寒い日が続いてようように春のおとづれを感じる陽ざしになり、朝早く暗かった東の空も朝焼けが覗くようになった。
紺色に染まった柔らかなウィンチェスター襟のコートをまとい、にょきっと飛び出す細い首にえんじ色のマフラーをネクタイのように巻き付ける。
雨など降るような日でなくても折りたたみ傘の入った擦り傷のある黒い鞄を持つための手に暖かそうな手袋を付けて歩き出す。ときたま冷たい風が抜けていく田んぼの用水路の脇をとぼとぼと進んでいくと、白い花の一群が眼に止まる。
水仙のように見えるけど、葉先が細くて見慣れた水仙のようには思えない。こんな脇の部分でも、生き生きとこちらを見上げている。
草花は動くことはせずにじっとしているだけなのに、淋しそうでもなく動いているこちらの気持ちを柔らかにしてくれるのは不思議な気がする。
いろいろと写真を見て調べてみると水仙あやめに似てそうだけど、3~5月に咲くと書かれているので違うのだろう。