MC20Wはオルトフォンのカートリッジ。シリーズ初代のMC30を持っていて、繊細でありながらふくよかな低音が特徴になっている。でも、中音の張り出しがもうちょっと欲しいなと思うのと、LPとの相性もあって気難しいところがたまにある。
デジタルサウンドに対応した切れ味の良いカートリッジはあるので、1世代前のWシリーズならMC30の良さに骨格の良さも併せ持っているように記事を読むと思える。なのでMC30Wを狙っていたのだが、どれもこれも高い値段がついてしまう。そこでMC20Wをと思い、お手頃な価格で入手でき音質も思った通りで非常に嬉しい。
MC30Wと20Wとの違いは、ラインコンタクト針:5*80um ⇒ 5*70umと周波数特性20~40kHz ⇒ 20~35kHzで他のスペックは同じなのだ。内部抵抗6Ωや出力電圧0.5mVは同じなのに周波数特性の違いがどこから出てくるのでしょうか。あと、外観の色が違って20Wは碧く30Wはエンジで漆塗りになっていて、筐体は木紛と樹脂のコンポジットだから、SPUのヘッドシェルと同じ製法なのだと思う。とても美しい筐体で芸術的ですらある。
買った物がお手頃価格だったのは、カンチレバーが少し向かって左に寄っているせいだろう。アンチスケーティングの掛けすぎなのだろう。僕の場合はほとんど掛けない。そもそも針にアームが沿って動くのにアームに逆方向の力を与えてもカンチレバーの根元にトルクがかかるだけだし、それを押さえるダンパーはゴムなのだから、かえって動きが不自然になるように思える。
音質の方だが、カンチレバーの曲がりによって異音がすることはなく気持ちの良い音を奏でてくれる。もっとも新品を聴いたことが無いので、なんとも分からないのだが、一聴してすぐに分かるのは、音の傾向がSPU寄りになって骨格が太くなったことだ。SPU GEほどではないけど、MC30で不足を感じていた部分を少し骨太にして中音も負けないようにした感じです。
でも、高音域の伸びやかな繊細さは引っ込んで、低音にふくよかさがよりしっかりしたので、全体的に腰が下がった感じです。これでオスカーピーターソンのプリーズ・リクエストを掛けてみると、レイ・ブラウンのベースのホットな感じでドライブが利いて実に愉しいです。
デジタルHiFiなサウンドではなく、厚みがあってパワーのある、それでいてまとまり感のある音が欲しかったので、実にピッタリです。