カーメン・マクレエを秋の夜長に聴く

 女性ジャズヴォーカルの大御所の一人であるカーメン・マクレエを聴きながら、ジョニ黒をカラカラさせながらチビチビと呑んでいる。彼女は1922年生まれで1994年に亡くなっている、享年72歳。1953年に初アルバムを出しているので、名だたるジャズメンを輩出した時代にデビューしたことになる。1990年まで毎年数枚のアルバムが出ているので人気の強さが分かる。一度聴くと忘れない唄声なのが、人気の続く要因ではなかろうか。

 今日聴いているのは、邦題を『ラヴァーマン』といい原題は『Carmen McRae Sings Lover Man and Other Billie Holiday Classics』です。ビリーホリデーと原題にあるようにマクレエは敬愛していたビリーホリデーが唄ったスタンダードナンバーを収録していて、マクレエの唄の礎をなしているように思える。Lover Manという曲はビリーホリデーのヴァージョンが有名で、去った恋人を忍ぶ詩ですが、マクレエの気持ちもホリデーを想っているのかも知れません。彼女の歌声は美声であるわけではなく、女性にしては野太い低音と声量ある高音がズンズンと身体を揺さぶって抜けてゆくのである。シンプルなのに身体に残る伴奏がマクレエのヴォーカルを際立たせ、センターの少し上にマクレエのマイクが浮かんでいるように観える。頬杖をつきながらグラスを傾けるたびに喉元が焼けるように彼女の唄声が脳膜に染込んでゆく。