DACチップのES9038PROとAK4499を聴き比べる:レビュー

  ES9038PROはESテクノロジー、AK4499は旭化成で両社のフラッグシップなDACチップです。それを聴き比べてみたくてTopping DX7proというDACヘッドフォンアンプを買いました。


 DACの違いを聴き比べると言っても、機種が変われば構成も変わってしまい変化する要素が多くて困ります。特にアナログ部分の方の影響度が高いように思えるのです。
 そこで既に持っているAK4499を搭載したTopping D90を持っていたので、基本的な構成が似ているDX7proならばDACチップの違いが分かりやすいだろうと考えました。D90とDX7proは同時期の販売で筐体は同じ寸法ですし、アナログ部分はLME47920というオペアンプで増幅され、DACチップも1個使いの仕様ですから、基本的な設計思想は同じなのだろうと思えます。

 AK4499およびES9038PROはともに電流出力型のタイプで、チップ外のオペアンプでI/V変換を行っており、オペアンプはD90ではOPA1612を使っているがDX7PROでは確認できなかった。また、AK4499は4チャンネルでES9038PROは8チャンネルの構成になっているけど、チャンネルをどのように使用しているのかは分からない。でも出力が2チャンネルなのだから、並列処理なんだろうなぁと思うばかりです。
 ダイナミックレンジは1kHzにおいてXLR出力で、D90 : 127db、DX7PRO : 126db、全高調波歪み率(THD+N)は20-20kHzで、D90 : 0.00015%、DX7PRO : 0.00020%なので、D90の方が僅かに数値を上回りますが、聴感上では分かりません。それにしてもダイナミックレンジの大きさには驚かされ、実によく似た機種だと言うことだと思います。



 さて肝心な音質ですが、双方ともにクリアで一音一音がくっきりしていて明快な響きです。オーケストラを聴いても各楽器が綺麗に表現され、DSD256などのハイレゾ音源を聴くと空気感や音の繋がりなどの雰囲気が変わり密度が濃くなります。
 そんな中でAK4499は音の粒が細かくなっても輪郭があって、スパッと切れていくような鮮烈さがあり、楽器の音が交じる中でも細かい粒が重なる感じがします。それに対してES9038PROは音の余韻どうしがエマルジョン化して混合されて、ほんのりと柔らかさが僅かに醸し出る響きを感じます。音の立上りや立下り、エネルギッシュな音の爆発感などは双方ともに素晴らしいと思います。
 聴く音楽で表現するとコロラトゥーラで有名なモーツァルトの魔笛の女王のアリアを聴くならAK4499、ベートーヴェンの第9の合掌を聴くならES9038PROという感じですかね。

 なお、DX7PROはアナログ部分のオペアンプを交換できますが、オリジナルのままで良いのではないかと思えるほど相性はいいように感じます。どちらにも言えることはアンプを通してスピーカーで聴くのならば、内臓ボリュームは使わずにDACモードで聴いた方が鮮明で綺麗です。なお、DX7PROはDACモードを選んでも、出力でヘッドフォンも選択するとPREモードにしかなりません。よく考えると当然なのですが、最初戸惑いました。


 また、DX7PROでヘッドフォンを聴くとなぜかボリュームの音の劣化を感じないのが不思議です。出力電圧が数十mVと小さくなるからなのでしょうか...いづれにしても聴きごたえ十分な音で鳴りますし、バランス出力が結構音圧があっていいです。