届いたレコードを早速かけてみるとあなびっくり、静電気とブチブチ音の連続ではありませんか。録音自体は良さげなんですが、いかんせんノイズの多さに渋面しながら3枚の盤の試聴を飛ばし飛ばし続ける。ノイズは多いものの傷は無く、音飛びもないので一安心。きっと長い時間眠っていたレコードなんでしょうということで、クリーニングの開始です。まずは100均で買った激落ちくんもどきに水を含ませんて盤面を摩ります。これは洗剤が入っていないので樹脂の盤面が化学反応で痛むような間違いはないし、水により静電気は除去できるという理由です。何回か盤面全体を柔らかくさすって残った水をレコードクリーナークロスのピスコ33で拭き取る。乾いてきたらバランスウォッシャー液のType Aを5-6滴、盤面に振りかけてピスコ33で満面なく伸ばして摩っていきます。これを3枚の盤の裏表を行うと結構な時間が過ぎているのですが、Type Bの液をかけて同じ繰り返しなのですが、B液はレコードかける方向にしか回さないようにとの注意書き通りに気をつけます。さて、これで静電気は取れますが、意外とノイズは減らないんです。じゃあダメじゃないかとなるんですが、細かいゴミはこびりついているので針圧の重いピックアップで何回も聴くんです。クリーニングした後はゴミが取れ易くなって次第にクリアになっていきます。
音質はとても良くて録音も素晴らしい、劇場名がクレジットされていないので分からないのですが、ウィーンですしコーラスに国立歌劇団が入ってます。PAを使っていないので肉声で劇場の空間が浮かんでいるのが分かりますし、初めて奥行きというものをAudioで聴いて感激ひとしおです。舞台の上を左右に前後に回りながら展開していく様にオケの音が手前から薫ってくるとは劇場の作りが抜きん出ているし、録音も負けていないのでしょう。この時代のマイクがどういうものか知りませんが、セリフの息遣いで空気が微小に震えているのが聴き取れます。テノールの歌声は朗々と鳴り、女王のアリアを聴いているとスーパーツィーターが欲しくなってしまいます。
DECCAのレコードには分厚い説明文と歌詞が付いてくるのですが、これがまた芸術なんです。幕のコンテ絵が入っていて劇場の映像を醸し出してくれ、観ているだけでも楽しく文化の奥行きを感じます。西欧で教養を身につけるには音楽も含まれているので生活空間が文化に包まれるのでしょうね。