ババヤガの夜を読んでみた  王谷晶 著

 圧倒的な爆発力で起こした波は衝撃とともにエンディングまであっというまに駆け抜ける。まさにハードボイルドな文体で日本の小説でははじめてお目にかかった。


 英国で評価されて図書館には長蛇の待ち人ができている。作品は2020年だから、発売されて5年もの月日が流れている。最近は外国で評価されてから国内で読まれる本が増えているようで、日本の賞と言えば芥川賞、直木賞が有名だけどどちらも新人賞のカテゴリで本当に良い本は埋もれてしまうようだ。ミステリー部門ではアガサクリスティー賞なるものがあるようだけど?評価する仕組みがないと言うよりは残念なことに選考する力量に欠けるのかもしれない。
 ババヤガとはスラブの民話に出てくる鬼婆らしく、主人公はスラブ人との混血なのかもしれない。祖母の昔話に鬼婆がでてきて、それに倣うお話になっている。読んですぐに思い出したのはクローズ、ブラックラグーン、ファブルなどの漫画だ。すぐれたバイオレンス漫画は多くあるけれど小説としてこれだけドライブ感のある話を読んだことはなかった。
 構図的にはレイモンド・チャンドラーの『さらば愛しき女よ』を思い出す。軽妙なトリックが怒涛のような展開に伏線が重なり、文体もまた簡潔でリズム感のあるなかに人物を彷彿とさせる。