真空管12ax7を1本買うことにしたのは、ペルケ式のフォノイコライザーを作る時に買ったエレハモが、なんと太っちょだったためにシールドカバー付きのソケットに嵌らず、東芝の真空管を入れたのです。そう東芝の真空管は中古しかないわけで、プリアンプに付いている物を外して予備にしたかったのです。
Tung-solにした理由は買ったことのないブランドだったことと、ギターアンプでは人気があるようだけど、プリアンプやフォノイコに使ったらどんな音がするのかしらんと興味本位なところもあったのです。
送付された段ボール箱を空けると、青と白の綺麗な真空管の化粧箱が出てきて、デザインの良さに感心します。ともあれ、不具合がないかチェックするのに300Bのアンプのプリ管を入れ替えてみた。
エレハモを外してTung-solを嵌め込み電源を入れると下部の方がほんのりと赤くなった。さて、クラシックのレコードをかけてみたら、元気で張り出しの良い音になって、ちょっと300Bの繊細さみたいなものが薄れた。エレハモの時は中音域が張り出していたけど、それよりはフラットになり、メリハリのでる音に変わった。シャウトするようなヴォーカルの歌だったらいいのだけど、300Bをサポートしているような雰囲気とは違う気がする。ということで、試運転が終ったらマランツ#7回路のフォノイコ、C-22回路のプリアンプと300Bパワーアンプの3台についている12ax7を付け替えることにした。
機材を引き出して蓋をあけてまずは掃除。外した真空管を並べて撮影したのが下の写真、左からTung-sol、エレハモ2本、ムラード、JJ、東芝Hi-Fiの順で、胴回りもノギスで測ってみた。
(mm)
メーカー |
Tung-sol |
エレハモ |
エレハモ |
ムラード |
JJ |
東芝 |
径 |
φ22.10 |
φ22.25 |
φ22.30 |
φ20.30 |
φ21.40 |
φ20.25 |
ムラードと東芝は旧い管なので21mmを超さずスマート、現行品の中でシールドケースの直径22mm以内なのはJJのみでした。カタログに直径も入れて欲しいですね。
思案に思案を重ねて、300Bアンプにムラードを付けて音の重心を下げながらも300Bの繊細な高音域を活かそう。プリアンプ(ChriskitMk6)のフォノイコ部第1、2段増幅部をともにエレハモとして中音域の張り出しでC-22回路のマッキントッシュっぽい感じをだそう。なのでカソード部はJJを嵌めよう。残ったTung-solをマランツ#7回路で作ったフォノイコに入れる。とは言っても増幅部は松下2本がはいっているのでカソード部に嵌めるのだけど、なんだかシャキシャキしすぎないかちょっと不安だけども試してみようと思う。これで東芝は予定通り予備にできる。単純に真空管だけの音を聴いていると東芝のHi-Fiがもっとも素直で輪郭もあり、落ち着きもあっていいように思う。
さて試聴です。まずは300Bアンプですが、ムラードの落ち着きと粘りがでて300Bを美味くサポートしてるようです。なんかやっとムラードらしい使い方になったようで良かったです。でも気になる点がひとつ、電源をいれると突入電圧があって真空管の下部が明るく光る点です。他の12ax7ではこんなに明るく照らさなかったので、寿命が短くならなければと思います。
次はプリアンプです。なんだかモヤっとした音で中音域だけが目立ち、低域よりの中音部に山のあるかまぼこ型の音に聴こえます。機材も少し慣れが必要なので数時間きいてみると、なんとノイズが出てビックリして電源を切ろうとしたら収束してしまった。どこかハンダ割れしたように思うのだけど、久しぶりにoutのカップリングコンデンサに切替スイッチが付いていて、0.22µF ⇒ 0.047µFにしたこと原因なのかなと安易な考えも浮かんでしまう。でもこれを機に音が変わって、中低音域に厚みがありながらも高音域も伸びるようになり、C40で聴いた音に似てきた気がして、怪我の巧妙なのか良い方向になった。
最後にマランツ#7回路のフォノイコだけども、思ったよりはシャキシャキとはならず、明瞭で鮮やかな輪郭でハイレゾっぽい音になった。松下の凛とした音をスパッと押し出してくるような力強さがある。マランツ#7の音を聴いたことはないし、レビューを読んでもちょっと違う音だなと思う。回路は同じでも基板だし、ブラックビューティーがあってもバンブルビーではないのだから、違って当り前だと思う。でも、分解能の高さが良いのは素地だと思うし、それがハイレゾっぽい音の基礎になっていることは間違いないように思える。
今回は、どの機材も持っている特徴が活かされて美味くなったように思える。競技のない趣味は自己満足で終われるところが良い点だと思うのだけど、結果を求めるというよりは試行錯誤を愉しむことができないと困りそうだなぁと思う。よくクラシック向きだとかジャズ向きだとかジャンルで言われることがあるけど、ダイナミックレンジの一番広いのがオーケストラだし、楽器も多いので分解能が高く無いとごちゃっとしてしまう。この再生が上手い機材でジャズを聴くとやっぱり凄いなぁと思うのです。
そう思うと、クラシック向きと言うのは室内演奏の四重奏あたりで、ジャズ向きと言うのはビバップのカルテット辺りなのかしらんと思う次第です。