マリア・カラスのTOSCAをMC30で聴く

 1953年8月ミラノスカラ座におけるサバータ指揮のTOSCAである。マリア・カラスは1923年生まれなのでちょうど30歳の時であり、オペラ界で華々しく名声が拡がる時期の録音で名演奏と名高い録音である。でも、なぜかレコードはSTEREOになっている。原版はモノラルのはずなのでリマスターしたときにSTEREOにしたようだが、なにせ元がモノラルなので再生するとモノラルなのだ。でも僅かに左右に散る音があるところが面白く、そういう意味ではレアなレコードだと言える。指揮者のサバタはミラノスカラ座の音楽監督であり、オペラ演奏はつとに有名な指揮者で1957年には病のため引退しており、晩年の崇高な演奏だと言われている。非常に厳しい練習だったと言われ、マリア・カラスは声が出る限界までしごかれたとクラシックの百年史の中に記されている。

 このマリア・カラスのソプラノはすさまじく迫力がある。テノールのジュゼッペ・ディ・ステファノもこれまた素晴らしいのだが、その迫力を上回る歌声のマリア・カラスを聴ける。この素晴らしい共演があったせいなのか、マリア・カラスのラストツアーもこのペアなのだ。このレコードをオルトフォンのMC30というカートリッジで聴く、ステファノのテノールの旋律がとても美しく聞こえる。高音域の線が細くどこまでも伸びる傾向なのに、マリア・カラスのソプラノは声量もあり骨格を持って聴こえるところがすさまじいのだと思う。多少ルーズだけど低音域も意外と出ていてサバタの演奏が鳴り響き、ミラノスカラ座の空気が漂ってくる。