カクテルの王者、マティーニ

 久しぶりに重厚に彫刻された欅の分厚い板に重苦しい鉄の大きなノックにハンドルが厳かに開いている扉をくぐる。ギムレットには早すぎるけどマティーニは待てない。まだ一次会には時間があるのでちょっと一杯、でもなぜ先に度数の強いお酒になるのかは不思議である。最近は夜が遅くなるとなかなか抜けなくなってきたし、いい加減飲んだ後にカクテルを飲むとドライになってしまっていけない。
 まぁカクテルの中のカクテルなので有名な訳なんですが、これを知ったのは映画の中です。きっと小学生のころに見た映画で当時は水曜日、土曜日、日曜日にTVが映画を流してました。日曜日は『さよなら、さよなら、さよなら』で有名な淀川長治さんでした。もう本当に映画が好きなんだなぁってことが小学生の自分にも伝わってきたことを覚えてます。さて、このマティーニが出てきた映画の題名は思い出せませんが戦争映画でした。前線に張られたテントの中でカクテルを飲む話になり何故か集まった三人(四人?)がジン、リキュール、シェイクを出すわけでカクテルと言えばマティーニを作るんですが、肝心なものがない。そこで最後の一人が水筒の飲む口を開けて、−オリーブがなけりゃマティーニじゃない−と言って人数分のオリーブをグラスに入れるシーンが網膜に焼き付いてしまった。それ以来、お酒がなにか知らなかったけどマティーニを飲もうと誓った。

 ドライマティーニが一般的で普通に頼むとそうなる。だいたいドライが好きだったのはチャーチルで、ほとんどジンだろうと言うぐらいドライが好きだったらしい。まぁあの方は葉巻をふかしてるからね、きつくないと味がわからなかったのか、精神安定剤になってなのかは遺跡を掘り起こすしかないだろう。まだ、時間が早いのでこれは甘いマティーニだ、リキュールはチンザノ(ほんとはマルティニがよいのだけど、何故かこのBARにはないんだ。マティーニカラーのレーシングカーはあんなにあるのに。。。)、ジンはボンベイサファイアだ、これは限りなく透明に近いブルーでとっても綺麗だ。きょうはちょっとオリーブの小さいのが気になるが、この青梅みたいなオリーブの味がマティーニの苦味をほぐしてくれる。ほんのり金色がかった魔法のようなお酒なんだ。きっとオリーブオイルが滲んでいるのだろう。