さようなら、愛しい人を読んでみた  レイモンド・チャンドラー 著  村上春樹 訳

 探偵マーロウがとてつもなくタフ。劇的な終わり方はドラマチックであり、そして全ての謎もまたエンディングまで迷走する。


 チャンドラーの文章は短いセンテンスで区切られることが多く、名文と言われても味気ない気がするのだが、そこがハードボイルドらしい。そう文体にもハードボイルドがあるようですが、村上春樹の訳に随分と助けられているような気もする。ちなみにハードボイルドの語源はゆで卵からで、固めに茹でられた身のしまった玉子ということらしい。
 題名も『さらば愛しき女よ』から随分と情愛ある風情に変わっている。それはラストシーンを観ればわかるように思えるし、原文にもそっているように感じる。代表作と言われる3作のうちの一つだけど、きっと構図が良くできているのだと思う。マーロウはあまりにもタフだし、運の良い偶然が何度も起きるわけで、活劇だと思えばそれで良いのかも知れないけどどことなく釈然としない燃え滓が残る。
 それを癒すためにエピローグがあるのだと思えば気を回してくれているのだろう。