変わったタイプを読んでみた トム・ハンクス著 小川高義訳

  作家のトム・ハンクスは、あの俳優のトム・ハンクスなのだ。映画で思い出すのはプライベート・ライアンやグリーンマイルなど数多く、プライベート・ライアンで最後にタバコを咥えるシーンが眼に焼き付いている。映画監督もして作家にもなって多才でマルチタレントとはこういう人のことを言うんだろう。

 あのゴツイ図体で実に洒脱で軽妙な文を書くので面白い、17の短編でどれも映画のシーンを想像できるところが映画人なのかなと思う。タイトルの変わったタイプとは違って、出てくる人物はどこにでもいる人たちに見え、みんな活き活きと生きている。読み進むうちに気づいたのはどの短編にもタイプライターが出演していてヒッチコックの映画のようだ。でも、どこにヒッチコック監督が顔をだしているのかわからないのもあったけど、この本でタイプライターは直ぐに見つけられる。なるほど、だから変わったタイプなのだ。実に洒落た人なんだと、だからあんな名演ができるのだろう。読み終わって楽しくなる本です。