Luxman L-550AXⅡを買ってみた:レビュー

  新しいアンプを買うにあたり、Sonus Faber MinimaFm2を艶っぽく鳴らすことを前提にあれこれと迷った結果、L-550AXⅱにしようと思った。まず機材をおけるスペースからプリメインで高さが190mm以下でないといけないし、古い機材だと修理も考えなければいけない。でも、真空管の方がMinimaFM2には合っているような気もして随分と迷った結果、LuxmanのA級アンプになった。

 アナログメーターはあるし、ボリュームはエンコーダーによるステップ切り替えでガリは出ないし、フォノイコライザーはあるし、重量も持てる範囲だし、日本製で保守もきちんとしていて安心感がある。


操作感と機能

・A級20W+20W(8Ω)バイポーラ・パラレルプッシュ

・重量 24.3kg   440(幅)*178(高さ)*454(奥行)mm

・ダンピングファクター 200

・Phone MM 91db以上 MC75db以上



 セレクターとボリュームが同じ大きさのダイヤル形状で中間にメーターが入るデザインはアキュフェーズと似ているが、オーソドックスながら飽きのこないデザインだと思うし、音の大きさに応じてメーターが振れるのは観ていて楽しい。

 セレクターを回すとカチッとした感触とともに音もカチッと鳴り、あわせてリレーの音が大きいのが少し気になりますが重みもあって良い操作感です。セレクター位置やMONOやSEPARATEなどの選択を示すLEDは小さく電球のような暖色系の色でほんのりと光るところは落ち着きがあって良い雰囲気です。でもSTANBYはスイッチOFFの時に点いたままになり、リモコンが使えるという表示ですけど、リモコンを使わないので気になります。

 ボリュームは軽く回ってしまい、もう少し重さがあったらなと思うし、ダイヤルが大きいせいか軸を保持する剛性感も僅かですが物足りなさを覚えるのですが、リモコン操作をすることが前提なのでしょう。でももうちょっとのことなので質感を上げると嬉しいです。

 ボリュームを回すと9時の位置までは音量が絞られていて、10時ぐらいで通常聴いている音量になり、11時ほどでやや大きめになります。最初は何か間違えたのかと思いましたが、夜間などで小音量にしたい時には好都合です。最近の録音はスマホ+イヤフォンでも聞けるようにコンプレックスが効きすぎていて少しボリュームを回すだけで音量が大きくなってしまい、静かな夜に適切な音量にしづらいので助かります。

 ボリュームの機構は88ステップのアッテネータータイプですが、ボリュームの接点で切り分けるのではなく、回転角度を拾って基板に付けた88種類の抵抗回路を切り替える方式で電子制御アッテネーター新LECUA1000と命名されてます。電子ボリュームICを使ったデジタルボリュームではないのですが、原理的には同じで電子ボリュームICは抵抗を内蔵しているタイプが多いです。なので使われる抵抗の品質が音に影響をし、使われているメーカーなどが知りたくなります。いずれにしても回転板による接触ではないのでガリは出ない構造です。

 サブソニックフィルターやモノラル、ラウドネスはリモコンからしか操作できず、前面パネルにスイッチはありません。使用頻度やリモコン前提を考えるとコストダウンなのでしょう。実際ほぼ使わないですし、口径の大きなウーファーを使用する機会もありません。JBLの30cm以上のウーファーなどを使ってみたいですよね。

 スピーカー端子の接続はやり易くてありがたいです。バナナプラグを使いませんし、Y端子も使わず撚り線を直接入れるのですが、すんなりと接続できます。トーンコントロールはBass ±8db at 100Hz、Treble ±8db at 10kHzと順当な範囲ですが、ストレートスイッチを使うとトーンコントロールだけでなくラウドネスやモノラル、バランスもパスされるせいかソリッドな音になります。

 Phono入力があってMMとMCの切り替えが付いています。最近はターンテーブルにフォノイコライザーが付いているのもあるのですが、やっぱりアンプに付いている方が嬉しいです。MCカートリッジを使うと出力Vが小さいのでMCポジションで増幅する仕様です。増幅するのにトランスなどを使うと音の変化が愉しめて面白いです。

 RecOutが付いていますが、残念なことに電源をONにしないと使えません。通常はアナログ録音の機材、カセットデッキやオープンリールなどのテープになると思いますが、持っている方は少ないように思えます。ちなみにTEACのカセットデッキを持っていますが、再生onlyなのでMonitorにも繋がずLine入力しています。昔のように電源OFFのまま使えると他のアンプへ接続してセレクターとして使えて重宝するのですが残念です。

 電源ONの状態で使うのなら、PreOutを使うことにしました。なので本器のプリアンプの音が色濃く出ます。パワー部が真空管だと真空管の種類によっても風合いが変わりますが、半導体だとプリ部の影響が大きいと思います。


音質

 電源を入れると青色のLEDが点いてインジケーターが光り、前面パネルの艶消しの銀色とのコントラストが良くて、良い音が出そうないい雰囲気になります。

 スピーカーはSonusFaber MinimaFM2、音源はDSD64、DACはTopping D90Dで聴きます。最初はいつも通り、なんだかぼわっとした音ですが、1時間もしたら綺麗な音が出ました。そこで戸惑ってしまいました。それは、MinimaFM2が現代的なハイレゾ風なシャープな音で鳴っているのが思惑と違ったのです。



 A級だしLuxmanだしと思ったのですが、やはり時代ですね。鮮明でクリアな輪郭のある音がサラッと出てきます。D90の緻密な音がそのまんま出てきて、これならオーケストラも聴けます。なのですが、女性ヴォーカルの艶めかしさが清楚な清々しい声になり、ヴォーカルも僅かに半歩下がり、バンドの少し前に立っている感じです。

 A級とAB級で音が変わるということは無いと思っていますが、A級は温かみのある音に振るのだと思っていたし、LuxToneならそうだろうと思い込んでました。ここで逸品館のYoutubeを思い出し、おっしゃる通りだわと頭をぼりぼりと掻いてしまいました。AB級でも大きな音量でない限り、A級動作でバイアスを超えてB級に変わるとしても歪が聞こえるようなことは経験がありません。

 これはDACの影響も強いのだろうとレコードを聴くことにして、カートリッジはGoldring 1012GXのMMタイプを選びました。MCだと緻密で鏡面的になりやすいのですが、MMでは柔らかみがでるという思いからです。そうは言っても1012GXだとMCっぽいのですが...

 フォノイコライザーはとても素直な音で、カートリッジの特徴が分かりやすく感じます。1012GXのバランスの良さと一音一音の分離の良さが出て、音楽の豊饒感のようなまとまりの良さもあります。でもやっぱり、ヘレン・メリルの声に粘りが僅かに減少したように聴こえるので、基本的な音質は変わらないのでしょう。スピーカーのセットがこれだけなら、十二分な音でいろいろなジャンルを聴くことで満足できると思います。

 でもちょっと、MinimaFM2は300Bで鳴らすことにしてRogers LS3/5aを繋ぐことにします。Monitor系の方がより相性が合っていると思った通り、LS3/5aが、分解度が高くなりながらも包み込むような柔らかさを失わずに聴けます。しかも力強い低音になり、骨格がしっかりしてウッドベースの深く弾む音はビバップなジャズを愉しく聴かしてくれます。高音域もクリアでありながらピーキーな面はなくハイレゾ感のある現代風なLS3/5aにちょっぴり驚きです。

 鮮度が上がって且つ長時間聴ける音になって嵌っています。これだと、トールボーイで箱の容量も大きいタイプを鳴らしたくなります。そのうちにPrecision6.2leも繋いでみたいです。できたらSuper HL5Plusが欲しくなりますが、スペースと金銭的に難しいです。でも、ハーベスかディナウディオの小型スピーカーが欲しくなるような向上欲をそそるいいアンプだと思います。