シューベルト:美しき水車小屋の娘 ディースカウ ムーア

 ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウは20世紀で最も有名なバリトン歌手と言われており、ピアノ伴奏を弾くジェラルド・ムーアとのレコーディングは数多いのですが、これは彼らの集大成として1971年に録音された最後の演奏です。

 ディースカウは当時46歳ですから、脂ののりきったころで歌声は張りがあり艶やかでどこまでも軽やかに伸びてゆく声を聴くだけで癒されるし、1967年にコンサートでの演奏から引退したジェラルド・ムーアのピアノは優しく優雅でどこにもほころびは無く心に平安をもたらしてくれる。

 夜更けにエレキットの300Bシングル真空管アンプとRogers LS3/5aで聴く歌声は高音域が繊細で煌くかのように響き、テノールのかのようにも聴こえ、水車小屋の娘に恋し、失恋から立ち直ろうとする青年を彷彿とさせてくれる。静かな夜に若きし日の頃を思い出す。