ムッシュー・テストを読んでみた ポール・ヴァレリー 著 清水徹 訳

  ムッシュー・テストを知ったのは小林秀雄の評伝に出てきたからで、1900年初頭のフランスを代表する知的な詩人であるポール・ヴァレリーの作品である。


 小林自身も詩から始まって評論へと移る経緯がポール・ヴァレリーと重なる点が面白い。誌を理解できるものが哲学的になることに何かしら違和感を抱くのだけど、ムッシュー・テストは哲学的でもあり詩的でもある。

 物事の本質を嗅ぐものは世間から見ると異質であり、慣習と離れたものになりやすく、誤解されやすいものだ。しかし、詩と言うものは本質的でありながら身近であることが不思議である。歌詞のなかにそれを強く思い、詩はうたとも詠む。

 ヴァレリーと小林が生きた1900年前半はナショナリズムとイデオロギーの時代で、不条理や実存主義などの哲学が論じられた時代でもある。そのような影響を受けて来たのだけど、一つの時代が終焉したと自身の中で思い至った。