アフリカの中央にあるブルジンという小さな国で過ごした幼年期を心のひだが擦れ合うように書かれた本である。ブルジンの隣りにはルワンダがあり、両国とも小さな国でツチ族とフツ族という民族が生活している。そう言われると思い出すのは、80万人もの人が虐殺されたことが記憶から蘇る。
裕福な家庭に生まれ、フランス人の父とルワンダから逃れてきた難民でブルジン人となった母を持つ男の子が主人公だ。学校もブルジョアな子供が集まる私立に通い、同じ地区の子供たちとちびっこギャング気取りで遊ぶ子供らしい子供から否応なしにルワンダ虐殺の中に引き込まれて大人になってゆく。豊かな自然に育まれた想い、そして大人たちの世界を覗き見しながら揺れ動く心と精神の描写が優しく秀逸な本である。そして戦争の無意味さと悲しみを教えてくれる本でもある。
ルワンダ虐殺は勃発的に起こり誘発されたものではなく、用意周到に組まれたものだと判明している。事を起こすまでの長い期間にプロパガンダされた仕掛けをみると伊藤計劃の虐殺器官を想い起してしまう。そして、教育として何を教育すべきかを考えてしまう。教養とは何か、倫理とは何かを思うと今の日本は仕合せだと思うのだが、そんな国でも教える人たち自身がいじめを行う。絶対的に優位な場所にいるから、更に自分の存在を確認する行為として人を虐待することでしか、己を目覚めさせられないのは実に悲しいことだと思う。