ジョニ黒を飲む

 ジョニ黒と言えば、スコッチウィスキーのジョニーウォーカー黒ラベルを指す。子どもの頃にスコッチは高級なウィスキーで裕福な家へ遊びに行くと凄く立派な家具にお酒のボトルが並んでいて、ジョニ黒とマーテルが置いてあるのだ。その当時、国内では買えなかったから海外旅行のお土産で買ってくるか頂くしかなかったように思う。なので国内で買うと目茶苦茶高いのだ。見るだけで触ったことは無い、なにせ触れることすら厳禁だとおふれが出ていたのだから。どっちも茶褐色で紅茶のように見えていた。そんな高級なお酒が今やスーパーマーケットで手ごろな価格で買えてしまい、鉱産品を買う気が起きないわけだ。

 ジョニ黒はブレンドしたお酒だけど、とても良く出来ている。ブレンドしたスコッチで有名なのは何と言ってもバランタインの16年だと思う。その上の21年を飲んだことがあるけど、16年の方が美味い。これはちょっと別格のように思う、他にもオールドパーとかあるけれど、ブレンドではジョニ黒を買うかバランタイン16年になってしまう。シルクハットに赤いダブル、白いパンツ、黒いブーツにステッキを持った騎乗着姿の紳士が歩いている絵を見るたびに英国って紳士なんだと思ってた。お酒のラベルで人の歩く姿で思いつくのは、同じく英国のビーフィーターだ。こっちはジンなんで種類が違うけど何か雰囲気が似てるんだよね。スコッチの封を切るとなんとも言えない香りが薫る。グラスに氷を4つ入れて瓶をかたむける。トクトクトクって瓶の口の根元当りで茶褐色の液体が躍るのを聞いているだけで楽しい。あの封を切って最初に注ぐねいろはいいよね、新品のレコードに針を降ろすときみたいにワクワクする。そして、グラスを回さずにちびちびと喉を慣らす。氷と溶け合ってゆく味が飲むたびに変わり実に面白い。ロックでそのままゆっくりと混ぜずに飲んでいる内に氷だけが存在しビルエバンスのピアノの終音が響いている。