今日聴いているのは、邦題を『ラヴァーマン』といい原題は『Carmen McRae Sings Lover Man and Other Billie Holiday Classics』です。ビリーホリデーと原題にあるようにマクレエは敬愛していたビリーホリデーが唄ったスタンダードナンバーを収録していて、マクレエの唄の礎をなしているように思える。Lover Manという曲はビリーホリデーのヴァージョンが有名で、去った恋人を忍ぶ詩ですが、マクレエの気持ちもホリデーを想っているのかも知れません。彼女の歌声は美声であるわけではなく、女性にしては野太い低音と声量ある高音がズンズンと身体を揺さぶって抜けてゆくのである。シンプルなのに身体に残る伴奏がマクレエのヴォーカルを際立たせ、センターの少し上にマクレエのマイクが浮かんでいるように観える。頬杖をつきながらグラスを傾けるたびに喉元が焼けるように彼女の唄声が脳膜に染込んでゆく。