略奪の帝国を読んでみた  ウィリアム・ダルリンブル 著 小坂恵理 訳

  イギリス東インド会社の興亡と副題にあるとおり、世界で初の会社の歴史書です。1600年にインド貿易を始めるにあたり、船舶への資本集めとして航海ごとに株式を集め利益を分配したことが株式会社の始まりですが、これだと保険に近い形式だったように思われます。1600年と言えば日本国内では関ヶ原の戦いなのですが、すでに資本主義の産声が生まれていたわけです。



 インドがイギリスの植民地になる歴史なのですが、それを成し遂げたのは国ではなく一介の株式会社だったというのが驚きです。なにせ会社といっても軍隊を持った会社なので、貿易の利益を確保するために現地の政治を傀儡化してゆく様はいつの時代にも繰り広げられた世界です。

 会社組織はピラミッド化した組織であるのは会社の起源になるようで、軍隊を組織するには必然なん成り行きに思います。そして、規模が大きくなり支出がかさなり潰れかけた時に国の補助や軍隊支援を受けるわけで、大きくて潰せない論理となり、400年以上たっても同じ論理から脱せない状況です。

 1874年に会社は国によって解散させられるわけで、インドをイギリスが直接的に支配し、1947年にインドが独立するまでの約70年間植民地だった。会社が1803年にインドをほぼ掌握しているので、会社の統治が70年で英国の統治をほぼ半々なわけですが、英領インドのイメージしかなく、本書でのリサーチも同様な回答でした。

 本書はクライブが1743年にマドラスへ着任してから、戦争による支配権拡大が主に描かれていて正に争いが絶えない時代だったようだ。おなじころアメリカ独立戦争はあるし、欧州はプロイセンの台頭やらナポレオン体制など同様に争そっていて、徳川時代の日本だけが平和だったような気がする。モディ首相がウクライナ援助の件で欧州に『欧州の争い』だと言ったのは、なんとなくわからないでもない気になってしまう。

 本書のエピローグが最も気が利いていて、現代の形態も形は変われど本質的なことに変化がないことを洞察している。拡大することが帝国だとすると、経済や政治の在り方などと言うのは道具に過ぎないのかも知れない。