アンジェラ・ゲオルギューの椿姫を聴く

 椿姫のオペラはデュマの小説を歌劇にしたもので、デュマと言えば三銃士を直ぐに思い出すのだけど、三銃士は大デュマと呼ばれる父親の作品で椿姫のデュマは息子の小デュマの自伝的恋愛小説だ。いつもこんがらがってしまうが、所謂大衆小説として完成度の高い作品が19世紀中ごろまでにできていた。椿姫の原題は『La traviata 』、直訳すると「道に外れた女」ということになるらしい。これは主人公のヴィオレッタが高級娼婦だったからなのだが、デュマの小説の題名は『La Dame aux camellias 』なので「椿を持つ女性」⇒「椿姫」だ。うーん、椿姫の方がカッコイイよね、日本語の題名を椿姫にしたのはよくわかる。それに、椿姫の呼び名が付いたのは、胸に白い椿と赤い椿を周期的に付けていたからだそうで、それを聞いたらやっぱり『椿姫』だと思う。何故、白と赤を周期的なのか、パリはこの当時から気が利いている。

 アンジェラ・ゲオルギューはルーマニア出身のソプラノ歌手で1994年にショルティ指揮の椿姫を歌って大スターになった。それが、今回のCDになっている。そう当時は、まだ新人の部類でよくもいきなりCDになったもんだと驚かされる。ショルティが高齢で椿姫を録音していなかったからというのもあるだろうけど大したもんだ。歌声だけを聴いていたら、とても新人の類とは思えない。堂々とした歌いっぷりで、思わず引き込まれるほどの迫力と吸引力がある。そこにショルティの安定感がミックスされるのだから聴いていて楽しい。惜しむらくは左右の広がりが少し狭いのと、奥行き感乏しくホールの響きの薄さである。録音が今一なのか、拙宅のCDが今一なのか僅かに残念だ。もっとも、この年代はレコードがないのがいけないのだ。DSD128か256で安価にだしてくれればなと思う。