高剛性ヘッドシェルと純銅リード線に変えてみた

  Ortofon MC30の音がどことなく音の出方がクスんでしまうような、そしてトレースが弱くなって高音域でかすれが僅かに出ている。古くなってダンパーにへたりが来ているのかもしれないが、取り付けてあるヘッドシェルもオーディオテクニカのMS-9と古いものだ。

 MS-9はマグネシウム合金なのだけど、白い泡を吹いていたのはマグネシウムの反応だと思われるし、ダンピングのために貼られている上面のゴムがボロくなっている。
 リード線はMS-9に付いていた銀リッツ線で、ヘッドシェル側は半田付けされたものが販売されていた。現在は半田付けされているものを見ることはない。

 ちょうどそこへ、VictorのPH-6というアルムダイカストで制振性の高いヘッドシェルを手に入れることができた。これは、VictorのトーンアームUA-7082に付いてきたのと同じタイプで、指かけが樹脂になっていて目ネジが切ってあるものだ。すでにAT33Saというオーディオテクニカのカートリッジに取り付けてあり、低音の出が少々弱いというコメントを見かけるが、そんなことはなく実に輪郭のあるキビッとした低音を聴かせてくれる。

 これに付けてあるリード線はkeis911さんの作品で、実に工夫された丁寧な線である。今回はアクロテック 6N-A2030という純銅タイプの線で、6Nだから99.9999%と6つの9がつくということです。

 カートリッジのヘッドシェルを変えるのですが、最近は眼が遠くなってしまい一苦労です。端子が狭かったりして力で押し込むのはカートリッジの針を当てたりして壊すので要注意なのですが、広げすぎるとカパカパで意味をなさず、頃合いが難儀です。


 ヘッドシェルはちょっと重くて剛性感があります。取付時の注意は指掛けの向きで反対に付けてしまうと、レコードに載せられません。家にはセミオートのQL-Y7があって、気づかずにレコードをかけたら終盤にスタビライザーに当たって肝を冷やしたことがあります。

 交換が終わって最初の視聴はビル・エヴァンスのWaltz for Debbyです。右からピアノ、左からベースとドラムが聴こえれば正しい接続だからです。リード線の案内にエージングについての記載があるのですが、全くその通りになったのに少々驚きました。個人の感じ方にバラツキはあるし、そもそも聴いている環境や機材が違うので、ニュアンス的にも一致するのは珍しいと思います。

 数枚のレコードを聴いて音の出方も良くなりました。何よりもトレースが安定しています。ヴァイオリンの高音域でレコードによってはかすれるような、針に重みがかかっていないような僅かな不足があったのですが、見事に綺麗な音をトレースしてくれます。これは、おそらくヘッドシェルの恩恵だと思います。ヘッドシェルにこだわるタイプではないのですが、今回は感心しました。

 音質では腰が少々高くなったようです。MC30の音は低音域が少しふっくらとした感じで、中音域と高音域が寄り添って腰が低い中に音の切れが交るように聴こえていたのですが、高音域の音が明らかに出ていて、シャープさが増した音になりました。これは純銅の線の特徴なので、その通りなのですが、これほど特性に引っ張られるのは珍しいです。リード線は短くて影響度は少ないと思っていましたが、ヘッドシェルとカートリッジの組合せが逢ったのでしょう。

 MC30がいよいよダメかしらんと思っていたのが、大きな間違いだったことが何より嬉しいです。カートリッジが上手く鳴ってくれると、実にいいこころもちでオーディオが趣味になるのです。