五嶋みどりのヴァイオリンを聴く

 ベートーベン ヴァイオリン協奏曲

 ベートーベン生誕250年を記念して五嶋みどりの弾くヴァイオリン協奏曲が発売されたのでPCM96kHz-24bitのハイレゾを買ってみた。ロマンスの2曲も入っているのでベートーベンのヴァイオリン曲を網羅していることになる。11歳でレナード・バーンスタイン率いるニューヨークフィルと共演し、華々しいデビュー以来すでに38年の歳月が流れているのだけど、演奏する姿は今も新鮮に想い起せる。レーベルがワーナーミュージックというのが気になるが取り越し苦労であった。最近の録音は優れていると思うので、DSD版を出して欲しいものだ。

 管弦楽の演奏はルツェルン祝祭弦楽合奏団なのでオーケストラのような重厚ではないけれど、よくまとまった聴きやすい清楚明瞭な調べだと思うし、五嶋みどりのヴァイオリンが綺麗にマッチしてフューチャーされている。ベートーベンの持つ音は知的に構成されているせいか、ちょっと重い感じがしてどこか左脳が顔をだすのが気になるのだけど、このヴァイオリンはとても綺麗です。齢も50を迎えるころになり、卓越した技術量が悠然と安心な心地を醸し出していて気持ちいい。ヴァイオリンといういと量感と力強さが出る部分に表現は悪いがガサツというはガシッガシッとした響きがあり、大きなホールでは良い音なのだろうけど素人の自分が持つイメージと僅かに違っていた。でも、このヴァイオリンはすがすがしいほど綺麗なのに響きに量感がにじむ。


パガニーニ カプリース24曲

 これは1988年に録音されたものなので、五嶋みどりが17歳の時の演奏。パガニーニと言えば、悪魔の演奏家といわれるほどのテクニックの持ち主で、それを披露するために作曲も行っていたと聞いています。なので、この24曲も難曲と言われているのですが、17歳でCDが出ているところが凄いです。

 24曲で77分ですから、単純計算すると1曲3.2分なので現代人にとっては聴きやすいのですが、こういうテンションの張った曲を聴き続けるのは疲れる。なのでレコードだと半分で変えちゃうのでいいんですけどね。無伴奏ですから彼女のヴァイオリンの音が縦横無尽に部屋を回って時をさらっていきます。どの曲もそれぞれなので、好きな曲だけ聴けばいいように思いますし、ヴァイオリンの音の出し方のクラス・ライブラリーのように思え、このなかのエッセンスとテクニックで大曲を紡ぐように感じます。