『侍女の物語』を読んでみた マーガレット・アトウッド 著 斎藤英治 訳

  1985年に発表された作品、閉鎖的で専制的な国の中で子供を作るために生かされる女性の物語。侍女とは貴人に仕えるひとのことだけど、ここでは妻の代理出産を強制される人を指していて自我を押し殺して生きていくしかない統一宗教の世界。

 こういう形ではないものの専制的な国はあるし、宗教的には歴史の中でいろいろな事象もあるし、新興宗教でカルト的なものあることを考えると意外に身近に感じてしまうところが、この物語を浮世離れさせていないのだと思う。


 国の設定はアメリカのようだが政権が転覆して専制国家となり、位の高い司令官に妻があり、多くの子ども作るために代理出産を行わせる仕組みになっている。巻末に随分と未来になってから、時代研究という枠組みの中で専制国家の内容が語られている。ということは、未来になればこの国家は崩壊するということだ。

 殺伐とした無味乾燥な話にならないのは、作家の卓越した心理描写によるところが大きく、過去の話が巧みにカットバックされている。そして人の抱く根幹的な疑義についての考えも展開される。ある意味『脳は世界をどう見ているのか』に書かれていることと同義であるように思える。

 終わりは続きの中に終わる。そして、2020年に続編の『誓願』が書かれた。これを読むと続きを読みたくなるところが本書に魅力でもある。