時間は存在しない を読んでみた  カルロ・ロヴェッリ 著   富永 星 訳

  なんともはや刺激的なタイトルです。著者はループ量子論を展開する物理学者で数式が多く並ぶのかしらんと思っていたら、出てきた数式はエントロピー増大の法則を示す方程式ΔS ≧0だけでした。多くの引用は文学からだというのがいとおかしいです。

 ループ量子論では時間が不連続であり、断続的だと考えられているようで、その視点から人と時間を観た時の話が展開されています。物理学と天文学、宗教、哲学は入り混じっているので、やっぱり入り時交った話になるのです。


 相対性理論の中で早く動く物の中では時間が遅くなることは証明されているので、時間の同意性がないことは推察できます。猿の惑星で地球に帰還したら、とんでもなく地球では時が過ぎていたというやつです。映画のラスシーンでとても感動したのは、シェーンと猿の惑星です。チャールトン・ヘストンの嘆きを忘れることはできません。

 本の中で過去は朦朧としていて、時間の存在しない時空を想定した時の考えを展開しています。そして、人と空間の関わりがあるから時が存在するとのことで、それはそうだと思うのですが、人の関わりのない宇宙の誕生時点については何も語られていないのが寂しいです。

 時の話よりも、時が在るが故に人の悩みが生まれ、その関りとして世の中があることが解りやすく展開されていくと、確かにそうだなと思うところです。