ、しばらく待つことになる。
 その間にHDtracsから全品20%引きのメールが来た。2xHDレーベルからピアノ曲のバルトークのアルバムが出ていて前から欲しかったのだけど、DSD256の再生環境がないのでDSD128にしようかと迷っていたのだが、渡りに船とはこのことだから、買わなければいけない。
こういう巡り合わせでそっぽを向くと運が逃げてしまうので買ったのはいいけど、ジミー・コブが鬼籍にはいられてしまいラストアルバムを、グレゴリー・ポーターの新譜も出たなどとついつい買いだめしてしまった。
 バルトークは2台のピアノと打楽器のためのソナタとピアノコンチェルト3番で弾いているのはGyörgy Sándor(シャーンドル・ジェルジ)、この方のピアノの先生がバルトークなんです。ダウンロードするのに1時間ほどかかってます。アルバム数が多かったせいもありますが、DSD256のバルトークの容量が多くて数ギガになります。D90はDSD512もネイティブなら再生可能ですが、そもそもそんな楽曲が売ってませんし、アルバム1枚で容量が数十ギガになるのではないでしょうか、5Gの世代でも苦しそうです。 AK4499仕様書



 さて、待つこと3週間がすぎて発送のメールが届きました。黒い箱に入ってデザインはアップルのうように洒落ていて、日本よりセンスがいいように感じてしまう。仕切りの入ったパッドの中に本体と付属品が綺麗に収まってました。
 まずは、本体の裏にある電源設定です。出荷時は220Vになっていますので、115Vに変更、次にブルートゥースのアンテナ(使わないけど部品が行方不明になるのをさけるため取付)、USBの接続、そして電源プラグなんですが、コンセントに嵌らない。220V仕様だからアースプラグが付いてました。変換プラグがないので困ったために、薄い三俣のコンセントを家の中から強制調達して電源ON、パネルが表示したので、ラズパイの電源を入れてVolumioの設定を開くと、DACの選定にD90がされた。ちゃんとドライバーがあるようでVolumioは無料なのにたいしたものです。Dop設定のまま音出しすると、DSD256の表示で感激、次にネイティブに変更してみると、なんとDSD256の表示ですからネイティブ対応できています。目茶感激。(普通の方はここで感激しないですよね、技術屋の性のように思える)
 さて、一通り問題がないようですので、D90の再設定です。一度電源をOFFにして、全面パネルの左側のボタン(SELと書かれている)を押しながら電源ONすると設定画面が立ち上がる。まずは、ボリュームコントロールは不要ですので、右の上下ボタンで3番目のLO Modeを選択、左側のボタンを押すとPRE ⇒ DAC に変更、つぎに右側のボタンでBT(Bluetooth)画面を選択して左側ボタンでOFFに設定、つぎに左側ボタンでPCM FIR(PCM FILTER)を選択して左側ボタンでMode4に設定して完了する。Mode4はSHORT_DELAY_SLOW_ROLL_OFF_FILTERという名称で、40kHzまでなだらかに落ちて40kHz以上がカットされるようです。デフォルトではMode3になっていて24kHz以上がカットされるようです。ぱっと聴いた感じでは違いを認識できませんでした。Hi-Res音源を聴こうと24kHz以上のカットではと思ったのと、スピーカーが35kHzまでなのでとりあえずMode4を選択しました。CDのリッピングだとMode3の方が良いのかもしれません。このあたりは、マニュアルに周波数のグラフがついているので参考にしながら進めます。 取扱説明書
まぁ当分は、いろいろ変更しながら進めようと思います。



 音質についてですが、聴き始めは高音が固くて響きが少なく感じました。1時間ほどするとあったまるのと電流の通り方も安定するのでしょうか、固さが取れてきます。そこで、ヴィバルディのDSD256のソプラノを聴き直してみると、最初にDSDを聞いた時と同じ感動を再び味わいました。最初に聞いたDSDはMac ⇒ アムレックでDSD128にダウングレードされたDop形式でした。ラズパイにしてからはDSD128まではDop形式で送ってくれるのですが、音源がDSD256だとPCM384にコンバートされてしまい、「うーん」という感じでしたが、さすがにネイティブDSD256は持ち味が出ます。
 翌日はあったかな日で午後から落ち着いて聴き始めることができ、買ったバルトークをかけてみました。左右にある2台のピアノの旋律が綺麗でセンターの打楽器の押し出しが迫るようにきます。PCM384へコンバートされていた時にこんなリアルな迫り方をされなかったし、最初に聴いた時に左右のピアノの重なりが響かず単独に聴こえたのですが、フレーズがハモルように鳴ります。ちょっと高かったけどDSD256の音源を買ってよかったです。録音がよくてマスタリングのしっかりした音源を買わないとDSD256は高い買い物になりそうで、レーベルだけでなくマスタリング技術者の名前もクレジットして欲しくなります。
 次に河合楽器のピアノのDSD128を聴いてみると部屋があったまったせいもあるのでしょうが、低音域の出方が良くなっています。骨太で骨格のしっかりした低域の和音が響いて、オルトフォンのSPU GEを思わせるような鳴り方で、高音域に向かってはSPUのように台形ではなくピラミッドのような構成に聴こえます。さらにペダルを踏んだ時の弦の響き方が気持ちよく、ホールでピアノを弾いているような雰囲気も出て艶が載るようになりました。このあたりのニュアンスはAL-38432DSには無くD90の良さで、I/VコンバーターにOPA1612、アナログ出力段にLME49720を使っていて、良い素性のオペアンプを使っているおかげなのでしょうか。AK4499では出力電流が高くてI/V変換に対応できるオペアンプとしてOPA1612を推薦しているようで、D90では高価ですが指定通り4個も使っています。AK4499は1チップで4チャンネルあって、D90ではL・Rに各2チャンネルづつ割り当ててS/N比を高めているとのことで、チップのカタログスペックではS/N比134dB、Stereo 137dB、Mono接続で140dBなので137dBとなります。ちなみに2チャンネルのAK4497では128dB、Mono接続で132dBです。それに歪み(THD+N)は-124dBとありますので、非常に高スペックです。LME49720も超低歪、低ノイズのオーディオオペアンプとして有名ですし、価格もそこそこ高いです。音質は素直で特徴がないなどと言われますが、色付けが少ないということではモニター向きだと思います。骨格がしっかりしているとの意見もあるので、その辺りは性格がでているのかなとも思います。優れた部品を使って、良い音質でこの価格は破壊的だと思います。

                                Vivaldi Cantata DSD256

    

                                  Chopin DSD128

 次に、PCM174の音源であるレーベル2xHDのペトレンコ指揮、リバプールオーケストラのショスタコーヴィチ第7番をかけてみました。これは意外にもより静かな音になり、おとなしく綺麗なオーケストラに聴こえます。第1楽章で無音に近い状態から特徴のあるフレーズが繰り返され、ボレロのように音の大きくなる部分があるのですが、この時に全く無音になり、すごく小さな楽器が奏でるフレーズがきちんと聴こえるのに驚きました。以前は音が出始めたのはわかるのですが、団子になっててフレーズが読み取れなかったのです。ここはAK4499のチップの凄さだと思います。S/N比がよくて解像度が高くダイナミックレンジが下側にも広いおかげだと思います。40年前にCDを初めて聞いた時の静寂の中から音が出てビックリしたことを想い起させられました。

                                Bartok DSD256

 PCMの音はCDの延長線上の音に聴こえます。ブラインドで聴いたらDSDとの区別もできないかもしれませんが、PCMは優等生で周波数が上がるほどに秀才になるという感じに聴こえ優れているのは分かるのですが、レコードのようにエネルギッシュな塊を感じることはないのです。
 最近の録音でマスタリングも優れていれば96kHz24bitあれば十分なように聴こえます。DSD256とD90の組合せはレコードと同じようなエネルギッシュな塊を感じますし、音の静寂さや解像度を感じるとレコードを凌ぐように聴こえます。でもレコードの場合、音源とカートリッジとトランス、フォノイコライザの組合せで嵌るとやっぱりレコードはいいなと思うのですが稀な話です。そうして考えるとD90の出力段のオペアンプをソケットでDipタイプのオペアンプを交換できるようにしてくれると楽しみが倍増するように思います。
 拙宅にはターンテーブル2台、トーンアームが4台ありますが、D90の価格なら2台構成にしても安く、カートリッジよりもオペアンプの方がはるかに安価でオペアンプを交換しながら愉しむのも良いなと思ってしまいます。

                                PCM192 Boris

    
                                PCM96 Porter

 PCMのソースでは、サンプリング周波数よりもbit数の高い方が音質に対する影響が高いように思えます。ダイナミックレンジが拡がるようでバスドラムのように低音で瞬時にバッとでるような音はかなり変わり、32bitあると申し分ないです。HDtracksで購入したソースは24bitのはずですが、Volumioで再生すると32bitの表示になるところが不思議です。
 CDは16bitになるので、音のエネルギッシュな塊が無いと感じていたのはbit数の違いのようで、ソースによっては24bitと表示されていても16bitとの差異を感じないものもあり、レーベルによる違いもあるようでマスタリングの差なのでしょうか、レーベルによる違いも注意した方が良いようです。