LUXMAN P-1u ヘッドフォンアンプを買ってみた:レヴュー

 ヘッドフォンを鳴らすのにパワーは少なくても良いのだけど、なかなか良いアンプが見当たらない。そこで、LUXMAN P-1uを買ってみた。2009年10月の発売なので既に20年を越す歳月を過ぎているものの味わいは年代物のスコッチのようだ。 


 まずは大きさなのだけど、440W*408L*82Hとかなりでかい。高さがひくいだけで幅と奥行きはちょっとしたアンプなみです。重さは8.3kgとアンプよりは軽いものの手に持つとズシリと重厚感を受けます。出力は1W+1W/16Ωありますから、LS3/5aあたりのブックシェルフスピーカーなら鳴りそうな感じです。イヤフォンジャックは2つあって違うヘッドフォンを聴き比べたり、二人で同時に聴くというのも乙なものかもしれません。
 ついている操作ボタンは電源、ボリューム、LINE INの切り替え(バランス、アンバランス)、スルーアウト(アンバランス外部出力)とシンプルです。スルーアウトは時代的に考えるとCDプレーヤーを入力してアンプへ出力するのだと思います。どう見てもポータブルではありませんから、オーディオの中に組み込んで夜更けや大きな音で聴きたい時にヘッドフォンを使おうという方達向けでしょう。マニュアルを読んでみたら、電源オフの時はスルーアウト設定になるそうで致せり尽せりです。



 音源はラズパイ、Volumio、SSD、DACはTopping DX7pro、という環境で聴いてみました。まずは、HE400seという平面振動板を使ったヘッドフォンです。このヘッドフォンは安価ですが癖がなく長時間聴いても疲れない傾向のものですが、味わいが出てくるというか中音から高音にかけて艶が載ってきます。いわゆるラックストーンと言われる音ですが、ほどほどで感じがよいです。
 低音域はベースの弦の弾きに力強さがあって、ボォンと音圧を感じさせてくれて音楽は豊かになります。オーケストラを聴いても楽器の音が分離されながらも溶け合う感じがでます。
 ボリュームを少し大きくするとダイナミックレンジの広さとオーケストラのコーダの瞬発力が再現されてなかなか圧倒感が出ていいです。ヘッドフォンの特徴はフラットでよく言えば上品な悪く言えば凡庸的な雰囲気なのですが、音量を少し上げたらアグレッシブな面が出てきて音が躍動します。これはP-1uとの組み合わせがなせる術ではないかと思います。いやちょっと驚きあり、組み合わせして聴く愉しみのひとつですね。


 つぎはソニーのMDR-Z7M2で聴いてみました。こちらも癖のない、すべてがきちっと佇んでいるようなヘッドフォンです。でも聴いてすぐに感じるのは音の余裕で、すこぶる滑らかでありながら持ち上がるところはしっかり隆起してなお余裕がある感じです。特にジャズベースの唸り方と弦の減衰する響き方は優れています。70mmの振動板が効いているし、その優位性をあますところなく発揮するようにアンプが働いています。
 音量を少し上げて聴くと、この低音が少々煩わしく感じるかもしれませんが、どこまでもゆるがず破綻することはなく饒舌な音楽を長く楽しめる組み合わせだと思います。また、DSD256など高音質な音源を聴くとその滑らかさや緻密さがわかり、音の響く空間ができて優れていると思います。

 どちらのヘッドフォンも振動板が大きいタイプで、これらにマッチングしやすいのかもしれません。もう少しハードに切れ味の鋭い方向にするとしたら、DACをTopping D90(AK4499)、ヘッドフォンをbeyerdynamic DT1990proで聴いたら良いのかなと思うので、そのうちに取り組んでみようかなと思います。

 古い機材ですが、なかなか手頃な価格で(これは中古なので)これだけの音が出せるヘッドフォンアンプは無いように思えますし、現代のような峻烈で立ち上がり立ち下がりの速い傾向の音とは違うので稀有なアンプなのかもしれません。

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