アートペッパーをXUV4500Qで聴く

ミーツ・ザ・リズム・セクション
 アートペッパーは西海岸の有名なアルトサックスのジャズメンだ。1960年代後半から薬物中毒のリハビリのため活動を休止し、1974年より再開している。これを境にして前期、後期と言われることあがり、演奏スタイルの違いから前期の評判が高いけれど、僕はどちらも好きだ。このアルバムはミーツ・ザ・リズム・セクションという前期の録音で縦横無尽に吹き捲るごきげんなアートペッパーが聴ける。ジャズレコードの名盤としてランキングの上位にくるのでご存じの方も多いことだと思う。今回はそのレコードをピッカリングのXUV4500Qで聴いてみた。針が正規のシバタ針でないせいか、高域部分で跳ねる傾向があるけど、アートペッパーのサックスも飛んでいるのでいいのかも。

 このレコードは1957年ロサンゼルスでの録音で、ピアノ、ベース、ドラムがマイルス・デイビスのバンドメンバーで固められている。前期のアートペッパーは軽い薬中で行ったり来たりの生活で、どのアルバムも気持ちいいように吹きまくるからバラードのようなジャズを少しでも期待するとガッカリすると思う。そういう方は後期のレコードを聴くと多少なりとも気に入るのではないかと思う。アルトサックスではキャノンボール・アダレイも好きなんだけど、前期のアートペッパーと比べるとマイルス・デイビスのバンドだったせいか、インプロビゼーションとはいえ、どこかに秩序があるように思える。だけど前期のアートペッパーは幼少のころから吹き捲ってきた不良少年のようなエネルギーの衝撃のようで、その波に身体ごとさらわれてしまうところが気持ちよい。

The Art of Pepper
 ミート・ザ・リズム・セクションと同年代に出されたアルバムで、こちらの方が少し早かったと思います。アルバムジャケットはデザイン違いがあるようですし、リマスター盤もあって曲順の違うものもあるようです。
ノリの良いアルトサックスは軽快でアートペッパーの前期を現わしており気持ちよいのですが、B面の後半からヒスノイズが入って録音状態が劣化するのが難点です。しかし、A面は気持ちよく聴けます。この延長でよりパワフルになったのが次作のミート・ザ・リズム・セクションだと言えるのですが、こちらの方がより気楽に吹いているように感じて、すがすがしいです。

TRIP
 1976年にリリースされたアルバムで麻薬中毒から復帰した第2段であるがゆえに、表題のTRIPがなんとも言えないニュアンスを醸し出す。レコードの1曲目をアルバムタイトルにしただけなのだろうが、前期の音とは明らかに違って空白の15年がTRIPだったことを思わせる曲調である。これはこれで良くて空白じゃない15年だと思わせてくれる。

スローでナイーブな曲から軽快なアルトサックスまでバラエティに富んでいて、どこかしらしなびた哀愁と若き日の感性とがミキシングされた感を受ける。まぁでもこれは、前期の音を知っているからであって、これでアートペッパーを初めて聴く人には生まれない感情のようにも思える。なんとなくふとしたことで掛けてしまうレコードである。