オーディテクニカ AT-ART9XAを買ってみた

  レコードが最近少しだけリバイバルしているようで嬉しい。CDもなくなってデジタルデータの配信になり、DSD256なんていう情報量の多いデータも難なくネットワークでダウンロードできるようになった。それでもやっぱりレコードっていいなと思うのです。

 わが家にカートリッジは十数本あるのだけど、空芯カートリッジはなく音が聴きたくて空芯タイプのAT-ART9XAを買ったわけです。空芯というのは電線を巻き付ける芯のことで、鉄の材料が多く使われているのですが、それが空というのは鉄ではなく非磁性体の芯を使ったものでMCタイプになります。

 磁石に釘をくっつけると釘に釘がくっつくことがあります。これは鉄が磁化して磁石になるのですが、非磁性体なので磁化されないと磁化による歪を受けないということです。ならば鉄芯タイプのものは音が悪いのかというとそんなことはなく、いい音がします。そもそも歪を知覚するなんて聞いたことが無いし、歪んだ音が聴こえた場合はカートリッジ以外の要因でした。


 

 音の特徴としては繊細でフラットとか、緻密とか言われます。それがどういうことなのかと思い、買ってしまった。AT-ART9XAの出力は0.2mVで空芯としては高出力とのこと、針圧1.8g、コイルインピーダンス12Ωでシバタ針といった仕様です。シバタ針はもともと4ch用に日本人の方が開発したのですが、音をあまねく拾う能力が優れていて高い評価がされています。

 最初に聴いたときは音がバラバラな感じで戸惑いましたが、レコード枚数が増えるごとに良くなります。通常は数枚かけると落ち着くものですが、これに関して十枚以上を聴いても微妙に良くなります。どんなものでも機材というものは擦れる部分があって落ち着くものですが、結構長めなのに驚きました。



 音質としては明るい方で、繊細で緻密かと言われると線が細いイメージになりますが、そんなことはなく骨格はしっかりしていてやわらかく弾力性のある筋肉質的な印象を受けます。空芯だからこそという感じは受けませんが、MCカートリッジなのにMMらしいあたたかさを感じるとことはあります。

特徴としては中音が張り出して全体のトーンを支配するので、ドンシャリ傾向の音ではないのですが、この中音が実に魅力的なんです。メロディで音がつながって流れるときに、音と音のはざまの音色の変化が見事に表現されます。なのでソロや小編成の楽器の音が素晴らしいです。



 高音については伸びやかさが少なく感じるのは響きの減衰が早いからだと思います。同じオーディオテクニカのAT33Saでドイテムの夜の女王のコロラトゥーラを聴くと、その伸びやかさと声量の落ち着きからどこまでも音域が高く響くように感じられるのです。これを比較するのは良くないのかも知れません。

 レコードとの相性は大きいようで、スラッチノイズをよく拾い、なぜか静電気を帯びやすいレコードはあるようです。また録音状態がモロに出て、良い録音のレコードは本当にいい音がでます。

 フォノイコライザとの組み合わせを2種類しか聴いていませんが、掛け合わせによる特徴も良く出て面白く、結構マニアックな面白いカートリッジだと思います。


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