アキュフェーズ  Accuphase Integrated Stereo Amplifier E-470

 若かりし頃に憧れていたアンプと言えば、McIntosh と Accuphase の二つです。往年のころから音の造り方は今と同じ系譜でカラーリングも既に同様だったように思います。
  McIntoshのプリアンプC40を使ったので、パワーアンプもMcIntoshを買おうと思っていたのですが、MC300かMC7150が候補だったのでYAMHA A2000と持っている機材の年代が全て古いものばかりになり、壊れた時の対応や電解コンデンサーの取替などのメンテナンスも必要な時期で費用も結構嵩むことを考えるとどうしたものかと迷うことになりました。
 それにメンテしたらもう一方の憧れであるAccuphaseを聴かずに終わってしまいそうで悔いが残りそう。かと言ってMcIntosh Soundが中途半端なままなのも残念に思える。昔にAccuphaseのカタログを何度も眺めながら、終段MosFETを使い艶やかに伸びる高音域と言ったようなキャッチコピーを読んでは溜息をついていた。
 McIntoshは高すぎて程遠い存在であったため、国産の高級アンプのAccuphaseなら買えるんではないかと妄想を抱いていたのが蘇り、新しい技術の音像も聴きたい衝動に駆られてC40を下取りに出して買う気になってしまった。

 セパレートは高くて揃えられないからプリメインになる。E-270とE-370の構成を見るとパワー部は同じでポップス系の音ではE-270の評価が高いようだったのでE-270かなと考えていたけど、これで最後のアンプになるかと思うとAccuphaseではAB級で最大パワーとなるE-470に触手が伸びた。8Ωで180Wも我が家では不要であるが、A級は高いし発熱量が多く熱くなる。YAMAHAA2000は疑似A級で発熱が大きく電解コンデンサーの環境にも良くない。
 それならと思い切ってE-470を買ってしまった。あのMcIntoshのイルミネーションを眺められなくなるのは淋しいけど、シャンパンゴールドのフェイスにアナログのパワーメーターも良いものだ。【E-470 manual】

 RogersLS3/5aC40の20Wでしか鳴らせなかったので、E-470で鳴らそうと思い接続するとTANNOY Precision6.2LEをバイワイヤリングでスピーカーのA、Bに分けて接続できない。そこで、A2000を使ってバイアンプ駆動したのだけど、性格が違いすぎるて高音側、低音側を各々に変えてみてもアンバランスな高音と低音になってしまう。
 なにせ、E-470の骨格がしっかりしていて音の骨組みが違いすぎるし、スピーカーのネットワークとの相性も合わない。バイアンプまでするならチャンネルデバイダーが欲しくなるわけだ。もっともこれだけ性格の違うアンプでは無理があるようだ。
 ということでE-470にTANNOY Precision6.2LEをバイワイヤリングでつなぐことにしたのだけど低音が出ないのには困った。6インチしかないウーファーでコーンも揺れないタイプにダンピングファクターが500もあるせいなのかなと思いながら、まずは低音の多い音源でエージングを進めた。A2000の低音はルージーなのでPrecision6.2LEの締りが良いハイスピードなコーンと上手く嵌っていたのだが、E-470は骨格明確で締まっていて固いところが課題のようだ。
 とりあえずは、トーンコントロールを使ってソースにあわせながら聴きこんでいく、この点においてはMcIntosh C40のありがたさを思い起こす。トーンイコライザーのバンドが5ヵ所に分かれていて、好きなように調整が効いた。是非、Accuphaseにもつけて欲しいものだ。Accuphaseのトーンコントロールは操作が軽いし、勝手に全体を調整してくれるけど、C40を使ったものには辛いものがある。
 そして、ちょっと大きめの音で鳴らしている内に低域が出てきて、全体的に重心がさがってきてバランスが取れてきた。実に不思議なものだ、高回転なエンジンの車でも回してやらないと高回転でのレスポンスが悪くなり、特に回転の落ち方が遅くなるようだしパワーも出なくなるのと同じなのかもしれない。

 音域のバランスがとれて一音一音がしっかりしているのでオーケストラの音像が分離して各楽器がどこで鳴っているか解るようになったのには驚いた。Precisionn6.2LEの定位のよさには感心していたけど更に磨きがかかったようで嬉しい。でも、ヴォーカルが出てこなくて一つの楽器のように同じ面で聴こえてしまいロックを聴いていると淋しく、オペラを聴いているとそうは感じない。これは、ロックだとマイクを通ってミキシングしているからなんだろうかと脈絡のないことを考えてしまう。
 E-470にはフォノイコライザーが無いので、A2000のフォノイコライザーを使いTapeOutから繋いでいたが、プリアウトから繋いでみるとヴォーカルが出てくるし低音が膨らんでくる。こんなにプリ部で音が違うんだと面白く聴いている。どうやら、トランスUTC A-11A2000フォノイコライザー、E-470の組合せにも問題があるようだ。あんなに気持ちよかったA-11C40A2000の組合せとは音色が違う。
 そこで、マランツ回路の真空管フォノイコライザーにシュアタイプⅢでロックを聴いてみたら、ちゃんとヴォーカルが張り出してくるではないか。E-470は繋いでいる機材の素性がモロにでるようで組合せで面白いことになりそうだ。音の解像度が優れているので、ややもすると音楽にならず分析装置になりそうだけど、ソースや機材、素子の違いでまとまるかバラバラになるか、それはオーディオの愉しみであるように思える
 いずれにしても最近のHiFiであり、優れたアンプであることに間違いはなさそうだ。アンプが変わったせいでオーケストラを聴く機会が増えてしまった。クラシックではピアノ協奏曲を聴くと弦の響きがスーッと消える中、ピアノのアタック音が戦慄に立ち上がるところなんかも実に楽しい。静音は静まり返るのでアタック音が強調されて聴こえるようで、鍵盤の低音側も和音も気持ちよく響いてくれる。

 さて残った問題はRogersLS3/5aの方である。E-470で鳴らすと締まって聴きやすい音像になり、低音も小さなブックシェルフなのにしっかり出ていた。これをA2000に繋ぐのは昔の構成と同じで物足りないし、LS3/5aの側面を引き出し切れていないように思える。
 そこで、E-470のプリアウトから鳴らしてみた。いろいろとチャレンジすることは面白い、なんとタイトでパワフルに鳴るのだろう。しかもLS3/5aの定位はぼんやりとしているのだけど、それなりの位置で聴こえるし音楽全体の良さも増しているように思える。夜更けに小さな音量で聴くにはちょうど良い雰囲気で気楽に聴いて楽しい。