フリッツ・クライスラーとラフマニノフ自作自演のCDを聴く

 フリッツ・クライスラーとラフマニノフは同年代に活動した音楽家で親交があったようだ。クライスラーはオーストリア出身でヴァイオリンの名手で作曲家、ラフマニノフはロシア出身でピアノの名手で作曲家だ。ともに2度の世界大戦を生き抜き、クライスラーは戦争で負傷しており本当に大変な時代だったと思う。


 フリッツ・クライスラーのCDは、ベートーベン、JSバッハ、メンデルスゾーンで1926年の録音、指揮者はレオ・ブレッヒ、オーケストラはベルリン国立歌劇場管弦楽団。録音が古い時代のものだからなんだろうが、ヒスノイズが全編にわたって入る。他の方はヒスノイズが小さいとコメントされているようだが、拙宅のCDは結構気になる。それでも、ヴァイオリンの音色が響くとうっとりと聴き惚れるほどに穏やかでいて一音一音がよく響いてくる。メンデルスゾーン作品64の最近の演奏は音の強弱が大きく、オーケストラの音でも圧倒されるしヴァイオリンの弦も高く突き刺すように飛び出てくるのだけど、クライスラーの演奏はまるで違う。弦の音が常に柔和で温かく、それでいて十分に曲の映像が浮かんできて、同時代のディヌ・リパッティの音像と似てこころ暖かく包んでくれる。