カートリッジの聴き比べ 17点:レビュー

  1.  オルトフォン SPU GE
    発電方式:MC   針圧:3.5g  出力電圧:0.05mV


     骨格が太くて量感、力感ともに大きくオーケストラの迫力が迫ってくる。それでいて大雑把なところはなく、腰が低く音楽の持つ力強さと繊細さもよく表現される。カートリッジ初期に既に完成された音に驚く。

  2.  オルトフォン SPU Synergy  Link
    発電方式:MC   針圧:3.5g  出力電圧:0.5mV


     SPUの持つ骨格の太さを継承したまま、GEより明るさが増し、HiFi的なサウンドが展開され、煌びやかさに包まれながら音の緻密さにも浸れる。

  3.  オルトフォン SPU Ethos  Link
    発電方式:MC   針圧:4.0g  出力電圧:0.3mV


     骨格が太い割に音の端面がスパッと切れてゆくような、立上り立下りが速く現代的なデジタルサウンドを包括しながらも情緒感がそこなわれない。音楽の持つ広大なダイナミックレンジの場に立ち尽くす。

  4.  オルトフォン MC30  Link
    発電方式:MC   針圧:1.5g  出力電圧:0.08mV
     

    ふくよかな低音域と繊細な高音域をとりまとめ、今にも破綻しそうな絶妙なバランスのなかにSPUとは違う世界観が拡がる。

  5.  オルトフォン MC20W  Link
    発電方式:MC   針圧:2.3g  出力電圧:0.5mV
     

    中音域も張り出してMC30より骨太になるがSPUほどではなく、音のふくらみが音楽に暖かさを増し、量感に優れた音場を作り、高音域も太目であるが低音域とのコントラストで映えるように思える。

  6.  サエク C-1  Link
    発電方式:MC   針圧:1.5g  出力電圧:0.4mV


     高音域がすぅーっと伸びやかで、それに惹かれるように全ての音が綺麗にまとまってゆく。素直で誇張されるところはなく、自然に音楽を聴いてしまう。

  7.  デノン DL-103
    発電方式:MC   針圧:2.5g  出力電圧:0.3mV


     どこまでも全てが中庸で、どんな場面でも破綻がなく、レコードとの相性も広く様々な機材と組合わせても安心感がでる。

  8.  EMT XSD-15
    発電方式:MC   針圧:2.5g  出力電圧:0.21mV

     高音域にピークのあるドンシャリ傾向な音だけど、古いせいか実力を発揮していないようで、ダンパーのヘタリが早いのではないだろうか。


  9.  オーディオテクニカ AT33Sa  Link
    発電方式:MC   針圧:2.0g  出力電圧:0.4mV


     どこまでも高音域が伸びてゆき、高音域の幅の中で各々の艶が交り、ドイテコムのコロラトゥーラの響きが美しい。低音域は締まっており全体的に緻密で音の分離も素晴らしく細密描写のように展開され、スピード感が溢れている。

  10.  オーディオテクニカ AT-ART9xa  Link
    発電方式:MC   針圧:1.8g  出力電圧:0.2mV


     空芯は繊細で緻密と言われるが、ハイレゾの時代らしく明瞭な部類です。高音域での響きが少なく伸びないが、中音域が出色で音と音の移り変わりの表情を見事に捉えていて、聴きこむほどに良くなる不思議なカートリッジです。

  11.  オーディオテクニカ AT-VM95ML  Link
    発電方式:VM   針圧:2.0g  出力電圧:3.5mV


     価格からしてみたら良く出来ている。ちょっとの録音の質が悪いレコードなどはかえって気持ちよく鳴ってくれる。昇圧も不要だし針交換も手ごろだから気負わずに使える。

  12.  Goldring Elite  Link
    発電方式:MC   針圧:1.75g  出力電圧:0.5mV


     デジタルサウンドをカートリッジで実現しているような、切れ味の鋭い音の中に艶がのってくる。ピアノの音が生々しく音の立上りもさることながら、減衰の仕方が変に残らず音のつながりが美しい。

  13.  Goldring 1012GX
    発電方式:MM   針圧:1.75g  出力電圧:6.5mV


     MMなのにMCのようなクリアな音で、DL-103のように中庸でありながら、音がクッキリしていながらも音の重なりが綺麗なのはEliteに似ており、Goldringの特徴なのかもしれない。明るくはないが少し湿った空気感の中に音楽の響きが感じられる。

  14.  シュアー V15TypeⅢ
    発電方式:MM   針圧:1.0g  出力電圧:3.5mV


     腰の低い安定感のある押し出しが良く、ここがビバップなジャズに合っているのだろうと思う。音を分解的に出すことはなく、音のふくらみの中に音楽のつながりと力感が出ている。

  15.  Grace F-8L
    発電方式:MM   針圧:1.5g  出力電圧:5.0mV

     DL-103のMM版という感じですが、音の円やかさがMMなのだろうと思える。弦の響きを聴いていると心地良く、少しアンニュイな感じがこれまたいいのです。


  16.  Pickering XSV3000
    発電方式:MM   針圧:1.1g  出力電圧:5.0mV

     XUV4500Qの2chステレオ版ということですが、それよりはややピーキーに感じるところはダンパーのヘタリのせいかもしれない。ワイドフラットな傾向は共通しているようで、一音一音をしっかりと奏でるタイプです。


  17.  Pickering XUV4000Q  Link
    発電方式:MM   針圧:1.1g  出力電圧:3.4mV


     新品の交換針D4500Qを買ってシバタ針で聴くとなんて穏やかなのに緻密なことに驚かされる。MCを超すMMを創ろうとしたのだと思う。それでいてどこなく冷たさの残るMCをMMの持つ暖かさでくるまれて一音一音が綺麗です。気になるのはレコードとの相性では神経質な面を覗かせる。
 とっても気に入っていたサエクのC-1ですが、ダンパーの緩みを何とかしようと思ったのがいけなかった。ベリリウムパイプカンチレバーがいとも簡単に折れてしまった。あの高音の透き通るような、そして羽毛のような柔らかな伸びやかさはもう聴けない。

 追伸:LUXMANのL-550AXⅡを買った。このアンプは最近にしてはめずらしくフォノイコライザーを内蔵している。これでGraceのF-8Lを聴いてみたら、ふくよかで余韻のあるいい音を奏でているのに驚いた。