『逃亡派』を読んでみた  オルガ・トカルチュク 著  小椋彩 訳

  原題は『BIGUNI』、ポーランド語でランナーという意味合いらしい。いくつかのエッセイ風や短編の集まった本で、その中の小説の題名が本のタイトルになっているジャズやロックのアルバムのタイトルが収録された曲名と同じと同じです。


 読むと思い出すのは芥川龍之介の『侏儒の言葉』だけど、似ているのは編纂だけかもしれない。訓戒的でもないしアフォリズム的でもないのだけど、厭世観から離れてより遠い所から観ているようで直ぐ身近にある。

 話の多くは人体標本に関する話が多く、最近は樹脂で保存状態を保つようだ。人体の一部の保存が心の一部の保尊の一部のように思っているのではないかと思う記述が多い。作家が心理学を専攻した所以なのだろうか。

 文章が長くても短くても同じテイストが漂う。その点ではなぜか長い話は退屈になる。人の陰影が主たる趣にあり、同じ中の繰り返しであるように思え、カフカの城を思い出す。

 本の中ではタイトルが同じ短編のみ、僅かに趣が違う。なので本のタイトルなのではないだろうか。