イヤフォンFinal A5000 を買ってみた:レビュー

  印象的なのは、これほど公式サイトに書かれた内容が正にその通りだと思うことは稀だということです。価格もリーズナブルなので、珍しく新品を買いました。


 最初に音を聴いたときはカキンカキンな音が出てきて驚いたのですが、公式サイトに150~200時間のエージングで程よい音になると書かれていたのを思い出した。
 まさにその通りで最初の50時間ほどはハイ上がりで響きが少なく、相当に偏ったイヤフォンだと思うのだけど、3次元立体的な定位を追い求めたと書いてある通り、楽器の位置が左右だけでなく前後にもクッキリと現れるのです。それを聴いてしまうと150時間まで、まずはがんばるかと励まされます。
 平日2時間ほど、休日5時間ほど聴くとすると、週に10時間で150時間まで15週、約3か月にもなり、長丁場だなあと思います。これを考えると柄にもなく新品を買ったのが良かったのかと思うのですが、逆に言えば変化を体験できることも面白いと言えます。



 耳への掛け方はシュア掛けで、ナイロンのイヤーフックが付いてきます。僕は外で使わないのでフック無しのままですが、耳への収まりが良くて外耳とケースの形状が噛み合ってイヤフォンピースに重さが係らず、フィット感に優れます。これも公式サイトに書いてある通りで、見た目は異形でゴツイ感じなのですが、実によく設計されています。長時間使う方はイヤフォンに有無すら忘れるのではないかと思えます。
 ケーブルとイヤフォンは最初から繋がってますので、2ピンコネクターの形状を見ることも無く3.5㎜プラグをおもむろにヘッドフォンアンプへ繋ぎます。ケーブル自体は柔らかくてタッチノイズがせず、とても使い勝手がいいです。



 使い勝手の良さに守られて100時間を超したころに、随分と高音域が滑らかになり、中音から低音の響きも出てくるようになりました。それでも随分と腰高な音でJVCのウッド振動版に変えると、まるで違う音楽を聴いているかのように思えるのが面白く、各々の特徴が明瞭なのに改めて気づかされます。
 やっと150時間ごろになると、中音域に伸びやかさが出て低音域も張り出すようになりました。高音域の引きつるような部分が無くなるとともに下の方の音が分かるようになったのだろうと思います。

 3次元的な定位の良さは、高音域の輪郭が明確な音に隠されているのではないかと憶測します。高音域は綺麗なのですが、ガラスの繊細な音が透き通るように長く響くタイプではなく、少々太目で黒い輪郭がはっきりしている画風に思います。この輪郭が楽器の位置を明確に座標しているのでしょう、なので低音域もタイトで響きが少ない方向なのだと思います。低音は空気の振動を感じるような緩やかな鳴り方をすることでふくよかさが増すのですが、定位について曖昧な方向に行きます。3次元定位と言う設計思想に追い求めた形として、特徴の強いイヤフォンではないのかと思います。



 ビバップなジャズを聴くとベースの音がズンゥ、ズンゥではなく、ズnズnと引き締まった音になりますし、オーケストラのコントラバスの音は伸びやかさが足りないように感じます。でも、Led Zeppelinを聴くとボンゾのバスドラムがドスドスと連打される音がシャープに出てきて心地よいです。
 Led Zeppelinの録音は優れたものが多いのですが、96kHz32bitにリマスターされたソースは特に綺麗で、A5000は音楽ソースが良ければ良いほど、ハイレゾになればなるほどに良い音を聴かせてくれます。DSD256になると音の滑らかさが木目細かいことにうっとりします。ショパンのピアノ曲を聴いたときにはタッチの良さとクッキリとした打鍵の立上りが綺麗で新鮮にちょと驚きました。
 オペアンプのアンプだとよりクッキリしすぎて、音の断面が鏡面仕上げのように聴こえて疲れるので、骨格の太いMOJOやFETのアンプで聴いてましたが、200時間を超えたらどうなるのか楽しみです。