Ortofon SPU Ethos:レビュー ハイレゾ時代のカートリッジ エトス

  新しいカートリッジを買うのは随分と久しい、どうしても名器と言われるものは旧いものだし、価格も新品は高いので中古になりやすい。しかし、今回は新品なのです。貧乏性なのに思い切って買ってみました。
 Ethos(エトス)という名のカートリッジはGoldringにあって、実はこれが欲しいなぁと思っていたところにオルトフォンから同名のカートリッジが出たのです。
 しかも価格がGoldringより安くて、SPUで500台の限定販売ときている。尚且つ、ちょうど運よく購入価格に相当する金額をいただける幸運に恵まれた。
 さらに、オーディユニオンに問い合わせてみると限定販売なのに割引してくれるというではないか、これは神の思し召しと思い早々に注文してしまった。


 コロナ過ということもあり、デンマークでの生産が遅れに遅れ、1ヵ月ちょっと待つことになった。でも、意外とこの待つ時間が愉しみで、待ちに待ったEthosが拙宅にやってきました。
 梱包を剥がして、Ortofonの白と赤にデザインされたケースを開けると、あのSPU独特のシェルが黒々と顕われ、Synergyと同じくシェルに金色のラベルと指掛けがが輝いています。



 パカッと本体を持ち上げると、なななんと針カバーがケース内のスポンジ枠に残ってしまい、針が露出しているではありませんか。これは気を付けた方がいいです。落としでもしようものなら...とんでもないです。

 スペック表を取り出して確認、針圧:3g ~ 5gで推薦は4g、出力:0.3mV、f特:20-25,000Hz±2dB、スタイラスタイプ:Nude Elliptical、スタイラスチップ半径:r/R 8/18μm、コイル ワイヤー:銅 8-nines(純度99.999999%)、重量32g、他のSPUより重量が2g重い。


 はやる気持ちを落ち着かせて、トーンアームのカートリッジを交換します。やっぱり新品のカートリッジはいいですねー、もう艶々としている。チャッキングロック式のヘッドコネクターにキュッと押し込みながら、チャッキングを回す。バランスを取って針圧を調整し、レコード盤を置く。

 ウィントン・マルサリスのトランペットの咆哮が響いてくる。ハイハットを叩く音が峻烈だ。出力が0.3mVとは思えない音圧で音の波が押し寄せてくる。STA-6600のオルトフォンMCトランスを間に入れてあり、昇圧比31倍は高すぎるようだ。

 音の第1印象は、SPUもハイレゾ時代にそってHiFi化したという印象。SPUらしい骨格のある音に、輪郭が鮮明でエッヂの利いたスピード感ある音だ。
 明るくて乾いた音はSynergyを継承しているかのようだが、Synergyのような華やかさと艶は少なく、端正でストレートな感じを受ける。しかし、これは音圧が高いせいかも知れず、高音域が少しチクチクする。


 そこで、MCトランスを同じくオルトフォンのT-30に変更し、フォノイコライザーをマランツ#7回路タイプからChriskit Mk6 のマッキントッシュC-22回路タイプに変更、T-30は昇圧比を変更できるところが大変重宝する。

 クラシック、JAZZ、ロックなど、とっかえひっかえ聴き続ける。音圧も低くなり、角も取れてきて豊かな表情が見え始める。交響曲のコーダの部分では、多くの楽器が鳴るなか、シンバルに隠れそうになるトライアングルの囁きも綺麗に響く。SPUにしてはモニター的に思えるが、ハイレゾの時代に合った進化だと思える。
 特筆すべきところは、音の奥行き感だ。拙宅ではあまり奥行きを感じる部屋ではないので、少々驚きです。
 女性JAZZヴォーカルを聴くと、綺麗に中央前面に立っていて、左にベース、その奥にピアノ、右にサックス、ヴォーカルとサックスの間の奥にドラムが鳴っている。ソースにもよるけど、僅かな差が綺麗にでている。しかも、ノリが良く、切れも良い。

 明るくて鮮明なゆえに、陰影が強くなるようで薄暗い部分の描写が見えづらい。ちょっと湿った陰な静かでもの悲し気なせつなさが滲み出る部分が静かになりすぎるか、乾いた空間になるように思える。

 だからといって、切々と唄う雰囲気はよく伝わってくるのは不思議です。きっと乾いた空気の中でリアル感がありすぎるのだと思える。ビバップなJAZZはごきげんですし、デービット・サンボーンのサックスはハッピーハッピーだ。
 コンドラシン指揮のショスタコーヴィチNo.14なんかは、死の歌で陰気くさいのだけど、それがわずかに乾くために却って凄みが増して恐いくらいです。バスとソプラノがすぐ際に立ち、打楽器と弦楽器が後ろからそびえるように立ちはだかります。

 2日程連続で聴いたところ、しなやかさも加味され、解像度が深くなってきたようです。その後、他のカートリッジを使ったら、?こんな鈍い音だったかしらん と驚き、CDを聴いたらこんなに音が粗かったかしらんと驚いた。
 SPU Ethosの切れ味が際立っているということなのだろう。斧のようにがっしりとした音なのに触れただけで切れる本田忠勝の蜻蛉切りでもある。

 まさに音像が抉られた彫刻のよう、DSDの時代にOrtofonの創るSPUが次なる扉を開いたようだ。うーん、やっぱり、新品はいいなぁーとつくづく想う次第です。

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