JALの月刊誌にエッセイを書かれていて、とても洒脱で愉快な文章に狭い座席の中で笑いをこらえながら読んでいた。その時に日本ペンクラブの理事もしているのだと知った。でも本を読んだことはなく家に置かれた一刀斎を何気なく読んでみたら面白い。さすがに 新選組三番隊隊長 斎藤一の歴史小説なだけに愉快ということはないのだけど、洒脱で臨場感あふれる映画を観るかのような文章はJAL月刊誌に書かれていた香りがより強く発せられている。
一刀斎という題名からしゃれている、逆読みすれば誰なのか直ぐに分かるし、剣客として名を馳せた人物でもあることも良くわかる。史実に沿いながらも物語りを斎藤一本人が夜な夜な酒を酌み交わしながら人生を掘り起こす、大正になった年の話だから逝去する数年前であり、夢の記憶にもなろう。しかるに記憶に色がつくのもやむをえず、それを物語とするところがまた洒落であろう。
あまたの戦に立ち向かいながら人生を全うした漢の凄味と戦の中の血気はやる展開の速さと緊張感の泡立たせる文はさすがである。吉川英治を彷彿とさせ、市村鉄之助との悲哀を伏線として展開させる妙はデュマを思い起こす。そして言葉の豊富さと空気感をあらわす表現力は専務理事であることが伊達ではないと思わしてくれる。
でもである、そこまで鬼として書かなくてもよいのではないかと思うのだけどクライマックスを読むとそうでないと生かされることが浮き立たないのかもしれないと思わされた。それでもである、やはり鬼として書かれている部分は夢想であろう。でなければ警察官になり、学生に剣術を教え享年72歳ではないだろう。