真空管アンプのTU-8600rを作成した時にLS3/5aで聴いた音があまりにも端正で綺麗だったのに驚いた。今まで繋いでいたA-2000とは余りにも違い、リフレッシュな力強さがあったからで、そんなにA-2000ってぼやけていたのだろうかと訝しく思い考えてみると購入してから既に30年以上の月日が流れていることに気がついた。疑似A級動作のアンプなので発熱が高く電解コンデンサの劣化が激しいのだろうと思い、アマゾンでLCRメーターを買ってみることにした。要するにこれでコンデンサの容量を測ろうというわけだ。
LCRメーターが届いたので、とりあえず計測できる状態までバラしてみる。気になるのはパワーアンプ基板の33,000uFの黒い電解コンデンサだけど、案の定すっからかんで30uFほどしかない。これでよく音が出ていたもので、意外と堅牢なのに驚かされる。
あと、パワートランジスタは見る限り大丈夫そうだし、焼けている抵抗もないようで助かる。ついでにフォノイコライザー基板も診てみるとブラックゲートの1000uFも700uFほどになっている。もう売っていないコンデンサなので迷ったが、劣化すれば音質も変わってしまうのだからと思いこれも交換することにした。
部品のマークが見えづらく、回路図を探したのだけれどA2000aの方しか見当たらなかった。撮った写真と見比べてみるとところどころ違うようで不安ながらも部品リストを作成して発注した。 A-2000a回路図
部品が揃いA-2000を分解する。右側面にあるフォノイコライザー基板から部品の取替を始めるので黒い鉄の側板を外すと基板の裏面が見える。四隅にある樹脂の止めの頭を引いて抜くのだけど、古いから樹脂の裾が拡がったままになり外し難く、ラジオペンチでつまみながらゆっくりと引き抜いた。フラットケーブルを外すと簡単なのだけど、なぜかフォノイコライザー基板側が半田付けされていてコネクターがない。
仕方なく前面パネルにケーブルを接続したままコンデンサを交換することにした。1000uF周りのコンデンサは接着剤で止めてあるので半田を吸い取っても外れない。シンナーを綿棒につけて塗布し、脚に半田鏝を当てて温めながらもぎ取った。先輩方の記事を見ると基板プリントの極性にミスプリがあるとのことなので注意すると、RCAコネクタ側にある上面からみて左側の1000uFが+-逆に印刷してある。
先輩方の皆様に感謝です。高分子コンデンサの購入が容易だったものは変更したのだけど、1ヵ所外してみたら両極性だったので仕方なく元の物を再度取り付けた。まぁ、MCヘッドアンプ部なのであまり利用しないから良しとする。前回調査した時に不明だったコンデンサの印刷が22uF 25Vだった。両極性のようだけど、表示の容量よりサイズが大きいし、LCRメーターで測定すると脚を1、3番に入れているのに2、3番で容量が38pFと表示される。LCRメーターが壊れたかと思ったが、他のコンデンサは問題がないので、とりあえずこれもこのままとする。
今回使用した半田は、Dayton Audioの無鉛タイプ銀入り4%で銀入りなのに安価なのが嬉しい。まずは、フォノイコライザーだけで試聴を行う。ペギー・リーの声が曇って上ずって始まったが、片面の終わりごろには甘ったるい艶のある唄声が聴けて嬉しかった。このままエージングすれば良さそうだ。
次は、パワーアンプ基板に取り掛かる。33,000uFの半田量が多く、基板配線プリントにもしっかりブリッジしてあり、相当な電流が流れるように思える。接着剤も全週に張り巡らされていて取り外すのにワニ口のプライヤーで掴んだほどだ。おかげでプリント基板が割れやしないかと冷や冷やしながら、シンナーの塗布と半田鏝を当てて結構な時間をかけて何とかとれてホッとした。
問題は背の低いコンデンサがなかったので、脚を折り曲げて狭い空間にいれなければならない。とりあえず脚を穴に入れて曲げてみると高さがギリギリなので、頭部に絶縁テープを念のために貼り、あわせて付け忘れた脚のチューブを切り開いて嵌め込んだ。取り外した電解コンデンサの容量を図ってみると100uFのものは変化なく、470uFの方は330uF、390uFと減少していた。それから、パワートランジスタの方は熱伝導シリコンを塗布し、伝導シートの無いものには追加して差し込んだ。
これも先輩方のありがたい記事のおかげです。組立作業でトラブル発生、スピーカーターミナル基板に接続するファーストン端子が折れてしまい、思わず『ああっー』っと唸り声を上げてしまった。しかし運よく基板の裏側が露出しており、端子の裏側の半田付け部分に接合でき救われた。部品の再チェックを行い、電源を入れて状態を確認する。異常は見られないので、試聴のためLS3/5aのスピーカーケーブルをつなぎ直す。
レコードに針を落とし、ボリュームを上げみればペギー・リーの晴れやかな声が響き、ベースが引き締まり、シンバルが切れよくリズムを打つ。おおー、以前の音とは丸で違う。そうそう、こんな音だったと感慨ひとしおである。悦に入ってスケルトンのまま数枚のレコードを聴いてしまった。高音の繊細な響きは300BのTU-8600rに譲るけど音のふくよかさはA-2000の方があり、余裕を感じられる。やっぱり交換してみるものだ。
さて、LS3/5aは元のTU-8600rに戻してどうしたものかと思案する。譲り受けるNS-10Mは当分来そうにないし、小型のスピーカーを買うにも迷ってばかりで思案する。そうだ、もう一度バイアンプに挑戦してみよう。
高音側のケーブルをE-470から外しA-2000に繋ぐ、E-470 のプリアウトからA-2000のパワーインへRCAケーブルを嵌め込んだ。コルトレーンのテナーが心地よく鳴る。以前はトーンの違いが如実でチャランポランだったけど、A-2000の音が引き締まったので違和感はない。スピーカーがTANNOY Precision6.2LEだから、バイアンプにするようなパワーは不要なのだけど、高音がYAHAMAの音粒になり煌いて面白い。
しばらく聴いていてハタと思ったのは、どちらもプリメインアンプであり、フォノイコライザーはA-2000である。なので、どちらもプリメインとして高音、低音を各々のボリュームで出してみた。A-2000のプリ部はより高域がきつくなるのでトーンが変わり、低域も出ているように聴こえてくる。
同じぐらいボリュームを回すと高域の強さが耳につくが、ボリュームでほどよい位置に調整できる。これが案外と重宝する。チャンネルデバイダーを使ってバイアンプにしたくなるのが良く分かる。スピーカーがバイワイヤリング対応とはいえネットワークが入っているし、音量で会って周波数特性をいじっているわけではないので全く違うのだけど、高音と低音の音圧を各々調整すれば周波数の重なり具合が上下することになる。
丁度MCカートリッジを3本のアームつけてあり、どれも40Ωの設定だったため、該当するトランスがなくMCヘッドアンプも使うことにした。しかも試しに繋いだのがOrtofon SPU Synegyである。SPUなのに出力が高いのでMCヘッドアンプでも全く問題ない。コンデンサを交換したせいか朗々となっている。もともとそういうカートリッジだけど、A-2000のヘッドアンプもそこそこ繊細なので中々よろしく思える。あとはこれでヴァイオリンの音を気持ちよく奏でるスピーカーがあればなと思ったりする。
あと両極性の電解コンデンサーが交換できず気になっていたので、他の部品を購入する機会に買った。22μF25V→50Vと47μF16V→25Vに交換。LCRメータが計測間違いを起こしていたコンデンサーも交換できたので、ひとまず安心できて悦ばしいです。
それから、左右で音の大きさが違うので気になっており、パワーインだけで聴いてみても同様な傾向なのでパワー部の問題だと思われる。Webで調べてみるとDCバランスやA級とAB級のバイアス調整が必要みたいで基板に半固定のボリュームがあったのを思い出す。
A2000aの回路図をみると確かに三ヵ所にボリュームの記号がある。パワー基板の右側上部にピンが5本立っていて、左からBNE、B、E、A、APEになっており、Webでは調整値にバラツキがあったのでとりあえず、A-B間:0mV、B-BNE間:15mV、A-APE間:200mVを目指して調整してみた。
まずは現状の測定をしてみたのだけど、テスターが抵抗値を示すだけで電圧を表示しない。これはフルオートのタイプで電圧と抵抗や導通などは勝手に切り替わるタイプなので取説をよんでみると、0.8V以上の電圧が閾値になっていた。
どこを読んでも手動の設定はないので、仕方なく安価なテスターを買う羽目になった。DCで200mVあたりを計測できればよい安価なものを買ったけど、やっぱりオートではなくダイヤル切替タイプを買っておけばよかったのかなと思うものの苦手な部分なので良しとする。まずはA-B間を0mVに向けてボリュームを回すのだけど、ちょっと触るだけで数十mVも変わってしまい10mV前後になってしまった。A級とAB級の半固定ボリュームは基板の奥にありフィルムコンデンサーが邪魔で危ないから、割り箸を削ったマイナスドライバーを作り、かつ電源を入り切りして調整した。
右側のパワー部はフォノイコライザー基板が邪魔なので、ビスを緩めて上へ引き出して調整した。こちらも微妙な加減が必要で結局、A-APE間は200mV強、B-BNE間は20mV強になってしまった。とりあえず試聴、なんとか左右のバランスがとれたのだけど、ソースによっては右側が僅かに大きくなるが、依然と比べるとかなり良くなった。女性ヴォーカルに深みが出て情感がより伝わるように聴こえてくるのも嬉しい。
追記:Sonus Faber Minima FM2を買ってA2000で聴いてます。とても麗しい音で、女性ヴォーカルとヴァイオリンの響きが心地良いです。あと、スピーカーを変えた時にも左右の音のバランスが崩れ、不思議に思いいろいろと触ってみると、なんとパワーとプリを切り離すスイッチの接触でも変化します。前面パネルのスイッチはロジックコントロールではなく、直接音が通るようですのでここも要注意です。
SonusFaber Minima FM2