クリスキットMkⅥカスタムを整備する

 桝谷英哉氏が作られた真空管プリアンプのキット品を手に入れることができた。1975年ごろに販売されたので既に40年以上経過しているが、当時キット品で海外の輸入品に匹敵する音だと言われた。そして、クリスキットではこれが最後の真空管アンプで、この後のシリーズはトランジスタに変わってしまった。この型式の前がMkⅥで違いは、トーンコントロールが省かれていることだ。そしてこの機体は何故か全面パネルの印刷が少し違う。多くの機体は右端にChriskitの名前があり、ツマミの周りを黒いラインで囲ってあるのだが、この機体は左端下にChriskitCustomの名があり、ツマミ周りを囲う線もなく、MkⅥのデザインとほぼ同じなのだ。そういう意味では貴重品ということになる。フォノイコライザー部分はマッキントッシュの名機C22と同じ回路だそうで、これを聴きたかった。構成は、フォノイコライザー部 真空管 東芝HiFi 12AX7*3本、プリアンプ部 真空管 東芝HiFi 12AU7*2本 12AX7*1本となっている。購入した機材は当時組立てられたままのもので下記の写真の通りです。








 まずは音を出してみると経年変化のせいか、輪郭がぼやっとしており、音がごちゃっと中央に集まっていて音像が固まっているように聞こえた。製作された当時のままでメンテも改造もされておらず、アキュフェーズのE-470のパワーアンプ部に接続して、プリの切替ボタンを押すとE-470のメーターが振りきれて保護リレーが働きエラーで止まってしまい動揺した。TAPE Outからの出力では何の問題もないのだが、切替時になんか電流が漏れてノイズが出ているようだ。幸いにもE-470の電源を入れ直したら問題なく動作した。どうもコンデンサの容量漏れだと思うので取替が必要と思われる。TAPE Outからフォノイコライザーだけを使う分にはそこそこの音が出ているので、まずはこれで様子を見ることにする。E-470のプリ部が優秀なのだろうか、音場も拡がって聴こえている。クリスキットMkⅥのプリ部の12AU7*2本をテレフンケンに替えてみる。多少輪郭が鮮明になったけど名機と詠われた音ではない。この機材のためにテレフンケンまで買ってしまった。いよいよあぶない、深みに嵌ってはいけない。


 まずはフォノイコライザーと電源部分のコンデンサを替えてみることにする。上記の部品リストにはプリ部も記載してあるが、ここは結果を聴いてから取組むことにした。オイルコンデンサはSpragueやWestCap社製のものを何とか入手できた。あわせて電源部の電解コンデンサも買えたので、いよいよ取替するのだけど基板を外すには配線の半田付けを外さなければいけないのだが、あまり元に戻す自信がないので電源部以外は部品の脚を残して繫ぐことにした。音質的には良くないのだろうけど元に戻らないよりはマシだと思う。しかし、部品が古かったせいか脚をつなぐ半田が載らず苦労した。これなら、写真を撮って配線を外した方が良かったのかもしれない。なんとかコンデンサの交換を終えて導通と電圧をチェックして音出しをすると左側だけ音が出ない。テスターで何回チェックしても問題個所が判らない。真空管の基板を外した時にカラーが入っていて、LとRが同じビスで友締めになっている。これを戻した時にL側のカラーにビスが通っていないまま締めたみたいで、なんと短絡していた。今だったら樹脂製のガイドを差し込んで基板を止めるのだろうけど、40年前のキット品だから思わぬところで嵌りこんでしまった。それでも、音が両チャンネルから出た時はとっても嬉しかった。電解コンデンサーを30個交換するに1日かかり、カラーのトラブル対応に1日かかった。ヒーター部のコンデンサーの容量を間違えて買ってしまい、交換しても良さそうに思うけど何かあった時に疑う部分を少なくしたかったから今回はパスした。






 本当にしっかりした音になり、艶と潤いが出て明るく饒舌な感じが出ている。TAPE OutからE-470で聴くと切れ味が出て楽しく、しばらくはフォノイコライザーとして使うことにした。オペアンプの音と比べると立ち上がり部分が若干丸いかなと思えるぐらいでさして違わない。違いを感じるのは無音時の静音性なのだけど、気になることは無い。いずれにしても苦労した甲斐があった。最近の機材は集積回路が多いからとても手が出ない。なにせシルクスクリーン印刷でボンド塗布してリフロー炉で半田付けだし、部品が小さく手で半田付けしたらブリッジ確実に思える。そう考えるとこの時代の機材はなんとか手が入るので、これも楽しみの一つで嵌る気持ちが分る。【ChriskitMk6custom manual】

クリスキットMk6 プリ部修理