遅咲きの男を読んでみた  莫言 著  吉田富夫 訳

  21年6月に発刊された12編の短編集。とは言うものの中編に近い物語もあって、500頁近くもあります。主にエッセイ風ガリバー旅行記という印象を受け、要するに作家本人を出汁にして体制問題や汚染問題を画いてます。

 でも文体は非常に上手で構成も良く展開も心得ているから、ガリバー旅行記と同様に物語として十分に面白く、農家や鍛冶屋の描写は映画のように見えて驚きます。なんだかディケンズとデュマがいるようで、ハラハラドキドキした連続ドラマや涙ぼろぼろの人情ものなんかを描いたら釘付けになりそうで、代々幾千年も読み継がれることだろう。

グレン・グールドの才気あふれるピアノを聴く

 ゴールドベルク変奏曲 バッハ

 デェビュー作にして一躍有名なピアニストへ押し上げた作品。兎に角演奏時間が短い、ということは弾くピッチがとても速いということなのだけど、グレンの曲しか聴いたことがないので、何の違和感もなくスポーツカーに乗ったように景色が飛び去ってゆく開放感に浸ってしまう。


 この曲を弾く人がいなくて、このデビュー作がきっかけで他の方に取り上げられるようになったようだ。グレンが弾くからなのかも知れないけど、バッハらしさは無くちょっとスリリングな現代音楽に聴こえてしまう。

 1955年の録音だけどリマスターしたSONYのモノラル版をCDで買った。もともとがモノラル録音でステレオに変更したものもあるけれど、やっぱりオリジナルに近い方がいいと思い、こっちにしたのだけど大正解。とっても音が良く、ピアノのタッチが溢れてくるようなリマスターでした。

ペドロ・パラモを読んでみた  フアン・ルルフォ 著 杉山 晃、増田 義郎 訳

  メキシコの作家が1955年に書いた物語り、これがきっかけでラテンアメリカ文学の優れた作品が続いたと言われている。メキシコがラテンとは思えないけど、陽気な気質と荒くれな性格は似ているのかもしれない。この本でもその風雅が漂っていて、確かに似たような作品を思い出す。

生産終了になったDT1990proを買ってみた:レビュー

  どのヘッドフォンにしようかとずっと迷っていたのですが、Beyerdynamicの開放型DT1990proの生産中止を知って買いました。ヘッドフォンは種類が多くて悩むし、youtubeで簡易な試聴もできなくて困るんです。それに、ヘッドフォンアンプを作ろうと思って機材は買ったのですが、夏までに作ればいいと思い、未だ作ってないのでヘッドフォンも迷ったままでした。
 しかし、生産終了の報を見てダメだ買わないと、新機種のDT900Xも出て価格も手ごろになっているから、DT1990proも安くなっただろうと期待したのですが、なぁ~んとちょっとだけ値上がってる。それでも、ブラックフライデーで割引があって買いました。


目次
    1)音質について

イヴァン・フィッシャー マーラー交響曲1番 DSD256を聴く

  CHANNEL CLASSICSというクラシックレーベルがBlack Fridayということで、ダウンロードの楽曲を15%引きにしているのを見て買ってしまった。30周年記念のオムニバスをPCM44.1kHzに限って無料だったので以前ダウンロードして聴いたところ、実に録音がよいことを知り買いたかったのだが、ちょっとお高いので眺めていた。

 でもやっとCHANNEL CLASSICS でDSD256を買えたのだけど、近頃の円安でなんともはやです。22.1ユーロで約2,850円もしたけど、国内で買うよりはお得です。問題は買う楽曲でDSD256での再生ではオーケストラの音が良いと思うのですが、Iván Fischer & Budapest Festival Orchestraのシリーズはマーラーかブラームスで、すでにレコードがあるので迷ったのですが、やっぱりマーラーの1番なら好きなのでこれにしました。

砂漠を読んでみた  ル・クレジオ 著  望月芳郎 訳

  砂漠に生まれ育った二人の少年少女の眼から見た、砂漠に生きる人々のドキュメンタリーのように描かれている。物語の展開や内面的な思考がメインではない中で生きている空気の雰囲気が漂い、目の前に映像が流れているかのように文章に曳かれる。いわゆる文間を味わう妙味です。

 二人の少年少女はストーリーテイラーでもあり、主人公でもあるけれど、もう片側の主人公は二人の老人の生であり死であると思う。そして二人につながりはないけれども、青い民の末裔としての神話が支えているように思える。

エマーソン、レイク & パーマー(ELP)を聴く

 展覧会の絵

 ELPで最初に聴いたのがこのアルバム。もの凄い衝撃を受けたのとクラシックには全く無知だったのでカミさんに聞かせたら、ムソルグスキーの曲だと教えられて唖然としたのを覚えている。

 

レコードプレーヤーのターンテーブルシートを作ってみる

  ターンテーブルシートではコルクやフェルトやカーボンやら、いろいろな素材があって効能が謳われていて悩ましい。使った中ではパイオニアのJP-501が一番しっくりとくるので2台目のターンテーブルにも使おうと思のだが、結構な高値になってしまって指をくわえている始末。

 ターンテーブルによって音が変わるように聴こえたことはないのだけど、静電気の発生具合とか、レコードの密着具合とかが違うのは確かです。オーディオテクニカのアルミ製で中心がくぼんでいて、スタビライザーで密着するタイプはレコードの反りも矯正されていいのですが、勾配のあるところを針がなぞるのでなんとなくもやっとする気が起きる。

 付属のシートはゴム製なのだけど、ツルツルしていてレコードがスリップするような気がする。そこで、シリコン製のシートを敷いてみてはと思いつき、ダイソーで調べてみると、あったあったありました。キッチン用のシリコンマット、薄さ1㎜で300㎜×300㎜の大きさでちょうどイイ、しかも100円。



パイの物語を読んでみた  ヤン・マーテル 著  唐沢 則幸 訳

  トラと太平洋を漂流した物語。襲われずに生活したのだから、動物との共生の涙する物語かと思いきや、人の生きる根源の匂いがただようような気のする本です。でも沈没した船がツシマ丸という日本の貨物船っていうのがどうにも釈然としない。

 しかも、トーキョーをさかしまにしてみれば、動物が土砂降りに降ってくると書いてあり、こともあろうにオオカミまで入ってる。確かにとんでもないペットが逃げ出して大騒ぎしているし、下水道にはアナコンダや希少動物が居ると言われている。そうやっぱり野生動物なんだと本は教えてくれる。


オーディオテクニカ AT33Sa カートリッジを買ってみた

  代々続く33シリーズの中では異彩を放つ逸品だと思う。ボディのカラーが金ぴかではなく銀色なので、いぶし銀ではないかと思っている。そして何よりオーディオテクニカでは初めてシバタ針を使ったカートリッジなのです。

 

目次
    1)仕様について
    2)音質について
    3)トレースについて
    4)まとめ

ティムール以降を読んでみた  ジョン・ダーウィン 著

 ティムール以降1400年~現代2000年を著わした歴史書です。本の紹介欄に『ヨーロッパの膨張の歴史として理解されてきた世界史を、ヨーロッパがコントロールできなかった力学の産物として捉えなおす。』としてありますが、視点が欧州一辺倒ではなく、各々の国の状況と推移を報告した感じです。


ゴールドリングのエリートを買ってみた Goldring Elite : レヴュー

  Goldringと言えば英国の老舗なんですが、1906年の設立当初はドイツなのです。英国へ移転したのは1933年でカートリッジの生産も移転後のようです。CDからデジタルソースへと時代が変わってもカートリッジを作り続けている伝統に感心します。

 GoldringのカートリッジはMMの1012GXを持っていて、MMなのに端正で細やかな音をきちんと再生する職人気質のような風情で気に入ってます。MCでは以前から気になっていたエリートを中古で購入しました。Goldringのカートリッジは良い物なのになぜか人気がないので中古だとお得感があって嬉しいです。


目次
    1)仕様について
    2)音質について

ぺるけ式真空管フォノイコライザーを作ってみる

  真空管のフォノイコライザーはマランツ#7回路とマッキントッシュC-22回路を模したものがあるのですが、なんとなくもう1台欲しいなぁと思い自作することにしました。

 そうは言っても回路設計できるわけだは無いので、キットなどを調べていたところ、ぺるけ式の記事を見つけ音の素性も良さそうです。しかし、1台増えると置場がありません。しかたないので、YAMAHAのサラウンド機器を改造して組み込んだLT1115のトランジスタフォノイコライザーと合体すれば収まることを思いつきました。そこで大きさを計って筐体の設計です。


目次
    3)制作の続き
    4)音質について

赤い花が群がって咲き乱れている

  田んぼに流れている農業用水の脇に赤い花が密になって咲き乱れています。ちょっと見は園芸用の花に見えるのですが、人もあまり通りそうにない脇道ですから、花壇代わりにしているような雰囲気はどこにもありません。


ピカリング PickeringXUV4500Q 復活!

  MM型の米国製カートリッジでピカリングの一流品と言われるカートリッジです。中古品を購入した時にオリジナルでない針がついていて、高音域でハウリングするなど困り、XSV3000の針に替えてみたけどヒステリックなところは同じで腰も高く、こういう傾向なのかと思ったりもした。


トライアド Triad HS-1 MCトランス 配線交換 音質:レビュー

  MCカートリッジの昇圧をするインプットトランスの中で有名な機種と言えば、Western ElectricのWE-618B、Peerlessの4629(K-241-D)、UTCのHA100X、そして今回入手できたTriad HS-1だと言われている。もっとも飛びぬけて618Bが高くて手にできそうにないし、高額になると偽物も出てくるようです。さて音質はいかがなものか愉しみです。

 

目次
    1)昇圧について
    2)最初の試聴
    3)昇圧変更
    6)音質について

音律と音階の科学を読んでみた   小方厚 著

  いやぁ実にありがたい本です。僕は音程が取れないし分からないし、五線譜も読めないときているので始末に悪い。そんな自分にとって論理的な理解ができかつ音楽の教養も身に着く本でした。

 ピタゴラス音階から説明が始まり、音階と周波数の関係を現わしてくれて、音程の単位セントの話になる。音程の単位と言えば1度2度と呼ばれるものしか知らず、これが難解すぎて小学生時代にさっぱり分からなくなった。セントで教えてくれればもうちょっとマシだったように思える。


 ピアノの白鍵が1度だけど、ずっと間のことだと思ったら同じ音程が1度だということすら間違っていた。そこへ同じ白鍵が並んでいると短2度なんて言われてもうパニックです。数学的に考えたらそんな呼び方をしないと思う。その点ピタゴラスは数学者なので、そんな呼称は使っていない。(もっともその当時にピアノはなかったけど)この度数の考えを小学校の教材に使うこと自体がおかしいと思う。半音を1度にすればいいことだと思う。

 そのため、移動ドの時に意味がわからんかった。なんだどれもドなんじゃないかと思ったので、ハ長調やイ短調の意味もわからんかった。なぜハやイなんだと難解さは増すばかり。英語だとCメジャー、Aマイナーなわけで、実はこれでイロハが分ったというお粗末な話です。

 平均律の話と転調の関係も分かりやすかったし、音楽の作曲と音階の歴史のつながりも丁寧に説明されていて、和音の組合せにおいてスティーブ・バイというロックギタリストまで聴かれているのには少々驚きです。最近のコンピュータを使えば音律を自在に変更できるので新しい音が出てくるのを愉しみにしています。

中央のぼんぼりと黄色の花弁がハッとするミツバオオハンドウソウ

  散歩をしていると暑い日が続くのに真っ黄色の花が固まってひかってます。この時期に黄色の花と言えばひまわりですが、大きさが全然違いますし、真ん中の種ができる部分も小さいです。

 よく見ると茎のさきが枝分かれしていて、花がいくつも連なって咲いてます。なんだか花びらが下を向き始めていて最盛期を過ぎたのかしらん。でも、鮮やかで綺麗です。でも、花の名はいつも通りわからないので検索です。

 グーグルの画像検索では、ひまわりです。確かに構成は似ていますが、明らかに違います。似た花の画像を見ると似たものがありました。オオハンゴウソウやアラゲンハンゴウソウが似ていますが、葉の先が違うようです。さらに見るとルドベキアやキクイモも出てきましたが、やっぱり違います。

 似た花の画像をくるくるとめくっていると、ミツバオオハンゴウソウが一番似ています。葉の先の形状もおんなじなので、きっとこれでしょう。漢字も出ていますが、すごい漢字ですね。この猛暑の中でも元気そうですから反骨精神が高いのでしょうか。ちょっと元気が湧いてきます。

ソニー・スティットを聴く : レヴュー

 Boss Tenors   Gene Ammonz & Sonny Stitt

ソニー・スティットはジャズのサックス奏者。アルバムFor Musicians Onlyでディジー・ガレスビーとスタン・ゲッツと共演し、アルトサックスがカッコイイのでクレジットを見たら彼だった。


 ジーン・アモンズもサックス奏者で二人の掛け合いが実に心地良い。ソニーはテナーもアルトも吹いていて情感のあるジーンと情熱あるソニーの音の違いがソロの繰り返しで雰囲気を盛り上げてくれる。なかなか息の合ったコンビでこちらもグットのってくる。

 有名な枯葉を二人で吹いていて、二人の味の良さを存分に引き出しくるので、一粒で二度おいしい。


Meets Sadik Hakim

 ジャズピアニストのサディク・ハキムとの共演で1978年のアルバムですから、ソニー・スティットが54歳の時で亡くなる4年前の録音になります。


 緩やかに始まる1曲目がなんとも年齢を重ねた渋い演奏が染込んできて、晩年のスティットの味わいが堪能できる。録音の年代からするとフュージョンの時代に入ってますが、往年の二人がスタンダードナンバーを艶やかに演じる様は落ち着きの中に轟きを含んでいて心地良い。

 DSD64での復刻デジタルですが、レーベルが2xHDなのでいい仕事をしていて、彼らの演奏が蘇っています。


Kaleidoscope

 1957年にリリースされたアルバムだけど、録音は1950~1952のニューヨークですから初期の演奏になります。


 若さ溢れるサックスの音がどこまでも響く力強さに引き込まれてゆきます。ビバップの生気溢れる時代にエネルギーが迸ってるのがレコードを通じても感じる。こういう音ってレコードで聴くといいんですよね。

 ソニー・スティットの音はなんだかどこかに艶がのるように思えます。アダレイの方が奔放な吹き方で味がでるのですが、スティットの艶ってのはなんだか女の色気みたいなことを感じるのは何故なんだろう。


Sonny Stitt sits in with The Oscar Peterson Trio

 オスカー・ピーターソン・トリオをサイドメンにスティットが気持ちよく吹いている1959年のアルバムです。




 A面はアルトサックスで、曲はチャーリー・パーカーが吹いていたから取り上げたようです。パーカーにあこがれて吹き方も真似ていたのがスティットを形作ったのでしょうか、実に楽しそうな音色です。
 B面はテナーに持ち替えて、レイ・ブラウンのベースと響きと相まって味があり、録音も素晴らしく良いレコードです。
 オスカー・ピーターソンはリーダー作もいいのだけれど、サイドメンになるとメインの人がより際立つところが凄いと思う。ピアノ伴奏だけでエラ・フィッツジェラルドが心地よく唄ってるのを思い出した。





終わりの感覚を読んでみた ジュリアン・バーンズ 著 土屋正雄 訳

  還暦を過ぎた主人公のトニーのなんだか気だるい感覚は同じ年代になった僕にはシンクロするようにわかる。そんな時に青春時代を想い起す手紙がやってくる。誰しもが青春時代を共にした友人に関することであれば、記憶に刻まれたフィルムを巻き戻すのは容易なことだろうし、今の自分との違いが齢の過ぎた年月を彷彿とさせる。


 青春時代の若い気持ちと還暦を過ぎた落ち着いた雰囲気の描写が対照的で実に旨い。そして手紙が来てからなんだか青年時代にもどったかのような、それでいてやはり還暦であるかのような混ざり合いも見事である。

 それにしても離婚した奥さんに手紙の件で相談しているけど、僕だとありえそうになく離婚していなくてもそんなことはしない。離婚してたまに会って穏やかならばその方が羨ましい限りです。

 そんなありえそうにないけどあり得る情景のレベルが上がった結末もまた巧妙であるけれど、なんだか題名にはそぐわないように思える。

ビンカー・ゴールディングのサックスを聴く:レビュー

 2021年になる今日、ジャズもクラシックもロックも融けかけていて渾然としているように思える中で、新しいジャズはロンドンから巻き起こっているようだ。ヌバイア・ガルシアのようにアフロビートにのったサウンドが多い中でビンカー・ゴールディングのサックスはビバップな古き良き時代のジャズ音がところどころに散見されながらサックスを吹きまくる。


 アブストラクション・オブ・リアリティ・パスト・アンド・インクレディブル・フェザーズとやたらにアルバムタイトルは長いけど、久しぶりにこれだけ気持ちよく吹き抜けるサックスを聞いて嬉しい。ウィントン・マルサリスの若い時を想いだし、インプロビゼーションのジャズを想起させながら、うねるビートとリズムは新しい時代の芽を感じる。

 うーん、エネルギッシュなジャズやロックを聴くとやっぱり血が湧くね。


転落・追放と王国を読んでみた  アルベール・カミュ 著 佐藤朔・窪田啓作 訳

 昔日な思いのある本を改めて読んでみました。カミュという作家は好きで人が生きる狭間の中でふと陥るアンニュイな空間とそこにある思考に知らず知らず引き寄せられる。でもペストだけはリアリティが強いと思います。


 転落はパリで有能な弁護士を務めたものがアムステルダムへ移り住み、行きつけのバーで出会った同胞(弁護士)に人生を語る話。相手はあるけれど何も話さず、ひたすら主人公に読者が問われる形態になっている。原題はLa chute、転落、低下、没落、堕落の意味のようだけど、グーグル翻訳は秋とでる。橋ですれ違った女性が川へ落ちる話や弁護士で活躍した名声から抜け落ちた境遇から転落なのだろうけど、話の内容を罪悪のように思え堕罪の感が強いので堕落でも良いように思える。

 追放と王国は6篇の短編集です。砂漠の国なのに冬で気温が低いのがアンニュイな夫婦ながら想う気持ちをそこはかなく描かれた『不貞』から始り、霊魂を呼び戻す踊りの中に酩酊しコックは大きな石を運ぶ『生い出ずる石』で終わる。どの作品も濃縮された苦味があり、新しく移り変わってゆく中に生があるようです。

 若いころは憤怒と正義がごちゃまぜになったように押し寄せてきて、しっかりと立つ地が確かなのか疑心暗鬼に駆られていた。そして還暦を過ぎて読むとその通りであり、だからといってこれだという画一的なことはなく、畳の眼ほどに漸次静かに歩むと思える。


メロディ・ガルドー:レビュー

 マイ・ワン・アンド・オンリー・スリル

 ゆったりとして気だるいような唄い方はスローバラードが良く似合う。アコースティックなベースのうねりが彼女の歌声にからんで離してくれない。聴いた瞬間に虜にされるという雰囲気が醸し出される。

 どこまでもスムースでムーディーなジャズに少し枯れた声がゆったりと渚のようにおしてはひいてゆく時間が流れ、どこか擦り切れそうな神経のラインが生暖かい樹液に包まれるうちに穏やかに治るような、なんとなく重みがなくなり浮くような感じになってエンディングする。

 ノラ・ジョーンズのカム・ウィズ・ミーも売れるわけだと思ったけど、これもまた同様な思いになった。


サンセット・イン・ブルー

 5年ぶりの新作でスティングとデュエットした曲も入ってます。このアルバムには18曲のデラックスバージョンがありますが、13曲の通常盤を96kHz 24bitのデジタルソースを買いました。

 CDになってから1枚の曲数が増えてしまい、長いのだと60分を超えるのですが、飽き性な僕には長いバージョンはつらいです。できればデジタルソースで45分ほどに短くして価格を下げてくれるとありがたいです。

 アルバムの曲調はゆったりした曲が多く、彼女の気だるく物憂げな声色がデビュー時のアルバムを彷彿とさせます。でも声のトーンがすこし乾いてしまったように思え、ちょいっと粘ってからみとられるような部分が薄くなったのがちょっと残念です。

 話題のスティングとのヂュエットは良いのですが、こちらもスティングの声色がなんか柔らかくなってしまい、ちょっと冷たく突き刺す様な部分がなくなり、年齢を感じさせます。

 落ち着きのある唄声に、ベースの奥深く低いうなりがエマルジョンのように混濁して帳の落ちるころに気をやすめることが気持ちいいです。でもデビューアルバムの方がインパクトが強いですね。

ハドリアヌス帝の回想を読んでみた マルグリッド・ユルスナール 著 多田智満子 訳

  ローマ皇帝の中で五賢帝と言われたひとりで、ハドリアヌス帝の生涯を回顧録形式で綴っている。歴史書にちなんだ書き方をしているからだと思いますが、ドラマチックな文脈になる部分は少なく、坦々としています。

 かといって、ハドリアヌス帝の多様性や公平性、軍事展開に関する考え方についてはパクスロマーナを展開したといえ、随分と近代的なように思えますので、やはり史実としてだけではなく小説なのでしょうが、形容詞と修飾語ばかりの文体で政治や軍事などの考え方の詳細もなく、ひたすら想い出です。


 五賢帝の時代は世襲ではなかったことが賢帝を輩出した一因だという俗説を聞いていましたが、これを読む限りそうでもないようです。前帝のトラヤヌス帝には子供がおらず、親戚であったハドリアヌス帝を養子にしているし、ハドリアヌス帝も美少年を愛していて子息がおらず、やはり親戚のルキウスを選ぶのだけど病死してしまい、評価の高い執政官であったアントニヌスを選ぶのだけど、ちゃっかりその次の皇帝候補としてアントニヌスに親戚のマルクスを養子にとらせている。

 まぁ、そうは言うものの近くでずっと見ていたものの中から賢い人を選んでいる。幼いころから見ていれば性格もよくわかるのだろう。単に履歴を見て面談してみるだけで人がわかるのならば苦労しないのは現代でも同じだと思う。

 この本が著者の代表作のように書かれる批評を散見するけれど、そうなんだろうかと『黒の過程』を読むとそう思う。

エレクトロ・ハーモニックス 真空管 12AX7EHを買ってみた:レビュー

 ELECTRO HARMONIX社と言えば、ギターの歪音を作るエフェクターを作っているアメリカの有名な会社なんですが、真空管はロシア製なんです。

 真空管のフォノイコライザーを作ろうと思い買おうとしていたのですが、当初の予定ではTUNG-SOLだったんです。でもね残念なことに売り切れちゃって12AX7の増幅管は納入予定がないためにエレハモにしたんです。


 TUNG-SOLの音はメロウでダイナミックと言われているので一度聴きたかったのですが、フォノイコライザーであんまり快活すぎるのもという気もしていたので中音に張りがあるエレハモも魅力があります。

 綺麗な箱に入ってやってきました。いつも思うのは海外の商品って箱のデザインもクールなんですよね。日本人も美的センスが良い方だと思うのですが、なぜか工業製品になるとちょっと残念なことになるのが残念。

 マランツ回路のフォノイコライザーがあるのですが、この3段目を東芝の12AX7にしたところ、わずかに高音域へハイ上がりになってたまに落ち着かない時がある。前段が松下なのでクリアトーンになりすぎてしまうのかも知れません。でも、3段目はカソードフォロアーなので音色とは無縁かと思っていたのですがそうでもないようです。



 よく考えてみれば同じ真空管の中を通るのですから、音の信号側から見ると真空管の中で分岐しているようなものです。真空管の中のプレート(+側)から音信号を取り出した時の方が電流とは逆方向なので不思議なのかもしれません。でも電流は直流であって音信号は交流なので直流の流れとは違うわけです。また、プレートの電圧を大きく変化させることで増幅していて信号電圧もおおきくなるところが直流電圧の増幅が交流信号にコピーされるということなのだと思います。

 まずは、この3段目をエレハモに取り替えてみました。評判通りの音質で中音域に張りが出て腰が落ち着きました。前段にある松下の12AX7との相性もいいようで透明感を損なわずにしっかり感が加味されているようです。

 新作のフォノイコライザーは前2段が東芝Hi-Fiで後段カソードフォロアーをエレハモで行ってみたいと思います。


Tung-Sol(真空管 12AX7)買ってみた
ムラード真空管 12AX7

パワーアンプ 300B TU-8600 製作

真空管プリアンプ Chriskit Mk6 修理 その1
Chriskit Mk6 修理 その2


Kenny Barron & Dave Holland Trio “Without Deception”を聴く:レビュー

  ケニー・バロンとデイヴ・ホランドのウィズアウト・ディセプションはジャズファンの評価が高いアルバムだったのでPCD96kHz 24bit ソースを買ってみた。

 まさしくジャズです。ピアノ、ベース、ドラムスの重なり具合やグルーヴ感が嬉しい限りです。こういう音を聴くとほっとしてしまうのは、育ってきた年代のよな気もしますが、今の若い方でも年齢を重なると感じるような気もします。

 音楽を聴いていてふと、なぜだかポール・チェンバースとフィリー・ジョー・ジョーンズを想いだしてしまった。決して曲調が旧いわけではないし、演奏の仕方がビバップだというわけでもないのに想いだすあたりが、正統派ジャズの系譜と言われる所以なのでしょうか。

リンドウを大きくしたような花

 柵越しに白と紫色のリンドウをメチャ大きくしたような花が埋けられている。たしか、薄紫で白濁したような色の同じ花も観たことがある。花びらの直径は50~60mmほどもあり、筒状になっている部分も同じぐらいありそう。しかもそれが連なって咲いているので、結構立派に見えてくる。


 画像検索してみると最初の答えが『柵』と出て笑えた。確かに間違っておらず、大したものです。そこで花の部分だけトリミングして再検索すると、ふうりん草と出ました。これはなるほどと思える名前ですね。

 ヨーロッパ南部が減産で高さが60~120cmとありますので、まさしくその通りです。学名がCampanula medium、英語名がCanterbury bellsとのことで、bellとありますから、確かにベルで風鈴より花が大きいように思えます。やっぱり原産地の方がよりそった名前になるようです。

West Capのオイルコンデンサを買ってみた

  コンデンサの容量が0.15uFのものが必要なのですが、この容量は中途半端みたいでブランドの種類が少なくて困っていました。仕方がないので0.1uFと0.05uFに分けて購入すれば、随分と幅が拡がり、Orenge Dropの418Pにしようかと思っていました。これはポリエステルでBlack Beautyの後継品としてでたのはこのタイプだとのことです。

 ところが、オイルコンデンサで0.15uFを見つけてしまったのです。価格もヴィンテージとしては高くはないのですが、耐圧が200Vなのが気にかかる。作りたいフォノイコライザーの回路部分には通常電圧100V、過度電圧300Vとしてあり、回路では250Vの耐圧品になっている。まぁ壊れた時は壊れた時と思い買ってしまった。


 なにせWestCapのガラスハーメチックタイプですから良しとします。ガラスハーメチックとはガラスで機密封止をしたもので気密性が高いと言われてます。ガラスと聞くと割れやすいように思いますが、ホーローも金属にガラスを塗布したもので堅くて丈夫で装飾品では七宝焼きが有名です。


 品物が届き中身を確認します。薄黒い銀色ですが、古いものなので大体こんな感じです。トランジスタテスターで容量を計測、これはESRも測れるのがいいですね。めったに使わないと思ったのですが、ちょくちょく使う場面があってありがたいです。容量は0.148uFですから、ほぼ容量通りで、写真では148となっていますが単位がナノです。

 ついでに出ているESRは0.8と0.77Ωですから、アルミ電解コンデンサと比べると高い値です。低ESRが良いと言われていますが、ローパスフィルタ時に高い周波数でも減衰率が落ちないのが所以のように思います。今回はカップリングコンデンサなのでローカットになり気にしなくても良いと思います。

 ポリプロピレンの方が精度が良くて、音も素直で綺麗だと言われているので何も古くて高いものを使う必要もないのでしょうが、綺麗さっぱりカットされるのも味気ないと思うのはきっとアナログ時代に育ったせいでしょう。

ASCフィルムコンデンサ
ぺるけ式真空管フォノイコライザ

クリスキット オイルコンデンサ交換



ヌバイア・ガルシアのソースを聴く:レビュー

  新世代UKジャズのホープと言われているサックス奏者。新しいジャズムーブメントは英国から起きているようでエネルギッシュな若手が多く輩出されている。そして女性が多いのも特徴で、ヌバイアもそのひとりとのことです。


 音楽の雰囲気は、ヒップホップにジャズライクなテナーサックスをリズミックに吹いていて楽しい。とってもポップなんだけどやっぱりジャズって言うところが面白い。

 ウェザーリポートの初期ごろにレゲエをミックスするとこうなるんじゃないかと思うけど、曲の持つダンスビート的なリズムとインプロビゼーション的な音の入れ方が現代やなぁと思う。


 これがデビュー作なのかと驚くほど曲の構成が練られていてどの曲を聴いてもパフォーマンスがあってすこぶるよい。どれも似た曲の雰囲気になるので60分間聴き続けると少々疲れるのは、年老いたせいなのかもと思う。

 最近の音は録音が素晴らしいと思う。98kHz 24bit のソースをダウンロードしているが、音の一音一音が繊細で研ぎ澄まされているのは、最初からSSDに高周波数で保存されているのだろうか。



真っ赤な花が群がって隆盛して絢爛

  とにかくいっぱい花が咲いている。しかも真っ赤なので熱くエネルギッシュで力が湧いてくるかのようだ。茎に棘が見当たらないけどきっと薔薇の種類のように思える。


 画像検索してみるとLava Flow rosesと出ている。これの日本語名を探したけど分からず、直訳してみたらLava Flow = 溶岩流 だそうで、なるほどと頷いてしまった。


Shure MV88Microphone で録音してみた

  随分と前に高音質でiPhoneの録画を行おうとして、外部マイクを買ったのだけど、接続するためだけでも多種なケーブルが必要で、挙句の果てにちっとも音質は上がらなかった。
iphone:録音失敗

 やっと心の傷も癒えてきたので再挑戦。そこで見つけた優れものがShurePlus MOTIVアプリ なんです。なんとiPhone内臓マイクでも使え、Shure指定のマイクを使うと更に機能が増えるという優れもの。音質はPCM44.1Hzまたは48Hz、フォーマットはWAV、ALAC、AACから選択できます。


 まずはテストで録音してみると、割と良くはなっているのですが、内臓マイクのために広範な録音になってしまうようで繊細さが今一歩でした。ステレオ録音したい気持ちもあり、ShureのマイクMV88を買おうと思います。


ちょっと気になったのは、横向きで録画するとステレオマイクの向きが上下になってしまうのです。Shureの広告ページだと縦向きしか載っていないので、マニュアルを探してみると、マイクも回転出来て横向きの撮影も可能でした。

 新品はちょっと高いので中古を狙ってヤフオクを見ていたら、1万円以下で入手できました。これはラッキーです。マイクを接続すると下記の詳細画面が出てきて、マイク機能をいろいろと選べます。④で録音する状況に応じた設定がプリセットされているので、これをチョイスしてから好みの環境に変更もでき、状態の保存もできます。

 アコースティック楽器や静かな音楽向きとありますギターの絵のボタンを押すと、ステレオ幅が110度でゲインが27㏈となりました。テスト録画して再生してみると、これはなかなかGoodです。イコライザーも設定されるようですが、イコライザーの設定画面はフラットのままで、プリセットの状態は表示されないようです。


 使用しているiPhoneは#7と旧いのですが、なんらストレスもなく録画できています。使用にあたって面倒なのは、iPhoneの保護ケースを付けたままでは、マイクをライトニングの接続口には嵌りません。

 オーディオの再生音を撮ってみました。WAV形式で圧縮せずに録ると、音のしなやかさが出て、左右の音も移動しながら録った状況がよく分ります。これは、お手軽に撮影するにはもってこいですね。気に入りました。

MILTY  DUO-PAD レコードクリーナー



白い椿のような花がいっぱい咲いている

  花びらは大きくて真っ白、花は開ききるのではなくてちょっと包むように咲いていて、黄色のオシベがひしめき合って放射状に立っている。花の形状と言い、花がいっぱい咲く姿は椿のようなのですが、はっぱが違うような気がします。


 それによく見ると、紅い花の中から白い花が芽吹いてます。紅色はきっと額なのでしょうが、こんなふうに咲く花にきづいたことがありませんでした。

 紅と白と黄と緑が入り混じって、より白無垢のような花弁が清楚です。


死ぬまでに読んでみた本100冊を選んでみる

  読んだ本の中で(あまり多くはない)良かった、驚いた、泣いた、感銘した本

ロイ・ブキャナン『メシア再び』『LOADING ZONE』を聴く:レビュー

 『メシア再び』

 ロイ・ブキャナンは1970年代に活躍し、テレキャスターを有名にしたギタリストと言われてます。エレキギターの奏法や音の出し方などで先駆的であり、むせび泣くギターでも有名です。


 本作は、デビューアルバムにあるメシア再びを取り上げて、アルバムタイトルにもなっていますが、これは邦題で原題はA Street Called Straigtです。

 内容的にはブキャナンの朴訥とした詠い方が印象に残ってしまい、ギターサウンドは穏やかな楽曲が多い中、タイトル曲は語りの入った楽曲でエキセントリックなギターが渋いです。

 力みなく落ち着いた構成であり、ギタリストというよりは素朴な楽曲のアルバムという感じです。ギターワークを楽しむなら次作のLoading Zoneだと思います。


『LOADING ZONE』

 アルバム『LOADING ZONE』は、スタジオ録音の6枚目にあたり、参加しているミュージシャンがヤンハマー、スタンリークラークと豪華で1977年にリリースされている。ジェフ・ベックがブローバイブローでロイ・ブキャナンに捧げるとクレジットして有名になった。
 泣きのギターといわれているが、このアルバムではフュージョン系の音になり、新しいギターサウンドが展開されていて本領が発揮されていると思える。これはヤンハマーとスタンリー・クラークがチックコリアのリターン・トゥ・フォーエバーに参加していた影響をうけているように思える。

 テレキャスターのギターサウンドが兎に角気持ちよく、どこまで弾くのだろうと吸い込まれてゆくのが痛快である。このサウンドの流れに続くと思われるのがアル・ディ・メオラの初期の作品である。
 ロイ・ブキャナンはジミヘンの演奏を見た時に、自分がテクニックで苦労して出す音を、電子機材を使っていとも簡単に出すのに驚いた。そのせいだろうか、シンセサイザーを取込んでかなり複雑な音の重なりを作っている。
 そうかと思えば、カントリー調な素朴な唄もあってクロスオーバーした広がりのあるアルバムだ。


ジミ・ヘンドリックス  ジェニファー・ウォーンズ  ザ・バンド

スティービー・レイボーン  ロリー・ギャラガー  サンタナ

チューリップの葉をスラっと伸ばしたような葉の花

  葉っぱがチューリップの葉をスラっと伸ばしたかのように見える。でも葉っぱが薄くてとがっていて、観葉植物でよく見かける葉っぱに似ている。花は紫色で茶褐色の茎に連なって咲いている。


 田んぼへ水を供給している大き目な溝の横にポツンと3株ほどが寄り添って生えていて、とっても目だっているので顔が自然と向いてしまう。

 グーグルで画像検索したら『チューリップ』が出てくるけど、違うことは一目瞭然なので類似の画像欄を開いてみたらありました。

 英語名がBletilla striataで、日本語名はシラン。そんなシランがねなどとくだらないダジャレをしたら、漢字で紫欄と書かれていた。そうラン科ラン属の花なんです。鉢にいれて玄関に飾っておいても洒落てそうですが、やっぱり自然に咲いている方が好きです。

ミツバオオハンドウソウ

赤い花が群がって咲き乱れてる

5月中旬に咲く綺麗な花

アネモネ

椿の花びらで敷き詰まった絨毯


ネバーホームを読んでみた     レアード・ハント  柴田 元幸 訳

  いろいろな解釈のできる本だと思うけど、米国の南北戦争時代を背景とした寓話の印象が強い。しかも、コーヒーに甘味料を入れて飲んだ時に起こる釈然としない後味の悪さが残ってしまう。


終わりの感覚 ジュリアン・バーンズ


真っ赤な愛でる大きな花

 散歩道のお庭に真っ赤に咲く大きな赤い花が一輪映えてます。

花弁が多くて絢爛に見えるのは

下に咲く小さな花が可憐だからなのでしょうか。

さてさて、どんな名前でしょうか?

画像検索すると何故か?メッシュの樹脂成型品がでました。

それは明らかに違うので類似の画像を見ると

ほとんどがバラです。


でも棘が見当たらなかったし低かったし葉っぱがと思いながら

下の方を見てゆくと

SOPHY'S ROSE なるバラが一番似ています。

なんだかとってもいい名前

ソフィーの世界っていう本の名を想いだしました。

それからソフィア・ローレン

彼女がこの花を挿していたら

さぞかし美の協演のことだと思える。

Ortofon SPU Synergy オルトフォン シナジー:レビュー

  Ortofon Synergyは2005年11月発売なので、既に16年の歳月が過ぎても色褪せることなく頂点にあるカートリッジの一つとして販売されています。チーフエンジニアであったペア・ウィンフェルド氏の最後の作品で、氏が最高傑作と評したカートリッジです。


 特徴は内部インピーダンスが2Ωと小さいながら出力が0.5mVもあることで、そのままMMで繋いでアンプのボリュームを大きめに上げれば昇圧しなくても十分に聴くことができます。

 適正針圧は3.5gなのでSPUシリーズとしては中庸な部類にはいりますが、一般的なカートリッジからすれば重い部類ですし、カブトガニのような橅材粉末を55%も含有した真っ黒い樹脂のGシェルと一体となっており、重量も30gとカートリッジ本体も重いです。
 なのでトーンアームでバランスを取る時に通常のカウンターでは重量が不足し、追加のカウンターが要るようになります。


 音質は明朗盛大でクッキリとしていて切れ込みが鋭く、ニュアンスの表現も細かく、録音の良いレコードを聴いたらDSD256を上回ると思える素晴らしい音楽を奏でてくれます。
 きっとセッティングが優れていれば、より迫力があって情緒豊かな音になるのだろうと思うのですが、拙宅だと少々難しい点があるようでちょっとした気難しい面がでます。

 昇圧をせずにMMのまま聞くと、ややソリッドな音になるのでオーケストラはコーダの部分などでやや響きが薄れるように聴こえる。MCトランスとの組み合わせもフォノイコライザーとの相性も重なり右往左往している。

 MCトランスOrtofon STA-6600がSPUとの組み合わせは良いと思うのですが、音圧がかなり高くアンプのボリュームを絞って聴くことになり、なぜだかSTA-6600の柔らかいバランスの良さみたいなものが少し隠れてしまいます。


 アンプで上げようがトランスで上げようが増幅という意味では一緒じゃないかと思うのですが、うーん違うように聴こえるんです。アンプはアンプの色合いがあるので、それを潜在的に期待して聴いてしまうのかもしれませんし、アンプのボリュームを絞ってきくのも釈然としないのかもしれません。

 同じOrtofon T-30というトランスの場合は、昇圧を選べるので一番小さいのにして聴くと丁度いいです。これにマランツ#7回路を模したフォノイコライザーを組合わせて聴くとオーケストラが朗々としながらも楽器の分離や調べの重なりも素晴らしく聴こえます。
 そのままビバップ時代のJAZZを聴くと良いことは良いのですが、Synergyの持つ特性を考えるともっとガシッとくるだろうと思えてきてしまい、なんだか欲が出てきてしまう。

 次はヘッドアンプにしたらどうなのかと思い、YAMAHA A2000に繋いでみる。Synergyのカタログには推奨インピーダンスが10-50Ωとあり、上限を記載しているのはSPUの中でSynergyだけなんです。
 気になってOrtofonに問い合わせしてみましたが、明解な回答はなかったです。ヘッドアンプの受けは100Ωになっていることが多いように思う中なぜ50Ωなのか、また違いはどれほど出るのかは不明です。



 YAMAHA A2000のフォノイコライザーは高域が伸びやかで気持ちよい点はそのままに再生され、音に少し丸みが出て室内音楽などもやわらかくニュアンスも表現されます。JAZZに関してはT-30と同様なので、MCトランスを中に接続して切り替えるようにします。

 UTCのFP-3427というトランスを組んだ時にPASSの切替を入れてあるので、ヘッドアンプを使うかMCトランスを使うかはセレクトだけで変更できます。
 UTCのトランスの特徴である中域に張りがあり、Synergyの持つ明朗で切れのある音がガシッと出てきてリアルな空気に包み込みダイナミックレンジの広さに驚かされるのですが、音の出方が強いだけにちょっと神経質なところがあってレコードを選びます。

 Synergyというカートリッジはまだまだ余力がありそうです。もうちょとなんだか分からないけど、頑張ってみようかなと思わせる逸品です。

PS.
 出力が高いので昇圧が10倍ほどの入力トランスを探していたのだけど遂に発見。それは、タムラのTHS-30です。国産品だからって敬遠されているから、価格も安くてありがたい。音は素直そのんまんまでレンジが広い、このあたりはさすが日本製。これがまた、シナジーの特徴を際立たせてくれた。
 ダンパーも使ってきてほぐれてくれたようで、高域での僅かなヒスもなくなり、ストレートで臨場感あふれる音が気持ちいい。オスカーピーターソンのプリーズ・リクエストという名アルバムがあるけど、持っているレコードはなんとなく曇るので良さが今一だったけど、これをこの組合せで聴いたら、レイ・ブラウンのベースが唸ること、ピーターソンのピアノが歯切れよく、エドのハイハットを叩く音が煌いた。
 なんかやっと、シナジーの魅力を引き出しかけているように思える。音楽の臨場感がいいなぁ、楽しくなる。

タムラ THS-30 MCトランスを組んでみる

Triad HS-1 配線交換:レビュー