オーディオテクニカ AT33Sa カートリッジを買ってみた

  代々続く33シリーズの中では異彩を放つ逸品だと思う。ボディのカラーが金ぴかではなく銀色なので、いぶし銀ではないかと思っている。そして何よりオーディオテクニカでは初めてシバタ針を使ったカートリッジなのです。

 

目次
    1)仕様について
    2)音質について
    3)トレースについて
    4)まとめ

【仕様】
 シバタ針は日本人は発明した4ch用の針なのだけど、音を取り出す性能は非常に優秀なラインコンタクト針として評価されている。オーディオテクニカとして初というのは同じ日本なのでちょっと驚き。
 針圧は2.0gが標準、コイルインピーダンスは10Ωですが、出力電圧は0.4mVと少し高めなので、MCトランスの10Ωに合わせるとちょっと音圧が高めの入力になる。オルトフォンT30に表示してある入力Ω表示は倍率の目安なので、聴感的には20倍程度が良いように聴こえる。
 カンチレバーはボロン無垢で軽くて堅そう、音にもその傾向が顕われているようでソリッドで細かい雰囲気になる。重量は6.3gとDL-103と比較すると軽い。

【音質】
 ソリッドで分析的な傾向を感じるものの、33シリーズ同様に高音域の音が伸びるのだけど、落ち着きのある伸び方をしてどこまでも響く、そして中音域はメリハリがあり、低音域も豊かで芯のあるしまった鳴り方をしてとても良い。



 評論では高音域のことを強調することが多いけど、中低音はしっかりしており、音のソリッド感が実に素晴らしい。オーケストラを聴くと楽器の一音一音がよく分るし、音楽の調和も優れている。ピアノの押し出し感も良く、鍵盤のタッチ感も伝わってくる。ロックを聴くとギターのディストーションやファズの音も実に楽しい。


【トレース】
 レコードに針を載せてもカンチレバーがほとんど沈み込まない。これではギャップで跳ねるのではないかと思うのだが、多少のうねりはなんなくトレースしてゆく。脚の長いスケーターが凛として滑る風情を感じ、風を切って駆け抜けてゆくように映える。

【まとめ】
 ヴァイオリンの余韻を味わう時はMCトランスにTriad HS-1を使い、エレキギターのチョーキングでのりたい時にはUTC A-11を使うと絶妙なバランスで聴かせてくれる。重量が軽いので重めのヘッドシェルを使える。また、リード線に金と銀の合金であるオーグラインをおごってあり、若干華やかな色づけがまたよく似合う。
 いろいろ組合わせて遊べるところがデジタルとは違ってありがたい。つなぐ機材の素性が素直に顕われて良いカートリッジだと思います。