アルマ を読んでみた ル・クレジオ 著  中地 義和 訳

  モーリシャスというアフリカとインドの間に浮かぶ島にある地名がアルマ。そこには遠い昔、ドードーという名の飛べないダチョウに似た鳥がいたそうだ。そして主人公の一家は島で裕福な一族であったのだけど、今は島にいない。

 作家はモーリシャスへ移民した家系の末裔であるらしく、モーリシャスにちなんだ小説は4作目にあたるらしい。とてもモーリシャスに惹かれているような文体は昔日の日を想い起しているかのようです。

 裕福な一族の中でもある出来事から、一族に見放された一家の息子ドードーというあだ名の放浪者が主人公の一人だけど、アルマという土地に住んだ人たちが皆主人公であり、その多くはドードーより早く亡くなる。


 どこまでもなにかを置き忘れてきたのか、それとも遠い遠い日の話なのか哀愁と昔日の風がいつもふいている。なんだかモルダウ川を想いだすのだけど、かかっていたのはCome away with meだった。

 若い娼婦が捕まって収容所へ会いに行くのだけど、この章だけ不思議。時系列が飛んでいるのであてにはならないのだけど、ドードーの記述ではあるけれどもう一人のフェルセン家の息子の性格になっている。なぜこういうふうに描いたのだろう。

 行間から滲み出る風合いはどこまでもおだやかでしずかである。