リヒテル&ブリテン オールドバラ シューベルト

 作曲家であり、指揮者であり、ピアニストでもあるベンジャミン・ブリテンが主催するオールドバラ音楽祭にリヒテルを招いてピアノ連弾をした時のライブで1964年と1965年の録音です。これはDECCAが出しているリヒテル&ブリテンのⅡの方でⅠもあるのですが、高いものだから買えていません。Ⅱの曲目は、幻想曲、創作主題による8つの変奏曲、グラン・デュオです。いずれも晩年の作になり、幻想曲はつとに有名ですが、変イ長調の創作主題は90秒から210秒ほどの短い曲が連なり、各曲の展開が大きく愉しめます。最初のテーマにおける出だしの旋律などは美しき水車小屋の12番休憩と同じリフで思わず口ずさむぐらい印象的で最後の曲の出だしにつながって輪になっているように思える。音楽祭の開かれるオールドバラはイギリスで北海に面し、ロンドンから北東140㎞にある小さな街でクラシックが身近にあることを西欧では思わせます。

 リヒテルのピアノは一音一音がくっきりしていて響きが綺麗なので知らず知らずのうちに引き込まれてゆきます。そしてシューベルトの愉しさに二人の弾きてが感化されるようにコンサートホールが包まれてゆくのが良く分かります。二人のそろう時間は限られているのにどうしてこんなに調和のとれる演奏ができるのでしょうか、名手に時間はわずかで足りるようです。かしこまってリサイタル開いている雰囲気は微塵もなく、友人の夕食会で意気投合して余興で弾いているかのようにピアノが響いています。実に和やかで響きが良くコンサートホールの情景も浮かぶような録音で優れていてDECCAの優秀だった時代を認識させてくれます。最近のような多重録音でなくきちんと遠近感の出ているソースを聴けることはオーディオを聴く愉しみにもなります。