ムソルグスキーの展覧会の絵をAT33Saで聴く

 展覧会の絵を初めて聞いたのはクラシックではなくELPというプログレッシブバンドだった。キース・エマーソンのシンセサイザーが強烈なインパクトだったし、グレグ・レイクの透き通るような歌声が幻想的でカール・パーマーの力づよいドラミングが心地よかった。でもこれはラヴェル編曲の管弦楽版のレコードだ。指揮者はユージン・グーセンスでロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏だ。残念ながら録音年と場所の記載がなく、多くのレコードで見受けられるが何故記載してくれないのか不思議である。

 ファンファーレで始まる主題は少しずつ音を変えて出てくるので誰でも記憶に残ると思う。カートリッジAT33Saで聴く出だしのファンファーレはトランペットの音がとても綺麗で金属の響きがどこまでも届きそうだ。
 AT33Saの高音域は固いボロンをカンチレバーに採用しており、それが鈍らずに飛び出してくるように思え、ヒステリックにもならずとても良い。その分、低音域がスポイルされるように錯覚するのだけど、チューバの野太い旋律が始まるとしっかり再現されていることが解る。
 オーケストラの各楽器が粒のように定位しており、シバタ針の音像を拾う能力の高さも活かされている。プロムナードの主題の旋律がワインを飲むほどに心地よく響き、クラシックを聴くのも実に愉しいと思う一曲だ。
 原曲はピアノだけど、管弦楽の広がりを聴くとこちらの演奏が多いのも頷くことができ、ラヴェルが管弦の魔術師と言われたのがよく分かる。