小さなことばたちの辞書を読んでみた  ピップ・ウィリアムズ 著 最所篤子 訳

  1900年初頭に英語の辞書を編纂する父親の娘として生まれ、ことばのカードをお守りにしてことばの中に生き、ことばを育んだ女性の物語り。


 文間から主人公エッシーメイの風合いと情愛がそこはかとなく漏れてくる。ことばの持つ意味を探し、人の会話の中に用例を求めることで人の生きている姿を学び育ってゆく。20世紀初頭の英国ではまだ夫人の参政権はみとめられておらず、女性の社会での活躍もまた男性の陰に隠されていた。意外と平等であることは現代において培われたのだと気付かされる。
 いつしかエズメを応援している、彼女のひたむきな姿がぼんやりとながら浮かんでくる文のうまさに身を委ねているのは心地よい。ブッカー賞の最終候補にも残らなかったのが不思議な気がする。読むにつれ枯葉の舞い落ちる切い揺れが重なってゆく。とても愛しいすぐれた本だと想う。