1975年に書かれたフランス人作家の小説、主人公は18歳の若い男性でシュマラ伯爵という偽名のままで終わるので、どういう境遇なのかは不明のままです。そのあたりが、リアル感のある空間に虚実が混じり、脚のふわついた彷徨う雰囲気がテーマなのかなと思います。
小説の舞台になっているのはレマン湖のほとりになるフランスの街のようですが、複数の実際の街を合成して書かれているように思えます。ここにおいても実在と虚無がしかけられているのでしょう。
二人の若い男女がホテル住まいをしながら上流階級の人々との交流が書かれたたわいもない蜃気楼のような話で、実存していないかのようであり、虚無であってもまた存在するのではないかと問い掛けられているような気分です。